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今年も君と桜のトンネルを歩きたかった【ファンタジー ショートショート】

光が、柔らかくなってきた。
頬を撫でる風が心地よい。
舞散る花びらを受けながら、桜のトンネルをくぐる。
この桜も、もう散ってしまうんだなあ。
また来年。来年も僕はこの桜を見られるのだろうか。

一年前、この桜吹雪、君と一緒に見た。
君は嬉しそうに手を広げて、雪みたい、と掌に落ちてくる花びらを受け止めようとしていたね。
ついてるよ。僕が君の少し茶色の長い髪についた花びらを取ってみせたら、君は照れたように笑ったね。
あの日の君の手、髪、それから笑顔。僕の瞼の裏に焼き付いて離れないよ。
僕は‥‥あの日から君の細胞1つまで忘れたことはないよ。

僕は今年も君とここへ来るつもりだったんだ。
まさか君がこの僕の前からいなくなるなんて、思いもよらなかったんだ。

あの日から一年。一年後の今日。一緒に行こうって、約束したじゃないか。
僕は桜の木の下に崩れ落ちる。涙が止まらない。一年も経ってるのに。一年?一年ってなんだ?時間ってなんだよ。
君の記憶は、時間とともに消え去るのか?とてもじゃないけどそんな風には思えない。

その時、濡れた僕の頬に、桜の花びらが張り付いた。
誰かが目の前に立った。そして僕の顔が見える位置まで屈む。
僕は驚いて見る。涙でベタベタになった顔が恥ずかしい。
「一花‥‥!」
「ついてるよ、孝君」
そう言うと一花は頬にくっついた花びらをとる。
僕は驚いて名前を呼ぶことしかできない。
一花は微笑むと、光の中へ消えていった。僕は一花の手を掴もうとしたけど‥‥届かなかった。
僕は涙混じりに笑った。とうとう幻覚まで見るようになったって?
「一花、一花、いちかぁぁあ」
「‥‥孝君」
僕ははっとして耳を澄ます。幻聴じゃない。
確かに聞こえる。
「私ね、今日、特別な日だから、今日だけ、孝君にだけ、話しかけることが許されたの。私ね、今日、空へ還ることになったの。‥‥孝君、私を忘れないで。だけど元気でいて。必ずまた会えるから」
「‥‥うわ」
その時、一迅の風が吹いて、桜も声もかすかにあった一花の気配も、吹き飛ばした。
遠くから、だけどはっきりと聞こえた。
「この子と仲良くしてあげて。一緒にいられなくて‥‥ごめんね」
にゃーお。ふと足元を見ると、真っ白な子猫が一匹、僕にすり寄っていた。
「一花‥‥」
その猫を抱き上げて僕はそう呟いた。
「ううん、お前は一花じゃないな。僕はお前に甘えちゃいけないな。よし!"イチ"にしよう」
僕はイチを連れて桜のトンネルをくぐり抜けた。
来年も、きっと見られるさ。イチと一緒に。僕はイチのために、いつか一花と会える時のために、生きてみようと思う。


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神谷浩史さんに読んで頂きたい!と書き終わってから思いました☺

最近、夏目友人帳を毎日のように見てるので‥‥(1期の11話まで見ました)。


仕事で脳みそ疲れるので、じっくり読みたい記事が後回しになってます、ゴメンナサイ(ToT)


ところで、宅食とってらっしゃる方いらっしゃいませんか??

仕事後夕飯作るのキツイので、お弁当注文しようと思ってて‥‥。

参考にさせて頂きたいですm(_ _)m

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