50歳の処方箋　早く歩くと健康になる？

人はだれでも歩く。私の妹の旦那さんは車椅子を使っているから「誰でも」って言うとそれは違うんだけれど、それでも、まあ、人はだれでも歩く、と言って差し支えないと思う。女の場合「きれいな歩き方」というページをかなり早いうちからファッション誌で目にするので、きれいにかっこよく見える歩き方に10代のうちから取り組んでいたりする。例えば「背筋を伸ばし、上から釣り上げられるような意識で一本の線の上を腰から前に進むように歩く」と言った風だ。

確かにそういった歩き方は美しいかもしれないが「日常的な歩き方として理にかなっているかどうか」は別問題だ。私は長年着物を着ていたので、歩き方としては完全に着物歩きになっていた。これはどういう歩き方かと言うと、両膝を縛られていても、歩ける、という歩き方だ。膝から下だけを動かし、腰を少し落としてスーッと歩く。これでちゃんと歩けるんですよ、ホントに。

そういうことで、歩くときに太ももを上げて歩く、などというのは全く考えたことも意識したこともなかった。なので、まずは行進するように腿を上げて歩いてください、と指導を受け、ずいぶん苦労した。腸腰筋なんてのは衰え切って萎びていたから、最初はほんとに大変だった。

歩き方を習得するまで、この行進歩きや重心をかかとに持ってきて前部分を踏まないように歩く方法なんかをやるんだが、この歩き方ははっきり言って早く歩くことができない。必然的にゆっくり歩くことになる。しかも、歩いている間中（この重心であっているかな？）（前部分踏んでないか？）（地面を蹴ってないか？）などと始終考えてしまう。歩きながら思索にふけったり、周りの景色に癒やされるなどということがなくなるくらい、自分の歩き方に集中して、歩き方のことばかり考えるから最後は歩きたくなくなるほどだった。

駅から店へ八分歩くだけでも（ああ、今からまたあの歩き方で歩くのか）と思うが、それでもたどり着かなくては行けないから一歩を踏み出す。右、左、右、左と（これで合ってるか？）とか考えて歩いていると店に着く。それを半年続けてやっと、歩き方が体に馴染み、考えなくても腹の筋肉で歩けるようにはなった。

ただ、やっぱり人間というのはもとの習慣に戻ろうとするから、時々は自分でチェックをしないといけない。心の中で（腹…腹で歩いてるか？）と思いながら歩く。

ところで、前回書いたように一般的に言われているこれらのこと。

・歩幅の小さい人よりも、歩幅の大きい人のほうが健康寿命が長い。
・歩く速度の早い人のほうが遅い人よりも健康寿命が長い。

なるほど～、とは思うものの、じゃあだからと言って、大きい歩幅で早く歩けば健康になれるのか、というと、それは違うと思う。これはあくまでもそういう結果が出た。というだけで、歩くのが普段からそんなに早くない人や歩幅の小さい人が（え、じゃあ私は健康寿命短いからダメじゃん！）と無理に歩き方を変えてしまうと、かえって不具合を起こしてしまうかもしれない。

また、もともと上手に歩けている人、というのは一定数いると思う。私のパートナーたけしくんもなんか上手に歩いているように見える。そのような人は特段歩き方を学ばなくてもよいのかも知れない。私が学んだ「ゆるかかと歩き」も動画やサイトには「外反母趾の人は…」と言ったように、足に疾患のある人はこの歩き方をすると治りますよ、と書いてはあるけれど、足になんの不具合もない人に「誰もがこの歩き方を取得すべし」などとは謳っていないんである。

あくまでも、足に不具合を感じたならこの歩き方を試してみては、というスタンスに思う。そもそも不具合を抱えてない人は自分の歩き方に疑問など抱かないだろう。

さて、私も健康になれると思って、大股でせっせと歩いた。そのおかげで膝の裏が突っ張り、正座ができなくなった。他の人もこれには騙されない方がいいと思う。歩き方を指南については多くの異なった情報があるので、取捨選択すればいいと思うけど、ひとつ間違えると自分の将来的な歩行に大きく影響するから、よくよく検証したほうがいいと思う。

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