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木曜日の厄災【ファンタジー ショートショート】

僕らの街には不思議な奴がいる。他の街にこんな奴いたらみんな怖がって追い出してしまうだろうけど、こいつは意外と街の人に受け入れられている。
その理由は、こいつの持っている能力だ。
こいつはふと思いついたように、その場にいる人に話しかける。
「厄災か祝福か」
答える人は、突然なので慌てる。けど、まず最初に必ず「祝福!」と答えなくてはいけない。そうしないとひどいことになるからだ。
「しゅ、祝福!」
急いででも吃ってでもいい。とにかく祝福と答えるのだ。
するとあいつはこう聞いてくる。
「どんな?」
前々から思っていたが、どんな?はわりと親切な質問だなあと思う。答えやすい質問ではないか。
そうそう。あいつが親切に聞いてくれると言っても、いつまででも待ってくれるわけではない。10秒だ。10秒間に的確に答えなければならない。
隣のクラスのともちゃんは、「う、うさぎ…」と答えたら、次の日の朝、ともちゃんちの庭を埋め尽くさんばかりのうさぎがいた。ともちゃんは、うさぎのぬいぐるみが1つ欲しかっただけなのに。ともちゃんのお母さんは、苦労してうさぎの貰い手を探したらしい。そのうちの3羽が学校の飼育小屋にいるから、僕は時々草をやりにいく。
あいつは結構街に馴染んでいて、割とどこにでもいる。
図書館や本屋さんや、貸漫画やさんに古本屋さん。本が好きなのかな。よく立ち読みしているのを見かける。
あいつは黒いズボンに黒い革の靴を履いて、とんがり帽子の黒いマントを頭からすっぽりかぶって、右手に鎌を持っている。よく本に出てくる死神のスタイルだ。立ち読みのときは鎌は邪魔らしく小脇に抱えている。
学校帰り、いつもの商店街を通ると、あいつが本屋さんの表で立ち読みしていた。
僕は、あいつに話しかけられたら答えることをきちんと決めていて、何回も練習していた。だからきちんと願いを叶えてもらえる自信があった。
僕があいつの後ろを通り過ぎようとしたとき、突然風が吹いてきて、あいつの読んでいた本がバサバサっとめくれた。あいつはそのことに腹を立てたみたいだった。
あいつはキッとこっちを振り向くと、僕に向かって「厄災か祝福か?」と言った。
こんなタイミングで聞かれるなんて、八つ当たりもいいところだ。僕はドキマギしたが、なんとか「祝福」と答えた。
「どんな?」間髪入れずにあいつは聞いてくる。怒っているみたいでちょっと怖い。さすがは死神だ。
落ち着いて落ち着いて。ひと呼吸置いてから僕は答えた。
「魚の鰺を…」
「はい、ブー!時間切れ!」
「え?まだ5秒…」
あいつは背を向けて足早に行ってしまった。
僕は「魚の鰺を、アジフライにして20匹食べたい」と言うつもりだった。
あいつはあじフライを知らないかもしれないし、何匹まで言わないと千匹出されても食べ切れないし、ちゃんと20匹まで言うつもりだったのだ。
ところが、なぜか僕のときは5秒しかくれなかったから、最後まで言えなかった。本がめくれて機嫌が悪かったのかもしれない。
そんなことより、どうなるのか不安だった。お母さんに相談すると、多分明日にならないと分からないと言う。とりあえず僕はご飯を食べてお風呂に入って寝て、明日を待つことにした。

次の日、学校は休みになった。校庭中が鰺に埋め尽くされて、校舎に入れないからだった。
けれど、これじゃあもったいないからと言って、給食のおばちゃんと近所の人が協力して、何千匹ものアジフライを作ってくれた。
学校の生徒や、近くのお家みんなに配ったら、なんとか食べきることができたらしい(冷凍しているお家もあるらしい)。

これが有名な柊町の鰺事件だ。
この事件からしばらくは、こうちゃん(僕のこと)はまったく、と言われたが、アジフライが美味しかったらしく、割と感謝された。
今日もあいつは…ちらっと見やるとやっぱり立ち読みしている。
あいつの前を通る時、ふうやれやれとため息をついたら、あいつがニッと笑った気がした。うさぎも鰺も、あいつ、分かっててわざとやったんじゃないか、ふとそう思った。

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今日から入院でーす☺

もうちょいのんびりできるかと思ったのに、意外に慌ただしくしている間にこんな時間に…。

明後日の朝の採血の結果次第で退院になるようです(ほぼ退院確定)。

中一日しかのんびりできない😭

大部屋だけどベッド2つしか埋まっておらず、スタッフの方も親切丁寧で、とても居心地よいです☺

窓際のベッドで、窓も広く、山が見えてなかなかの景観です🌲

いちおーのりたま持ってきたけど、ご飯も美味しいです🍚

おやつもたっぷり持ってきたけど、ご飯で十分お腹いっぱい(笑)

こんなことならもう二日くらい入院してもいいなあと思っています(笑)

あ、夕飯のくる音がする✨

上膳据膳いいなぁ💕

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