パミール高原、天近くむき出しの自然の中でも強かに生きる遊牧民たち
アフガニスタン、中国、キルギスと接するタジキスタン東部のパミール高原へ。
「パミール」はタジク語で「世界の屋根」。
7000m級の高峰が連なる。
村に近づくと、やっぱり子供たちが駆け寄ってくる。
パミール人はタジク人と同じくイラン系アーリア人だが、タジク語とは異なる言語を話す。
「これは何?」と聞いたら「パミールギターだ」と。
村には「Home Stay」と呼ばれる宿があり、食事付きで泊まれる。
ホームステイといっても無料ではない。
外国人向けなので現地の物価と比べるとなかなか高額。
砂道。
波道。
この波状のデコボコは未舗装ではよく見られる現象だが、タジキスタンは特にひどい。
サイクリスト泣かせ、というよりは自転車殺し。
ムリにこの上を走ったらバラバラになってしまいそう。
砂利道。
川道。
水没。
パミールで仲良くなったアメリカ人旅行者とは道中何度も会った。
パミールは自転車やバイクで旅する外国人(ほぼ欧米人)がとても多いが、バックパッカーは移動手段がないので、仲間を見つけて数人のグループで車をチャーターするらしい。
自転車は楽だ。
世界中どこであれ、またがってこぎ出せばいいだけ。
標高が上がり、村が消え、無人地帯へ。
と思ってたらいきなり現れた人。
あそこに住んでるの?
ひしめき合う家畜と、数人の人が見える。
なかなかすさまじいな。
家畜と水さえあれば生きていけるということか。
これもう半分独立国家でしょ。
アフガニスタン、近っ!
川幅10mもない。
国境警備してそうな人は見当たらない。
ロープを投げれば物資等いろいろ運搬できそうだ。
標高4200mの湖畔でキャンプ。
これぐらいの高度になると、スパゲティがうまく茹で上がらない。
標高4300m。
うん、こういう感じ。
高地では、空の色が違う。
空気中の塵やガスが低地ほど沈殿していないため、澄んでいて空の青がよりビビッド。
でもその分紫外線も強烈でまぶしい。
標高3800mの泉。
水中の森。
湧いてる。
パミールは欧米人サイクリストに大人気で、毎日のようにすれ違うし、大きな街の宿はサイクリストだらけだっりする。
冬季は通行不能になるので、夏季はなおさらにぎわう。
ある日の走行中、多国籍のサイクリスト7人組と出会った。
かれらはもともと別々だったが、方向が同じ者同士で自然と集まり、グループ走行するようになったそうだ。
僕とは方向が逆で、しばし立ち話だけして、別れた。
数日後、多国籍サイクリスト7人が襲撃されて4人が死亡したというニュースが耳に入った。
僕が出会ったあのグループと、国籍も人数も一致し、場所も日付も矛盾しない。
あの人たち、殺されちゃったのか。
強盗目的だったら単独旅行者が狙われやすい。
テロ目的だったらグループが狙われやすい。
外国人旅行者に人気の場所で一度でもこういう事件が起きれば影響は大きい、その影響をあえて狙った犯行と思われる。
標高4300mで暮らす人。
パミールハイウェイの最高地点、標高4655m。
峠には標識も何もなく、なんとも殺風景。
パミール北東部には、キルギス族が住んでいる。
遊牧民であるかれらに国境など関係ないのか、キルギスから中国、そしてタジキスタンにかけて分布している。
モンゴルではゲルと呼ばれる移動式住居、ここではユルトと呼ばれる。
標高4100m。
強風が吹き荒れ、キャンプ地探しに困っていた夕刻。
ユルトから女性が出てきて当たり前のように僕を中に入れてくれた。
(後になって、ここも有料のHome Stayであることが判明した、あしからず)
ヤクのミルクティーにヤクのヨーグルトにヤクのバター。
自給自足しながら移動する遊牧民にとって、国家あるいは国境はどんな意味を持つのか。
我々と似た顔をしていても、その人生は想像を超える。
かれらはタジク人でもなく中国人でもなく、きっぱり「キルギス人だ」、と明確なアイデンティティを持っている。
(発音は「クルグス」、「ル」は巻き舌っぽく聞こえる)
この長いハットがクルグスのトレードマーク。
カラクル湖(標高3923m)。
定住するにはあまりに過酷なパミール高原。
パミール人もキルギス人もそして旅人も、ここでは皆遊牧民かもな。
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