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「脅迫されるから」移民女性が社会議論に参加しない ノルウェー女性の日

【内容】

●各地で、ある女性の顔写真が溢れた理由

●ヘイトスピーチを受ける移民女性

●女性が社会議論に参加しにくくするために

●「女性の日」の行進は、左派のためのものか

●今年のスローガンは、「MeToo、沈黙から女性の闘いへ」

●「彼女の代わりに、私たちが行進に参加しよう」

・・・・・

スマヤさんって、だれ?

3月8日、女性の日。ノルウェー各地で開催された行進では、とある女性の顔を掲げて街頭に立つ人が続出した。

彼女の名前は、スマヤ・ジルデ・アリ(Sumaya Jirde Ali)。

ソマリアとノルウェーの背景を持つ20歳。作家であり、SNSや現地新聞でのコラム欄で、物議を醸す発言をすることで知られている。

右派政権である首相や大臣、現地の右翼ポピュリスト政党とされる進歩党にもかみつくことから、右派や移民懐疑派から大きな反発にあっている。

20歳の若者の批判をストレートに受け止める、大人げないノルウェー人からは、大量のヘイトスピーチや脅迫を連日受ける。

女性であるだけではなく、ヒジャブと肌の色が原因で、「カモメ」、「社会保障を受けて働かないプリン」などと呼ばれている。

「くそで、ゴミのようなお前の服装が、差別を生んでいることが、なぜわからない。アフリカに戻れ!」

「私の国や私たちの政治家が嫌いなら、早くこの国から出ていけ」

「ガソリンをかけて、お前に火をつけてやろう」

彼女は、日々受ける脅迫の画像を、自分のTwitterで次々と公開する。

彼女自身も、勢いで、リストハウグ法務・移民大臣や警察を過去に「くっそたれ」呼ばわりしたことから、さらに炎上。

ノルウェーでは移民女性、特にヒジャブを被る女性などが公な発言をすると、SNSで脅迫されるケースが相次いでいる。

名前と顔を出して、勇気をもって発言することから、アリ氏は賞などを受賞。特に左派からの支持が強い。

脅迫で、女性の日の参加を断念

第二の規模の都市ベルゲンでは、彼女は女性の日のイベントに参加する予定だった。しかし、あまりの脅迫の多さに、精神的に耐えられず、今後のイベントを全て辞退することを直前に発表。

「これが2018年の平等の国ノルウェーか」

「移民女性が脅迫を受け、社会議論に参加できないのがノルウェー」

「脅迫をする人たちが、得する国」

現地の大手メディアでも、連日話題となっていた。

「余計なことは、話すな」、「移民が文句を言うな」。口を押えられようとされているアリ氏の騒動を見て、女性たちが動いた。

Photo&Text: Asaki Abumi

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