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無期限くるま旅のホンネ #2 車で行ったところしか行けない

カンタンな近況

私は今、大好きな沖縄で借りていた部屋を解約して、4年勤めた会社も辞め、DIYなしのN-BOXでパートナーとともに無期限の車中泊旅をしている。5月5日、こどもの日に沖縄から車とともにフェリーで出発し、鹿児島にわたり、そこから2か月かけてパートナーの地元・弘前まで北上した。今はパートナーが故郷でもろもろの目的を果たすため、旅は小休止中だ。

(サムネイルは広島県呉市で食べた海軍カレー)


今回のホンネ

さて、今回のホンネ。
車中泊という旅の手段は、いくつもの自分が見ておくべきだったかもしれない場所を、取りこぼしてきたかもしれない、という理由で、ベストではなかったかもしれない、ということだ。
あくまで「車中泊旅」という旅に注目したときには、車での移動は、行き先を選んで、選んだところ(と周辺)しか行けない(行かない)。当たり前のことだが、これは私にとってけっこう大きなことだ。

そのほかにも、カーナビに頼ることで魅力的な通りが切り捨てられ、通った地域のことも記憶に残りにくいし、車を家にすることで常に駐車場探しに迫られるのが大変という理由もある。

数ある手段の中で、車になった

国内旅行にはいくつもの手段がある。飛行機、フェリー、電車、バス、自転車、徒歩、タクシー、ヒッチハイク。そして自動車。海外なら馬やラクダもあるのだろうか。

私は沖縄から出発しているので、電車やバスでスタートすることはできないけれど、飛行機かフェリーで他県へ移動した後、どの手段ででも始めることができる。その中で、私たちはたまたま車を選んだ。特に、どれにしようかと選んで車旅にしたのではなく、私が軽自動車を持っていたこともあって、自然とそうなった。他の手段は、たぶん考えもしなかった。前から、リュックひとつで旅をしてみたいという思いはあったけど、パートナーと一緒に行くにあたって、徒歩や公共交通手段で行こうと提案しようとは、少しも思わなかった。

あまり深くは考えなかったものの、他の手段とは異なり、衣食住に必要なものすべてを厳選していつでも車で積んでいられることや、道路があるところはどこにでも行ける自由度、また宿泊費を大幅に抑えることができる経済面などが、自然と後押ししたのだろうと思う。仕事を辞めたので、貯金が減っていくという金銭面の不安を除いて、実際に車で生活していくことについては、安くお風呂に入れる場所が毎日見つかるかな、川で水浴びすることになるかしら、くらいの不安しかなかった。

車は、選んだ場所しか行けない(行かない)

道の駅や公園など、前の晩から寝床にしていた場所で目覚めれば、また次の目的地へ向けて車で走り出す。その過程で通りかかる街で、何か面白い場所がないかと、ざっくりリサーチする。観光地としての有名どころであればあるほど入念に。でもこれって、先入観とか思い込みが多分に影響する。

たとえば、パートナーの方は、九州が温泉どころなどとはつゆ知らず驚いていたし、私は鹿児島や熊本の中心部が思っていた以上に都会だったり、名前だけは聞いたことのあった広島県の尾道や、今現在3週間にわたり滞在している弘前が、街の規模や賑わいからは想像できない奥深さがあることを知らなかった。

千光寺から見た尾道水道、よかったなあ

でも尾道や弘前は結果的に体験できたからよかったけれど、たとえば佐賀県や静岡は、佐世保バーガーと焼き物とお茶とミカンでしょ、といった具合に、わかったつもりで見るものなどないと思って、ほとんどスルーした。でも結局あとから気になって、福岡に長く滞在した際に、佐賀に戻って伊万里や唐津に行ってみたら、その小規模ながらも雰囲気のある商店街や、焼き物を通したヨーロッパとの交流が窺える伊万里焼の歴史など、学んでみたらおもしろく見どころがあると感じたものだった。

これがもし、公共交通手段を用いた旅だったなら。電車やバスは、賑わいがある場所(観光・行政・商業的に重要な場所)を中心に発達するものだから、必然、そこに立ち寄ることになるだろう。駅前や主だったスポットにとりあえず降りたなら、そこを拠点にその街の雰囲気を知ることができる。狙って行かずとも、中心部を歩きまわってみることで、偶然の発見や出会いが多々あっただろう。

けれど、車という乗り物で、自分の思い込みと浅いリサーチ結果を頼りに目的地を選別する(ほとんどの選択肢を切り捨てる)ことで、たくさんの新しい驚きとの遭遇のチャンスは失われたはずなのだ。

結局、「何か面白い場所があると知っている・予想する」→「調べる」→「見つける」という過程がなければ、そこに行くことはない。「気になる」と思わなければ、検索すらしない。検索したって、自分の琴線に触れるものは、存在するのに、何かのはずみ(アルゴリズムや検索ワードのズレ)でヒットしないかもしれない。ヒットしなければ、その場所はなかったことになってしまう。

それでも、たまたま通りかかったときに、気になって、そこに停まってみたり引き返せたらまだ良い。けれど、たいてい、「んっ?」と思っても、よほどのことがないかぎり、「まいっか」とそのまま走り去ってしまう(見知らぬ土地では安全運転を続けることだけでも神経を使うのだから、致し方ない面も多分にある)。

思いがけない出会いがあるから徒歩が好きなんだった

余談だが、弘前長期滞在の終盤となった今日も、主だった観光地や施設は見終わっていたので、宿から徒歩30分ほどの「弘前八幡宮」へ行ってみた。そしたらその途中でイザナギ・イザナミを祭る「熊野奥照神社」や、その後に「弘前神明宮」、通りかかった武家屋敷のエリアで「旧岩田屋住宅」を見て、そこに貼ってあった地図で「弘前東照宮本殿」があることを知って行ってみるなど、芋づる式にいろいろな歴史ある建物を見ることができた。ぼんやりとした目的で歩き出したただの「散歩」が、実に有意義なものになって楽しかった。私が街歩きや散歩が好きなのは、思いがけない出会いが楽しいからだ(それが見たことのない植物でも私はうきうきする)。こういう偶然の発見や出会いが、車で時速数十キロも出して走ると、かなり減るのが残念な所なのだ。

弘前神明宮の境内にあった、御志羅様のお社

カーナビの弊害は大きい

Google Mapなどのカーナビ機能はめちゃくちゃ便利なのは、私が説明するまでもないけれど、通ってきた場所の景色も地名も記憶に残りづらい。ナビに従うことに必死になってしまう。それに、到着時刻の速さを重視されると、変な道に案内されて、その街を象徴するような景色を見落とすことも多々ある。幹線道路ばかりを通るので、こちゃこちゃした市街地は避ける傾向も強い。

車の駐車場探しに追われる

車にすべての家財道具(最低限の厳選されたもの以外は、実家に送ったり処分した)を積んでいる以上、車をどこかにおいて1日以上過ごすということはまずない。ということは、何をしに行くにも、まず車を置く場所を見つけなければならない。

快活クラブへシャワーを浴びに行くときは、無料駐車場があるか確認する。駅前などの中心部で食事するときも、駐車場があるか、またはコインパーキングがあるか確認する(車は大切な家だし、資金はなるべく節約したいので、路上駐車というリスクある行為はとれない)。都会の観光地もたいてい駐車料金がかかるけれど、やはり節約したいので、近くに無料駐車場がある公園などがないかまず調べる。このネット検索がなかなかに疲れる。

キャンプ用クッカーで炊いたご飯やスープ、スーパーマーケットの割引されたお惣菜などが節約ごはんの味方だけれど、お酒が好きな私たちは、時には繁華街で飲み歩いたりもする。博多、小倉、広島、尾道、大阪…。旅人の特権、時には日が高いうちから、ビールの安いハッピーアワーを活用して飲んだりもした。でもそのような繁華街には、当然無料の駐車場などない。私たちは初めて沖縄県内で車中泊の練習をした時のように、繁華街に必ずある24時間最大料金設定のあるコインパーキング(最高で1000円くらい)を探して、椅子を倒し寝床をセッティングした後、意気揚々と街にくり出す。少ない手持ち衣装の中から、できる限りのおしゃれをして…(笑)そのコインパーキングも、繁華街から徒歩30分以内くらいの最安値を必死で探し出そうとするものだから、なかなか決まらない(100円でも節約しようとするパートナーに、キリがないからと、私が説得するのが常だった)。

おそろしく人でごった返している大阪の繁華街を歩きまわった時、人と車の間をスイスイ縫うように通り抜ける自転車の若者たちがとてもスマートに思えたものだ。大阪は、道頓堀から少し離れた駐車場にたどり着くまでの兵庫からの運転だけでもヘトヘトになった。10年以上自転車に乗っていないものの、身軽に移動できる自転車が欲しいと思った日だった。

関門海峡を徒歩で渡るという最高の体験の後、車を取りに福岡に戻ったことも

一長一短。でもやはり車は自由度が高い。

これがもし車がなかったら、置き場所に頭を悩ませることなく、てくてく自由に歩きまわれる。長期滞在している弘前では、車は宿から徒歩15分のパートナーの友人宅に置かせていただき(連泊にもかかわらずホステルに駐車場代を割引して頂けなかったので)、遠出でない限り買い物や食事や観光スポットに歩いて行った。梅雨時で雨の日も多かったが、傘をさしてテクテクとぼとぼ歩いた。そんな街中暮らしもとても楽しい。

でも車がなければ、公共交通手段が発達していない場所には行きづらい。必然、農村部などにある無料キャンプ場にも、郊外にある道の駅や絶景スポットにも行きにくいし、車中泊でないと毎晩宿をとって高くつく。宿をとる金銭的余裕があったにしても、チェックインやアウトの時間に縛られる。

それにどこへ行くにも、旅のすべての道具を背負って歩かなければならないし(または預け先を探し、取りに戻らなければならなくなる)、悪天候の日は行動がしづらくなる。調理器具や調味料もたくさん持ち歩けないので、自炊は制限される(今回、一般的な調味料は塩や醤油からコチュジャン、花椒まで持参し、お米はもちろん素麺やパスタ等の乾麺もあり、調理器具も複数のクッカーやカセットガス、固形燃料を積んでいる。おかげで、ホステルのロングステイ中も調味料など買い足さずに幅広い料理ができた)。

私は旅の間は仕事をしていないので、宿泊費や食費をなるべく節約するためにも、自由に様々な場所にアクセスするためにも、やはり国内の長期旅行には車を選ぶのだろう。自由度の高さとしては、やはり車が一番だろう。

ただ、家のない状態で長期の車中泊を続けてみて、また弘前にロングステイしてみて、一ヵ所を拠点にして徒歩でじっくり街を探索するすばらしさの方に惹かれずにはいられない。車の旅は、いわば広く浅くになりがちだ。有名どころのみを回る旅ならば効率は良い、が深く掘ることは難しい。

実際にやってみてわかったこの学びをかてに、次の旅の舞台である、故郷・北海道や、残してきた四国、北陸などをまわり(これはいつになるか分からないけれど)、さらには離島や海外にも旅の足を広げていきたいと思う。うん。やっぱり自分の足で歩くいて発見する旅は最高だよね。



くるま旅の様子がKindle本になりました!
noteに書ききれなかった書下ろしモリモリの書籍となっているので、ぜひ見てみてくださいね♪


旅を始める前に住んでいた沖縄での移住生活の模様はコチラ↓

車中泊旅の模様はこちらのマガジンで♪


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