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親は、何を教えるかより、何を教えないか、を考えるのがいい

「親は、何を教えるかより、何を教えないか、を考えるのがいい」
 こう話すのは、『子どもの地頭とやる気が育つおもしろい方法』(朝日新聞出版)の著者、篠原信先生だ。篠原先生は、学習塾を主宰し、不登校児や学習障害児、非行少年などを積極的に引き受けて、生徒全員の成績をアップさせた経験を持ち、科学の視点で子育てにかかわる活動を続ける、異色の科学者。長年、子どもたちの指導だけでなく、育児相談にも関わってきた篠原先生が、子どものやる気を伸ばす「驚くだけ」の子育て法を紹介する。

 私は、赤ちゃんに対するお母さんの接し方が、最高の指導の形だと考えています。言葉を話せない赤ちゃんに、ハイハイの仕方や立ち方、歩き方を教えることはできませんよね。見守るしかありません。赤ちゃんは試行錯誤の中で、ある日、寝返りを打てるようになり、ハイハイし、立ち、歩くようになります。

 その時、親にできるのは驚くことだけ。子どもは親を驚かせることができてとてもうれしそう。「ようし、もっとできることを増やして驚かせよう」と、子どもはワクワクしながら次の課題を探します。赤ちゃんの頃から、子どもは自分の成長で親を驚かせるのが大好きです。

 しかし子どもが言葉を話せるようになると、親はついつい「口先介入」を始めてしまいます。「そうじゃなくて、こうした方がいいよ」。言葉が通じるようになったものだから、つい言葉で教えようとしてしまいます。しかしそのことによって、子どもの大好きなことを奪ってしまうになります。親を驚かせることです。

「教える」と、親はもうそれを知っているのだということを子どもに伝えることになってしまいます。すると子どもは、それを克服しても親が驚かないということに気がつきます。「こんなこともできるようになったよ!」と驚かせたいのに。それどころか、親はさらにその先のことも当然視して、「早くできるようになれ」と、むしろご不満なのだということを察します。

 親は親切心で、早くできることが増えるようにと教えているつもりなのですが、そのために、子どもはずっとずっとできることが増えても、親はもう驚いてはくれないのだ、ということに気づいてしまいます。すると、ひどくつまらない気分。しかもなんだか、手のひらの中の孫悟空のような気分で、面白くありません。

 だから、私は、「教えない」方がよいと考えています。何もかも教えないわけではないのですが、必ず、子どもが自力で見つけるか、打開しなければいけない、「教えない」部分を残すようにしてみましょう。すると親も、「え、そこは教えてないのによくできたなあ」と、素直に驚けます。子どももしてやったりとうれしそうに笑います。

 親が先回りしてしまうことは、それができても親は驚かないことを宣告してしまうようなものです。それは、子どもがその分野に興味を失う最大の原因になります。子どもは親を驚かせるのが大好きなのですから、その大好きな部分を残してあげてください。

 子どもの成長に「驚く」ことができるよう、「教えない」部分を残すようにしましょう。子どもが自力でそれを発見したこと、克服できるようになったことに驚けるように。そして、素直に「教えていないのに!ビックリ!」と驚き、子どもと一緒に手を取り合って喜び、ハイタッチする。それでよいのではないでしょうか。

 親の驚く顔が見たい、そんなワクワクするような欲求を持っている子は、次から次へと、親が驚きそうな課題を克服しようとします。ですから、子育てでは、何を「教える」かではなく、何を「教えない」かに心を砕き、驚く準備をしてあげてください。

 小説「赤毛のアン」では、育ての親のマシューがアンの成長に驚き、喜ぶ姿が描かれています。これは小説ですけれど、そんな人がひとり、自分の身近にいたら、「驚かせたい、喜ばせたい」と思うようになりませんか? それは子どもも同じです。ぜひ、驚いてください。驚けるように、子どもの接し方を工夫してみてください。それが、自主性、能動性を養うコツなのだと、私は考えています。


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