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【エッセイ】のどちんこの正体

 姉といっしょに柿を食べていたときのこと。
 私が小学生、姉は中学生くらいの頃だったと思う。
 柿は、よく熟れていた。その熟れ具合といったら、歯を使わなくても食べられるほどのやわらかさだった。
 もぐもぐと柿を食べながら、姉が突然
「ねえ、見てみて」
 と言って、口から何かを取り出して私に見せた。
「のどちんこ、とれた」
 赤みがかったオレンジのその物体は、半透明でゼリー状に見えたが、姉の指先で不思議と形を保っていた。
 何だかわからないうちに、姉は満足げにそれをまた口の中に入れて飲み込んだ。
「もとに戻った」
 そう、それは熟れた柿の真ん中の部分だった。
 私は、姉の行動をくだらないと思いつつ、それ以来なぜだか熟れた柿が苦手になった。
 今でも柿を食べるときは、歯ごたえの残る若いものを選んで食べ、この一件を思い出して少し笑う。
 そして時どき、口の中に柿の真ん中のゼリー状の部分が残ったりすると、
「のどちんこ、とれた」
 と一人で呟いてみたりする。

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朝日 ね子
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