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「いくら似てようが、パンダに敵うわけがない」上野のアイドル・シャンシャン

 新刊が出る度に、広告を作り、POPを作り、チラシを作る。宣伝課のしがないスタッフである築地川のくらげが、独断と偏見で選んだ本の感想文をつらつら書き散らす。おすすめしたい本、そうでもない本と、ひどく自由に展開する予定だ。今回は『ずっとだいすきシャンシャン』を嗜む。

八兵衛「くらげよ、聞いたか? 上野のお山のパンダが双子の赤ちゃんを産んだってよ」
くらげ「おお、そいつはめでたいねぇ」
八兵衛「パンダってのはお前さんとこと違って、ずいぶんと子づくりが大変だっていうじゃない」
くらげ「はっつぁん、俺んちのかかあと比べちゃいけねぇや。そういやーよ、あれ、中国に帰ったんだっけか、ほら、この前生まれたパンダ、シャンシャン。中国に帰(けぇ)るんだろ」
八兵衛「シャンシャンはまだいるよぉ」
くらげ「おおそうかい、まだ上野のお山にいるのかい? ありゃ、じゃああれだね、お前さん、兄弟ができたんだよって、オイラ、知らせにいってやんなきゃ」

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 シャンシャンはまだ上野だが、残念ながら入場は予約制で気軽に会って知らせることはできない。もっとも私が知らせなくても、もう飼育員さんが声をかけたにちがいない。ま、シャンシャンが理解するはずはないが、今回の双子誕生によってパンダに注目が集まることは事実。だったらぜひ、『ずっとだいすきシャンシャン』を楽しんでもらいたい。シャンシャンの成長をふんだんな写真で振り返る写真集だ。

 シャンシャンは美人さんだという。パンダの美人の基準はよくわからないが、専門家はそう感じるそうだ。そもそもパンダはなぜ、人を夢中にさせるのか。私のビジュアルはパンダに似てなくもない。体が大きくて丸いし、動きも遅い。寝不足がたたって目の周りも黒い。だが、人は私に決して夢中にならない。どこが違うのか。それは簡単だ。お前は人間だからだ。パンダはパンダなのだ。類似点がいくらあろうとも、人間はパンダにはなれない。パンダみたいな人間とパンダは天と地ほどの差がある。

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 パンダがなぜかわいいのか。これはもう本書を1分ぐらいパラパラめくれば、すぐわかる。掛け値なしにかわいい。純粋なまでのかわいらしさが本書の隅々に広がっている。私の写真集では残念ながらこんなかわいらしさは表現できない。

 本書でもよくよくそのかわいらしさをイラストつきで分析してくれているが、丸顔でおでこが広く、目鼻が顔の下部に集中している。このくしゃっとした構造は反則だ。

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 昔、パンダの目をよーく見ると、実は怖いと言った人がいたが、その目を覆う黒いフチ取りは、寝不足の隈とは違って、実は怖い目をタレ目に見せる効果がある。これもずるい。

 また頭が大きいわりに手足が短い。それも極端に短い。その短い手で竹をつかんで口にくわえられては敵わない。おじさんがアイスキャンディをなめても無価値だが、パンダは竹をくわえるだけで絵になる。

 そして、内股で歩き、柔らかい体でコロコロと転げられてしまっては、かわいいと言わざるを得ない。おまけに1日に十数時間も眠り、これでもかというほど、のんびりと時を過ごす。そんなに眠っていたら、私は確実に家を追い出されるだろう。もうこれ以上、自分と比べるのは涙で画面が見えなくなるのでやめる。

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 シャンシャンは本来、2歳になったら中国へ帰ることになっていた。だが、諸事情が重なり、昨年末の帰国も延期になった。だが、パンダ保護の観点からシャンシャンには大事な役目があり、まもなく中国へ移動することになっている。最後にシャンシャンに会いたいが、まだまだ気軽に動物園へ行けそうにない。昔、幼いころ、トントンに会ったことはあるが、残念なことにあなたに会ったことはない。あなたにひと目会いたかった。

 2017年6月12日11時52分、たった147グラムでシンシンのお腹から出てきたシャンシャンは、上野動物園の関係者とシンシンの愛情をたっぷり注がれ、立派な美人さんに成長した。会えば、みんな虜になる。これぞまさに会いに行けるアイドルだ。現在、シャンシャンの撮影は禁止されており、ゆっくり眺めることも難しい。ぜひシャンシャンにゆっくり会えないかわりに『ずっとだいすきシャンシャン』をどうぞ。

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 ちなみにパンダに完敗のくらげは、撮影いつでもOKです。あ、そんなのスマホのメモリの無駄ですかい?

 おあとがよろしいようで。

(築地川のくらげ)


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