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傘を買いに

駅前のアーケード街に、古い傘屋があった。店の名がカタカナで、サカイダ傘店と書いてある。
デパートへ行った帰り、その店の前を通ると、可愛らしい緑のカエルの傘が開いて飾ってあった。
とても小さいので、多分幼稚園くらいの子が持つ傘だ。目の部分が上にピョコンと飛び出している。
傘は念の為二本持っているのだが、一本壊してしまったので、新しいのがほしかった。
新調していくことにした。

「ごめんください」
声をかけると店の奥から年老いた店主が出てきた。
「男物の傘がほしいんですが」
「ああ、それならこの辺りにありますよ」
案内されて見に行った…

…はずなのだが。
気付けば、傘の花畑にいた。
ピンク、黄色、赤、オレンジ、水色、うすむらさき…。
私の体は宙に浮いていて、傘の花畑を見下ろしているのだった。
傘は誰かがさしているように、クルクルと回っていた。
空はうすい灰色をしていて、小雨が降っていた。
私は黄色い傘が気になり、そこへ降りていった。
するとそこは、ひまわり畑になった。
広大なひまわり畑の真ん中に、黄色い傘をクルクル回している小さな子がいるのだった。
私とその子は、私より頭一つ大きなひまわりたちのかげにすっぽり隠れていた。
よくよく見るとその子が回しているのは傘ではなく周りのよりひときわ大きなひまわりだった。
「ねえ、君、ここはいつも雨なのかい?」
「そうだよ」
「せっかくのひまわりなのに」
「そうなんだ」
「そうか、残念だね。じゃあ、どうしたら雨はやむのかな」
「あじさいなら止ませてくれるよ」
「あじさい?あじさいって、あの、ピンクや青や紫の?」
小さか男の子はコクンと頷いた。
「わかった。紫陽花はどっちに咲いてるんだい?」
「あっち」
男の子が指差したほうを見ても、見渡す限りひまわりだ。方角を見失わないようにしないと。
「ありがとう」
小雨を、大きなひまわりに隠れてよけながら歩く。地面がぐちゃぐちゃと音を立てる。
どこまでいけばいいのだろうと思った瞬間、今度はあじさいの園にいた。あじさいも大きい。一つの花が私の頭2つ分ある。
「おーい、誰かいない?」
大きなあじさいをかき分けながら歩くうちに、クルクル回るあじさいが見えた。
「君が紫陽花かい?」
「そうよ」
小さく返事が返ってきたのでかき分けかき分け行くと、ほっそりした色の白い女の子が立っていた。
「やあ。雨はいつ止むんだい?」
「ずっとよ」
「だけど、植物はお日様にも当ててやらなきゃだめだと思うよ」
「まだ、降り出したばかりよ」
「いや、そうかなあ。そろそろ雨がやまないと…」

「雨がやんだら傘は要りませんね」
店主の言葉に我に返った。
古ぼけた傘屋の店内にいた。
「は、はあ、あははは、そうですね。いや、傘を…その、買いに来たので」
気づくと私の手には一本の傘が握られていた。
軽いし、開いてみるとなかなかいいあんばいだ。
「これにします」
古い店だったが入ってみてよかった。傘は傘屋に限るな。
外に出ると小雨が降り出していたので、早速さした。
街にはピンクや黄色の傘の花が咲き始めていた。

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ちょっと出かけていて、8時頃帰宅しました!

これから、ぶくおさん直伝カレーを作りたいと思います!


ところで、スマホの見過ぎで左手を負傷しました🙀

いつもよりコメント遅くなりますが、古い順に追っかけてますので……すみませんm(_ _)m

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