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それでも、あなたが好きです(第4話)

 夏生が蛍を連れてきたのは、渋谷の裏通りにある居酒屋兼定食屋のような小さな店だった。
 入り口に「クマ」と書かれた熊の頭の形を模した看板が下がっている。
 レトロなアーチ型の扉を開けるとドアベルがからん、と乾いた音で鳴った。

「いらっしゃい」

 カウンターの中にいた長い髪を無造作に背中で結わえ、洗いざらしのエプロンをした女性が御義理程度の挨拶を投げてくる。が、ドアをくぐって入ってきた夏生の顔を見たとたん、急に女の声が華やいだ。

「なに?! 夏生じゃない。久しぶりすぎるよ」
「声でかいよ。クマ」

 目の前にある夏生の細い肩が大声に辟易したようにすくめられる。状況がわからず立ち尽くす蛍を置いてきぼりに、クマと呼ばれた女が叫んだ。

「いやだって。あんた、渋谷で働いてるくせにちっとも来ないし」
「ちっともってことはないだろ。この間来たし」
「一年も前はこの間って言わないよ」

 けらけらと笑いながらクマと呼ばれた彼女がこちらに視線を投げて寄越した。

「そっちは?」
「俺の元教え子の野島蛍くん」

 軽い調子で紹介してから、夏生はひょい、と蛍を振り向いた。

「この人、大学の時の同級生。熊本勇子。勇ましい熊。凄い名前だろ」
「人の名前をひどい言い方するな」

 クマが苦い顔をする。その彼女の軽口を無視し、夏生はすたすたと店の奧のボックス席へと向かった。

「まあ、あいつはうるさいけれど、ここくらいいつも空いている店も思いつかなくて。ここでいい?」

 本心ではちょっと嫌だ、と思った。
 けれど蛍は嫌だを呑み込んで頷く。

「大丈夫です」
「良かった」

 ほっとしたように夏生が顔を綻ばせる。ボックス席に座ってすぐ、クマがお冷とおしぼりを持ってやってきた。

「今日は? 酒? 飯?」
「うーん。蛍くん、飲む? どちらでも俺は大丈夫だけど」

 コートを脱ぎながらの夏生に問われ、ちらりと蛍は店内を見回す。手書きのメニューが壁一面に飾られている。「親子丼」「カツカレー」「ラーメンセット」……。
 食事にしたのならおそらくあっと言う間に食べ終わってしまいそうな気がする。

「少し、飲んでもいいですか」
「もちろん」

 頷いた夏生がテーブルに備えつけられたメニューを蛍へ差し出す。カクテルも日本酒も種類が多い。定食メニューだけではなくつまみも充実している。
 しかもどれもリーズナブルだ。
 これは目移りする、とまじまじとメニューを眺めていたときだった。

「一応聞くけど、君、未成年ではないよね?」

 クマがテーブルに手をついてこちらを覗き込んでくる。その探るような目の色に蛍はむっとした。

「二十歳ですが、なにか」
「ああ、そうなんだ。それならいいの。未成年に酒出したってなると面倒だから」
「いやいや、だったら俺も酒飲むかなんて訊かないよ」

 呆れた顔で夏生が割って入る。その彼の鼻先で彼女は怒鳴った。

「あんたはぼさーっとしてるから。変なのに引っかけられたりしないよう周りが注意してやらないとね」
「引っかけられたりなんてしないって」
「自覚ないからなあ、あんたはほんと。付け込まれやすいんだから気をつけなきゃ」

 言いながら彼女の手が夏生の肩に触れる。
 なんなんだろう。この人。
 蛍はだんだん気分が悪くなってきた。このクマという女性、なんというかやけに夏生に対して距離が近い気がする。
 顔の位置もそうだし、意味なく夏生の肩に触れる感じもそう。
 自分はこの人と仲が良いんだ、とアピールするみたいな態度がすごく。
 不快だ。

「ここね、たいていのもの美味しいから。好きなの頼んでいいよ」

 蛍の不機嫌に気づく様子もなく夏生が微笑む。あまりにもいつも通りのその顔になぜか苛立ちが増し、蛍はメニューを夏生に突き返した、

「なんでもいいです」
「そう?」

 首を傾げながら夏生は慣れた様子で注文をする。ただ注文をしているだけの声なのに蛍と話すときよりも気易い調子に思えてますます腹が立つ。
 注文を受け、彼女がカウンターへ戻る。それを待って蛍はぼそりと言った。

「仲が、いいんですね。あの人と」
「うん?」

 思わぬことを言われたというように彼が目を瞬く。蛍は声のトーンが上がりそうになるのをこらえながら続けた。

「なんか俺と話すときと全然違うから」
「そう、かな?」

 あまりぴんと来ていないようだ。顎に手を当て、彼は宙を睨んだ。

「彼女とは長い付き合いだからかなあ。親友というか。医大に行っておきながら医師を目指さずにいる者同士だからっていうのもあるのかもしれないね」

 呟きにずきりと胸が痛む。
 横目でこっそりカウンターの中の彼女を観察する。忙しく立ち働く彼女はもうこちらを見てはいない。てきぱきとただ調理をしているだけだ。
 わかっている。自分と彼はただの元家庭教師と元教え子。彼女の方が彼と過ごした時間はずっと長い。その分親密なのはむしろ当然で、仕方ないことだ。だって彼女は蛍の知らない彼を蛍以上に知っている。
 たとえば彼が今、医師ではなく、旅行代理店の営業をするに至った経緯だって彼女は当然聞かされているに違いないのだから。

「夏生さんはなんで、医者にならなかったんですか」

 問いを聞いた夏生が押し黙る。しばらく待ったが返事は返ってこない。そっと目を上げて窺うと、夏生はお冷のグラスを片手に目を伏せていた。

「ごめん。それはあまり、話したくないかな」

 どうして。
 言い返そうとして蛍は疑問をやっとのことで呑み込む。その蛍に夏生がぱっと顔を上げて水を向けた。

「俺のことより君の方。なにか話したいことあったんだよね」

 穏やかな、いつもの声音が蛍の胸を抉る。
 蛍の家に来ていたときと同じ優しい、大人の話し方が蛍の心に黒い雫を落とす。

「はい、お待たせ」

 ビールジョッキと出汁巻き卵と枝豆を乗せたお盆を持って彼女がこちらにやって来る。がたん、と音を立ててそれらを手早くテーブルに置く彼女に夏生が、ありがとう、と笑いかけた。

 その笑顔は、蛍に向けるものと明らかに違って見えた。

「夏生さんは人を好きになれないって言ってましたよね」

 棘を含んだ声を投げるとジョッキを蛍の方に押しやりながら、夏生が困ったように視線を落とした。

「まあ、言ったね」
「それって本当ですか」

 目の前に置かれたジョッキを蛍は引っ掴む。ちょっと、と慌てる夏生の目の前でビールを喉に流し込む。一気に半分飲んでから、蛍は荒い息をついて続けた。

「もしかして、俺を慰めるためについた嘘だったりしませんか」

 夏生が黙り込む。黙ったまま、彼は自分の分のジョッキを持ち上げ、一口飲んでからぽつりと言った。

「さすがにそんな嘘をついたりはしないかな」

 ことん、とジョッキがテーブルに置かれる。ふうっと息を吐いて彼は蛍をテーブル越しにじっと見据えた。

「なんだか、怒っているように見えるけど。俺がなにかした?」
「別に」

 そうだ。夏生はなにもしていない。ただいつも通り、目の前にいてくれるだけ。いつも通り。
 けれどそのいつも通りが痛い。

「俺は、男しか好きになれません」

 なんだか目が回って仕方ない。襲いくる眩暈を乱暴に頭を振ることで退けながら言うと、うん、と夏生が頷いた。その彼に向かって蛍は言葉を重ねた。

「その俺をあなたは認めてくれた。気持ち悪くないと言ってくれた。そのことが俺にとっては信じられないくらいの奇跡で」
「蛍くん?」

 呼びかけられて気づく。視界が涙に滲んでいた。
 自分で自分の涙に驚きながら、蛍は拳で涙を押さえた。

「奇跡を見せてくれたあなたは俺にとって特別なんだ。でも、あなたにとって俺は特別じゃない。その他大勢の人間でしかない。それも仕方ないって頭ではわかってるんだ。だって俺はただの教え子でしかないんだから。わかってるんだ。でも、それでも悔しいって思ってしまう。だって俺は」

 ああ、駄目だ。これ以上言っては駄目だ。
 絶対に駄目なんだ。
 わかっている。十分わかっているのに、一気に取り込んだアルコールのせいなのか、胸の中のもっとどろどろした感情のせいなのか、どうしても止められない。

「俺は、あなたがずっと好きだったんだから」

 滑りだした告白に空気が凍りつく。はっと口を押さえ顔を上げると、夏生は大きな目を見張ってこちらを見つめていた。
 無言でただ向けられるその、信じられないことを聞いたかのような瞳の色にすっと体温が下がる。

「ごめんなさい。帰ります」

 言い捨て、蛍は荷物を引っ掴み立ち上がる。夏生は言葉を発しない。視線を振り切るようにしてカウンターの前を走り過ぎると、調理台の前にいた彼女と目が合った。
 その目が蛍を責めるように細められたのを蛍は見た。
 かっと苛立ちが胸を焼く。けれど足を止めぬまま、蛍は店の外へと飛び出した。
 走る蛍の体中が後悔でまみれていた。言うべきじゃなかった。言うべきじゃなかった。何度も何度も胸の内で繰り返す。
 彼はきっと困惑したはずだ。突然寄せられた好意に。
 男の自分に告白されて。いや……それもあるかもしれない。でもそれ以上に彼は困っている。
 だって彼には寄せられた気持ちの意味がわからない。
 わからないものを押しつけられたとき、人はどうなる?

──気持ち悪いんだ。もう。

 良平の声が耳の中で響き渡り、蛍は短く呻いた。
 絶対に嫌われたく、なかったのに。
 人と人の壁がまた目の前を塞ぐ。灰色の塊が自分を取り囲み、押しつぶす。

 お前はおかしい。お前は違う。お前は、普通じゃない。
 お前は。お前は。お前は。

 心が千切れそうだ。ふらり、と雑踏の中で体がふらつく。そのときだった。
 誰かの手が蛍の二の腕を捉えた。

「前、横断歩道。危ないから」

 静かだけれど凛とした声が蛍の意識をこちらに引き戻す。
 のろのろと視線を声の方へ下向けると、険しい顔をした夏生がいた。

「夏生、さん」

 呆然と名を呼ぶ蛍の腕がぐい、と引かれる。そうされて自分が赤信号になりそうな横断歩道の際に立っていたことを悟った。

「まったく。危なっかしい」

 ため息を漏らし、夏生は蛍の腕を引いたまま、歩道の端、雑居ビルの壁際に移動する。
 その彼の顔を蛍は見ることができない。
 この後降ってくる言葉が怖くて怖くてたまらない。
 彼は、自分を、拒絶、するはずなのだから。

「あの、ごめんなさい。俺は……その、さっきのは、あの」

 なんとか取り繕おうとするのになにも出てこない。俯いた蛍の前で夏生はなにも言わない。ざわざわと人々のざわめきだけが彼と自分の間を流れていく。
 ややあって、するり、と夏生の手が蛍の腕から解けた。服の上から掴まれていただけなのに、急に寒くなった気がして小さく身を震わせる。その蛍の耳に夏生の掠れた声が落ちた。

「俺はだめだね。本当に」
「……は?」

 見下ろす蛍の前で夏生は俯いている。すぐ横手にあった電光看板がその顔をかさついた青白色の光で照らしていた。

「君の気持ち、わからなかった。今も……わからない。君がどんな気持ちで言ってくれたのか。あんな必死な顔で言ってくれているのにその思いを俺は汲むことができない。
 俺は本当に、欠陥品だね」

 苦い呟きが蛍の中にわだかまっていた恐怖を押しのける。思わず目の前の彼の両腕を引っ掴むと、はっとしたように夏生が顔を上げた。

「欠陥品なわけない! だってここまで追いかけてきてくれたんだから」
「でもそれは君と同じ気持ちでではない。傷つけてしまった気がしたから。それだけ」

 結局、と夏生が呟く。それは自己嫌悪にまみれた悲しい呟きだった。

「俺は人の気持ちなんてこれっぽっちもわからない人間だってことだよ」

 込められた苦い響き。苦悩に濡れたその声に胸が詰まった。
 この人が抱えている苦しみを頭ではわかっているつもりだった。
 けれど自分はそれを頭だけでしかわかっていなかった。
 真の意味で理解なんてできていなかった。
 恋愛感情という皆が当たり前に持っているだろう感情を、自分だけが理解できないことによって生じる劣等感。
 それはどれほどの孤独を、疎外感を彼に与えるものだったのか。

「ごめん、なさい」

 詫びる蛍を、夏生はゆっくりと見上げ、首を振った。

「君が謝ることじゃない。俺がわからないのがいけないんだから。でもね、これだけは言わせて」

 少し潤んで見える目でこちらを見上げ、夏生が囁いた。

「好きと言ってくれてありがとう。気持ちは嬉しかったよ」

 すうっと手が上がり、蛍の手を自身の腕から解く。彼はそこでほのかに笑って、じゃあね、と言って背中を向けた。ゆっくりと遠ざかっていくその背中に蛍は声をかけようとする。
 けれど、できなかった。
 自分になんてなにも言えるわけがない。なにもわかっていない自分は彼を傷つけることしかできないのだから。
 遠く遠くなっていくその背中を見送りながら、蛍は思う。
 本当の意味で欠陥品なのは、やっぱり自分だ、と。

☆☆☆

『夏生さん、ごめんなさい。俺は本当になにもわかってなかった。自分のことばかりで、俺はあなたの気持ちなんて全然考えてなくて。
 なんで俺は告白なんてしてしまったのだろう。
 苦しめることもわかっていたのに。
 俺は自分勝手に告白してしまった。自分の気持ちだけで。なんで俺は』

 そこまで入力して、蛍は文字をすべて消す。
 どんな言葉もただの言い訳にしか思えない。自分の気持ちを正当化するだけのつまらないものでしか、ない。
 結局、自分自分自分。そればっかり。

 この数日、蛍はずっと考えている。夏生への謝罪の文言を。けれど書けば書くほど彼を傷つけてしまいそうで送れないまま日だけが過ぎていく。
 音声通話をしてみようかとも思ったが、コントロールを失った自分の醜態を思い出すとそれも躊躇われた。
 自分はなんて愚かなんだろう。馬鹿で子どもで救いようがない。
 仮に彼がアセクシャルではなかったとしてもこんな自分を受け入れてなどきっとくれない。だって自分自身がこんな自分をどうかと思うのだから。

 蛍は電気ポットやら漫画雑誌やらでごったがえしたテーブルの上にぐったりと潰れる。と、その蛍の耳に、かちゃり、とドアが開く音が聞こえた。

「あれ、ケイ。まだお昼食べてないの?」

 尻上がりの独特のイントネーションで声をかけてきたのは、同じイタリアンレストランの厨房で働くリオだ。蛍以上に高い背を屈めるようにして事務所兼従業員控え室に入ってくる。
 イタリアからの留学生である彼とはまあまあ仲が良い。お国柄もあるのかもしれないが、陽気でフランクなリオが人見知りの蛍にも臆せずどんどん話しかけてくるからだ。
 聞いてもいないのになんでも話してくれるので、蛍はリオがイチゴ大福をソウルフードと思っていることも、好きな女性のタイプが還暦を過ぎた和服の似合う某女優であることも知っている。
 もっとも蛍の方はリオにそこまで心を開けないでいるのだけれど。
 今日はあまり軽口に付き合える気分じゃない。そう思っている蛍にはお構いなしに、濃いチョコレート色のどんぐり眼でテーブルの上に置かれた手つかずのサンドイッチを見たリオが大声を上げた。

「駄目だよ。ちゃんと食べないと。おなかすいて倒れますぞ」
「食欲ないんだよ」

 頬をテーブルに押し当てたまま言うと、リオは、それは大変、と叫んで蛍の額に手を当てた。

「熱、はありませんな」
「ないよ」
「失恋、でもしたの?」

 無邪気な直球にうっと詰まる。フムフム、と頷いてから、リオはぴんと人差し指を立ててみせた。

「簡単です! 新しく恋をするのだ!」
「……そんな簡単にできたら苦労しないんだよ」
「なぜ? 上書き、とっても有効」

 正論すぎる。けれどそんなシンプルに切り替えられるものじゃない。特に自分のような人間は。リオは潰れたままの蛍のまかないの皿から行儀悪くサンドイッチを一つつまんで口に運ぶ。

「ミレン? かな?」
「まあ、そうなのかもしれない」
「原因は?」

 やっぱりストレートだ。あまりにも当たり前みたいに訊かれ、蛍はなんだかおかしくなってきた。

「相手の事情考えずに一方的に気持ち押しつけること言って困らせちゃったんだよ」
「なにを言ったの?」
「なんていうか……痛いところに触れてしまうみたいなことをだよ」

 ぼそぼそと呟く蛍の耳にふっと日本語以外の言語が飛び込んできた。

「Ognuno ha la sua croce(オニューノ ア ラ スア クローチェ)」
「は?」

 顔を上げた蛍に、リオは高い鼻をつんと上げて朗々と語った。

「日本語で言うと、“それぞれに独自の十字架があります”ていう意味。イタリアのことわざ」

 軽い調子の説明の後、むしゃむしゃとサンドイッチが平らげられていく。もごもごと咀嚼しつつ、頬袋にぱんぱんにものを詰めたハムスターのような顔でリオは続けた。

「各々いろいろあるよ。でもわからない。それは当たり前。わからないから知ろうとする。その結果、痛いこと言ってしまうこともある」
「でも……そんな痛いこと言われたら、もうその相手とは話したくないよな」
「そういうこともある。でも」

 リオはペットボトルのお茶のキャップをぐいぐい開けながら言った。

「それはケイが決めること? ケイはその人じゃないのに、その人がどう思ったか、勝手に決めるのは、ええと、ほら、アレ、そう、傲慢? じゃないかな?」

 傲慢。
 どきり、とした。
 リオには自分がゲイであると伝えていない。当然、夏生のことだってなにも。
 けれど事情をなにも知らないリオからのあっけらかんとしたアドバイスがなぜかまっすぐに胸に刺さった。

「当たってクダケロ!みたいな言葉、あったよね? もう一回、砕けてみれば?」
「砕けるのは嫌だな」

 嫌だけど。のろのろと蛍はスマホを手に取る。ロックを解除すると、夏生とのトーク画面が開きっぱなしになっていた。
 指先が迷う。でもここで逃げるわけにはいかない。
 蛍は恐る恐る指を動かした。

『夏生さん、もう一度ちゃんと話がしたい。会えますか?』

 夏生からの返信は遅かった。返事があったのはその日の夜遅くで、そこには、

『ごめん、会えない』

 と、あった。


第5話に続く


#創作大賞2023

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