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カウンセリングと心理療法の違い?

「カウンセリング」のイメージ

公認心理師・臨床心理士の浅井です。みなさんは「カウンセリング」という言葉を聞いて、どんな言葉やイメージを思い浮かべますか?

おそらく「傾聴」とか「受容」、「共感」といった言葉や、「話をただひたすら聴いているイメージ」が多いのではないでしょうか(専門的には、ここにあと「自己一致(あるいは純粋性)」も付け加えてほしいところですが)。

カウンセリングの歴史

カウンセリングはもともと、職業指導の文脈でパーソンズという人が用いた言葉から始まります。職業指導の中では、指導的・指示的な「カウンセリング」だったのですが、ウィスコンシン大学のカール・ロジャーズがその「カウンセリング」を支持的(指示的ではなく)で、アドバイスを基本とせず傾聴を重視するものへとイメージを変えることとなりました。

「心理療法」の歴史

それに対し、心理療法はどうでしょうか。多くの場合、その昔ジグムント・フロイト精神分析を始めたことが、心理療法の始まりだと言われています。フロイトらに行われた精神分析は、週4回以上行うものでした。一般市民が受けるには時間もお金もかかりすぎてしまうものであったこともあり、今では精神分析的心理療法として行われていることが多いでしょう。

心理療法は、精神分析から始まる「精神力動的心理療法」の流れと、それに反発して生まれた行動主義から始まる「行動療法」、アーロン・ベックの「認知療法」、前述のカール・ロジャーズの「クライエント中心療法」をはじめとした人間性心理学など多岐にわたります。

いわずとしれた20世紀最大ともいわれる天才催眠療法家ミルトン・エリクソンの技術も、家族療法解決志向アプローチエリクソン催眠、その他の形をとって残っており、また日本では日本の心理療法として内観療法森田療法臨床動作法などが挙げられます。

カウンセリングと心理療法の異同

さて、そこでこの話題に戻ってきたのですが、ある臨床心理学の教科書にはこんなことが書かれていました。

「カウンセリングと心理療法はほとんど同じ意味で使われる」

たしかに、心理療法として発展してきた精神分析からの流れ、それに反発した行動主義、人間性心理学といった中に、現代でいうところのいわゆる「カウンセリング」とされる「クライエント中心療法」があると考えることは可能です。

ただ、現代日本において、「心理療法」という言葉よりも「カウンセリング」という言葉の方がより知られており、薬物療法と併用されるものとして、医師も「あなたにはカウンセリングが必要なのでは」というイメージがあります。

そう。「心理療法」という言葉はあまりに(カウンセリング以上に)マイナーであり、さらに心理療法の中に含まれる種々の心理療法(認知行動療法や家族療法、内観療法、森田療法など)はもっとマイナーといえるかと思われます(それでも認知行動療法は知名度を上げてきましたが)。

カウンセリングと心理療法の区別をつける

公認心理師という国家資格もできたことですので、ここははっきりしておいた方がいいのでは?と思ったことに、この「カウンセリングと心理療法の区別をつける」ということがあります。

しっかり「心理療法」の存在をアピールしていかなければ、公認心理師の専門性を世の中に伝えていくことなんか、できないのではないかと思います。

だからといってカウンセリングを軽視するわけではありません。カウンセリングは「ただ聴くだけ」ではなく、カウンセラーは「いかに聴く存在として在るか」ということが求められます。今回の記事のタイトルは、カウンセリング単体に関するものではないので、そのあたりは省略します。

カウンセリングが、「いかに聴く存在として在るか」という哲学的要素を含みながらも、「傾聴し、受容・共感する」ことであることに対し、

心理療法は、傾聴し、受容・共感という精神こそ似通っていても、心理学(多くの場合は臨床心理学)に基づいた「(様々なタイプを含む)心理的なアプローチ」であるということが認識されること、

そして、その上でその「心理療法」には様々な種類があり、可能性のある領域として臨床家は研鑽を続け、そこにアクセスしようと一般の方が思えるような認知を世の中に広めていくことが必要なのではないでしょうか。

知られていない心理療法

薬物療法、電気けいれん療法、理学療法、作業療法などが知られている中、心理療法という言葉があまりに世の中に知られていません。

ここでの結論として、「心理療法」という言葉は「カウンセリング」という言葉と、一旦切り離されて考えられる方が良いのではないでしょうか。

P.S.「カウンセリング、心理療法は『知る人ぞ知る』でいい」「たまたま興味を持って知ってくれた人さえ来てくれれば」という声が臨床家(臨床心理士など)側からあるのも承知しています。

ただ、そういった選択肢が隠されれている世の中よりも、この情報社会の中ではもっと知られること、必要な人がアクセスできる状態を作ることは大事なんじゃないかなぁと考えています。

それぞれの心理療法やカウンセリングの紹介については、また機会があればnoteでも書いてみたいと思います。

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