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妖精は朝もやに佇む【ショートショート】

夜通し夢中になってゲームをやっていた。ふと時計を見ると、4:20を指していた。
まあいいや、今日は学校も休みだし。
もうすぐ夜が明ける。せっかくだから、朝の爽やかな空気でも吸おう。
窓を開けて深呼吸していたら、人影が見えた。
夜明け前の空気の中、それが幽霊に見えてビクッとした。が、よくよく見たら、隣のお姉さんだった。あ、気づいたみたいだ。
「一緒に来ない?」
お姉さんがこちらを見上げて言った。
それがあんまり儚くて、生きている感じがしなくて、本当に幽霊なんじゃないかと思った。
けれど、行きます、と何かに引き寄せられるように答えていた。

「どこまでいくんですか?」
「飛鳥池よ」
飛鳥池までなら10分位だ。散歩にはちょうどいい距離だった。
行って帰って20分。母に何か言われても、散歩に行っていたと言えばいい距離だ。
「こんな早くに、どうしたんですか?」
「目が覚めてしまったのよ」
それで納得がいくような朝だった。

池は、普段とは様相が違った。朝もやが幻想的な雰囲気を醸し出しているのだった。
「もう少しよ」
お姉さんは言った。何がもう少しなんだか分からなかったが、僕は無言で頷いた。
ぼんやりと池を眺めていると夜が白々と明け始めた。
すると、もやが立ち昇っていくのだった。
「うわぁ、すごい…」
思わず感嘆の声を出した。
するとお姉さんがにこっと笑った。
僕はドキッとした。お姉さんはやっぱり儚くて、今度は妖精のように見えたからだ。
うっすらとかかるもやの中に佇むお姉さんを、僕はぼんやりと眺めていた。


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眠れなくて夜が明けて、窓を開け、空気を吸ったときに思いつきました。

昨日はAmazonプライムで、ずっと探偵ナイトスクープを見ていました!

私も早く依頼を出して、探偵ナイトスクープに出たいです☺

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