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『宙ごはん』を読んでみた

こんにちは!読んでいただきありがとうございます。
『宙ごはん』(町田そのこ著)を読んだので、感想を書いていきます!
ネタバレはしません。

この本は、先日2023年の本屋大賞ノミネート作品の第8位に選ばれた本です。タイトルにひらがなで “ごはん” という言葉が入っているところから、なんとなく、ほんわか系の穏やかな物語を想像したのだけど、読んでみると、波乱万丈な物語でした!

主人公の宙(そら)が少し特殊な家庭環境で育つ過程について書かれた物語。母親・花野(かの)との関係に悩みながらも、周りの大人や学校での人間関係の中から、人生の教訓を感じ取っていく様子が描かれている。

花野の後輩・佐伯恭弘が、宙にとって父親の代わりのような存在となり、宙へ料理を教えたことをきっかけとして、宙は料理を通していろいろな人とつながることとなる。

宙は恭弘から、料理のレシピや技術だけではなく、料理を通して人とつながったり、人を救ったりすることで自分自身を満たしていく喜びを学んでいた。感動の最後の場面では、今度は宙が人々へ愛と思いやりを伝達していきたいと決意する。

この小説で出てくる場面は、幸せな出来事はすごく幸せだと分かる一方で、悲しい出来事はすごく悲しい。ここまで波乱万丈な人生だったり、人間関係だったりは、この世に本当に存在するのか?と疑いたくもなった。

けれど、ここまで大胆に振り切った物語の流れがあったからこそ、私の潜在意識の中でぼんやりとしていた喜怒哀楽の感情が輪郭を帯びてくっきり表れてきたのを感じた!この1冊の本の中で、喜怒哀楽を色濃く感じることができる小説でした!


読んだ後の感想

泣いた。

料理って、恵まれた環境で生活している私は、普段何気なく食べているけれど、作る人の想いを感じてみることで、こんなにも温かくて愛を感じられるものなんだと、ちょっと反省した。。

誰かを愛したい、大切にしたい、包みたい、守りたいと思えば思うほど言葉にできなくて、そんな言葉にできない想いを“料理”にのせてさりげなく届けられたらいいな、、とちょっと夢見てしまった。

物語のなかでは、父的存在(法律上・事実上の父ではない)の恭弘が、母との関係で悩み、傷つく宙へ何度も温かい言葉をかける場面がある。宙を救う言葉をかけつつも、宙の母であり、自分の先輩である花野(かの)の葛藤を誰よりも理解していて、絶対に悪者にしない感じがすごくカッコよかった。

宙に「花野さんは悪くないよ」とだけ伝えても、宙の心の悲しみは消えないし、むしろ深まるかもしれない。でも恭弘は宙の悲しみをちゃんと受けとめていた。そんなセリフをいくつも読めたのは、私にとっても思い出になった。

恭弘の中には、誰も悪者にしないのに、目の前で苦しんでいる人の心をしっかりと温める言葉やレシピ集があるのがすごいなと思った。※料理のレシピだけでなく。

作中で、花野を想う恭弘は、「花野さんのしあわせの器に一番ぴったりな料理(作中から引用)」がわからないと嘆いていたけれど、読者の私から見ると、恭弘はすでにぴったりな料理(=愛と思いやり)を与えられていたんじゃないの?と思った。

宙の母である花野も、宙の視点から見ると無愛想でぶっきらぼうな母に見えるけど、宙とともに年齢を重ね、いろいろな出来事を経験する過程で、ずっと自分の中で渦巻いていた、生い立ちの過程での悲しみを手放し、宙との接し方を学んでいく様子がわかる。

花野はきっと誰よりも宙を愛したかった。でも、さまざまな葛藤の中でストレートに宙と向き合うことができなかった。それを自覚していたからこそ、距離をとったり、無責任に親としてのエゴを押し付けたりしない形で、宙を守ろうとしてきたのかな?なんて感じた。そんな日々を乗り越えて、最後には宙と心の底でつながるシーンが来たときはすごく感動した。

宙と花野だけでなく、この物語に出てくるあらゆる登場人物は、喜怒哀楽の感情を強く感じながら、時に誰かを傷つけながらも、時にはまっすぐに人を思い愛していた。

愛情も、憎しみも、喜びも、悲しみも、感じているのは自分だけなのかもと思っていても、実は人から人へしっかりと伝達している様子がすごくわかりやすく描写されている。

家族、親戚、学校の友達など、大切な人が潜在意識に秘めている、誰かを愛したい、誰かと深くつながりたい、という欲求が読者の私の心にもしっかりと届くぐらいわかりやすい作品だったな。

どんな人におすすめ?

人とのつながりで臆病になっている人や、誰かを想う気持ちに自信が持てないでいる人にぜひ読んでいただきたい。

この本を読めば、上手に伝えられなくても、その葛藤こそが愛の証じゃないの?と自覚できるタイミングが来るような気がする。

失恋から半年がたった私も、また誰かと深くつながりたいと思えるようになりました。

子を持つ立場の人が読んだら、独身の私とはまた違うことを感じるのかな?

おわりに

料理を通してみる愛情を感じられる、心温まる小説でした。

あと、料理って、忙しいとないがしろにしがちだけど、意外ともっと楽しいのかも??と思い、チャレンジしたくなりました!

おいしいものを食べて大切な人とつながりたい。
私の望む幸せの1つは、やっぱりこれかもしれないと思いました!



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