【データで見る】俳優・声優の需要と供給のバランス
こんにちは。演劇・エンタメ分野にビジネス要素を絡めて情報発信しているAsakawaです。今回は俳優・声優の「需要と供給バランス」というテーマで簡単な一例をご紹介します。
私はこれまで色んな記事で散々、俳優・声優の世界は「需要と供給のバランス」があまりにも悪いと書いてきました。だからいくら個人が努力してもどうしようもできない壁があると。
じゃあ、どれだけバランス悪いのか?
声優であれば「年間通して300人くらいの人しか声の仕事だけで生活することはできないのに、それに対してその枠に入りたい人が1万人いるとされている」みたいな数字は別の記事で書いたことがあるのですが、もっと具体的に出してこの世界はなぜ厳しいと言われているのか、よりそのイメージを鮮明にしてくれたならと思います。
ある年のテレビアニメ年間制作本数
2019年のテレビアニメ制作本数は314本だそうです。3年連続で減少と記載されていますがそれでも昔と比べればアニメ制作本数が激増した数字であるのは間違いないと思います。
ざっくりとなりますがここで毎話、出てくる同アニメキャラクターを5人と設定してみましょう。
314×5=1570
2019年のテレビアニメレギュラー枠は約1570となりました。
ここにさらに物語の前半、後半のみに出てくる役、一話限りのゲストキャラなども合わせればおそらく2000人はゆうに超えると思います。
現在、声優として活動している人数は?
さぁ、ここでちょっと恐ろしい数字が出てきました。試しに現在、日本で活動している声優さんが分かる情報誌といえば声優グランプリの「声優名鑑」を思いついたので調べてみたところ2022年版は男女合わせて1658人だそうです。
つまり・・・この冊子に掲載されている声優さんですらたとえ平等に割り振っていきましょうかとなっても全員にテレビアニメのレギュラー枠を1枠すら振ることができないということになります・・・。
当然、みんな平等に仕事が振られる世界ではなくオーディションを勝ち抜いた人が手に入れることができる枠になりますので一度もアニメのレギュラー枠を取ることができないままその年を終えるという声優さんも出てくるのは間違いないバランスだと思います。
登場キャラの男女比率のことも入れたら女性は幼い男の子を演じることはできても逆はないので男性はさらに厳しいかもしれませんね。
しかもこれはあくまで「声優名鑑」に載っている声優さんで正確な声優さんの人数を表したものではありません。「声優データベース」というサイトには4000人以上の声優さんが登録されているそうなので実際はもっとバランスの悪いことになります。
他にも声優という仕事をするのに取得しないといけない資格がない以上は誰でも、活動実績が乏しくても「声優としても活動しています」なんて言えてしまえたりするのでそういう人も含めればやはり1万人はいるんじゃないか?と言われています。
特に今は個人から企業まで動画作りが盛んなのでフリーで活動していても一度くらいはやったことがある人はこのくらいいるかもしれません。(私もとある舞台で「声のみの出演」という役をやったことがあるのでこれも声優のお仕事をやったに入るでしょう)
「なぜ声優になりたいと思ったのか?」
そのきっかけにテレビアニメの影響はかなり大きいはずです。だから声優志望者の多くは声優のお仕事=アニメというイメージがこびりついています。が、現実的に考えて今、活動している声優さんだけでも十分すぎる人がいるという現状からアニメ出演だけの仕事で生活していくのはあなたの憧れの声優さんであってもギリギリのところでやっていると覚えておきましょう。
ある年の映画制作本数
これだけでもどれだけバランスが悪いのかという点においてはイメージできたと思うので、こちらはささっと済ませます 笑
おそらくこの中にアニメ映画も含まれていると思いますので40本くらい減らして554本としましょう。根拠は↓
制作「分数」で表してますが一本2時間としたら40本で4800分なので(ざっくりなのは許してくださいw)
ここでも最初から最後までバランスよく出ているメインキャストで出演するのは6人くらいに設定して、
554×6=3324
ここに前後半のみでいなくなる、ほんの数分で出番が終わる役も含めれば4000人は超えるでしょう。台詞無し、ほとんど背景と化しているエキストラも入れたら5000人以上とかなる?
現在、俳優として活動している人数は?
「タレントデータバンク」には2万弱の人物が登録されており俳優も声優と同じく資格がない以上は一応、全員に映画出演の機会が回ってくる可能性はあります。
しかし一般的に演技をする俳優としてイメージが定着している人は1万人くらいという記述もあります。
様々な都道府県別の統計を出しているサイトで、どこの県に著名人が多いかというランキングから引用しました。
半分に減ったとはいえ3千人のメインキャスト枠に1万人の俳優が奪い合うと考えたら7千人近くがこぼれ落ちることになるので、やはりアニメにせよ映画にせよどれだけ主演を取るのが大変か、おおよその数字を見るだけでもより厳しい世界だなとご理解いただけるんじゃないでしょうか?
このバランスを少しでも是正したいならとりあえずこれ以上、俳優・声優を増やすなと言うしかありません。とはいっても繰り返し必要な資格がないため、今まで演技のことなんて全く関わりのなかった元プロスポーツ選手がいきなり出来てしまうこともありどう抑制していいのか分からないのですが・・・。
簡単に出来るのは芸能事務所は数年に一回しか新人タレントを募集しない、専門学校・養成所は志望者をごく少数しか受け入れないがありますが後者はビジネス的にそういうわけにもいかないので難しいところです。
まとめ
この記事で出した数字は目安です。また別の年なら数十単位の増減はあると思いますが、この数字がこれから大幅に減ることはあっても倍の数字になるなんてことはアニメというコンテンツが国内外から大人気であると知れ渡ってから久しいので今の日本では300〜400本前後を作るのが限界なんだと思います。
自分なんかがそうですが無邪気だった当初は「作品出演だけ」で生活できるようになるぞなんていう目標を立てていましたが、こんな倍率を見るとそんなのはほぼ不可能だと思い知らされます。一本の主演を務めるだけで何千万の報酬が入るなら別ですが、そんな高いギャラはこの制作本数に一体何本あるのでしょうか?(声優はランク制でギャラは固定されているので交渉の余地は一番上のフリーランクにならないとありません)
↑この記事でも書きましたが、
大衆の目に触れる、注目される作品出演は自身の宣伝と捉えて、これを機に自分のことを好きになってもらい、そこからファンクラブなどに誘導してそのファンからも直接課金してもらうというのが長期に渡って芸能活動以外の仕事をしなくても安定して生活できるようになる道となります。
そして重ねて、声優志望者はアニメやゲームが一番やりたい仕事と位置付けるのは構いませんが、それだけでは厳しいと受け入れて色々なことに興味を持って活動の幅を広げることを心がけましょう。やはり私の世代からそうでしたが声優志望者はアニメ・ゲームにしか興味がない人が多いです。
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では今回は以上になります。最後までお読みいただきありがとうございました。
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