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存在価値を提示するには ”おはぎ” が必要だったんだもの。

おはよう。こんにちは。こんばんは。ダンサー・振付家であり、egglife(エッグライフ)というダンスカンパニーの主宰をしておりますasamicro(アサミクロ)と申します。
今日は、こんな事を考え、お話をしたいと思います。

あなたが自分自身の存在価値を感じるものはなんですか?
それは必死に創り出すものであったりしますか?

今回は今年の12月15日ー17日に三鷹SCOOLにて発表される、egglifeの新作公演「海におはぎを投げる日」についてお話をしたいと思います。ただの告知だけではありません。今日はちょっと変わった実話をご紹介します。とある漁業町の本当にあった風習。「海におはぎを投げる日」今回のegglifeの作品タイトルでもある「海におはぎを投げる日」とは太平洋に面するある漁業町で昭和初期に 漁師たちが業務にあたっての安全や大量に漁獲できる事を祈願し、毎年一年に一度12月1日に海におはぎを 投げる風習が実在しました。

asamicroの祖母も漁師の娘として生まれ、幼少期からおはぎ作りを手伝い、振舞っていた経験があります。この作品は祖母の人生に寄り添い、そこから見えてきた個人的な願いや欲、幸せの形を見つめてみる形で展開し ているダンス作品です。

私の創作スタイルとして自身の経験や記憶を基盤に〈家族〉〈自然治癒力〉〈体内時計〉という題材に触れなが ら、事実に基づいたオリジナルストーリーで振付を展開いたします。

ジェンダーの差異や存在とは何かが問われる中、日本の漁業の世界では今も尚、区域によっては男性のみの 仕事とし、女性一人で漁港へ入る事は認められておりません。昭和初期に生まれ、仕事に生きた祖母がおはぎ を振る舞う事で得たキャリアと孤独、そして私自身の暮らしの中で大切にしている体内時計や自然治癒力といっ たテーマをストリートダンスで培った身体性を活かし、エネルギッシュにそして時に静寂に、他者を感じ、どこまで も広がる海を見つめながら最も個人的な希望を祈 り、願い、大きくて小さな優しい自己愛に光を当てる作品を目指し日々練習しています。

3万歩歩く日。

 先日、夫がいきなり「歩こう」と言い、結構ありえない距離を歩いた。朝起きて、おにぎりは夫が担当し、おかずは私が担当した。
お弁当作りは私にとって、いつも楽しい。本当にいつもお弁当作りは楽しいのです。その理由は、本当はわかっているけれど、よくわかりません。
目的地はGoogle検索すると8時間くらいかかる。それもスマートに歩き切れた場合だ。結局結果から話すと、目的地の半分くらいの場所で、力尽き、そして時間もいい感じになり、ちょうど海の公園があり、しっかり遅いお昼ご飯を食べ、しかも遊園地があり、ちゃっかりジェットコースターを乗って帰ってきた。
帰りは電車。謎な1日だった。それでも、とてつもなく疲れ、歩数を見ると3万歩以上歩いていた。

久しぶりにジェットコースターに乗った。

私の家族はいつも【ゆっくり】という言葉が存在しない様に感じた。一緒にいる時も幼少期のアクティビティな時間も、なんとなく覚えているピクニック的な外ご飯やキャンプだって、“ゆっくりなんとなく”そんな空気は存在しなかった。いつだって目的があり、結果があり、ゴールに向かっていた。なので、あまり目的を決めずにただ歩く、よくわからないけど帰ってくる。こんなお休みは存在しない。

素朴だけど、ザお弁当!が一番美味しい。

我が家は何をするにもすごく解散が早い家族だった。食事もパーティーも型式を済ませたら各々解散していった。だから私は、夫が黙ってこちらを見て食事をしているときに「何?」と聞き、本当に何も考えていない、ぼーっとしているという時間を感覚的に理解するまでには結構時間がかった。恋人や友人の距離ではなく、家族でボーッとするという時間にいつも効率性が悪いと感じてしまう癖があり、そして、私は常に家庭の中で私の生産能力を提示しなくてはならないと思っていた子どもだった。それはきっと、というよりも多いに祖母の生き方が私の中にも刻みこまれているのだと思う。

【海におはぎを投げる日】を今創作する理由


私はつぶあん派

 最近作った私のおはぎ。私はつぶあんが好きだ。本当いうと祖母におはぎつくりを教わり、それはこし餡で、とてもとても手間がかかるので、結局つぶあんにしてしまっている。結構美味しく出来上がったと思う。昔から自家製あんこ作りは私に取っての精神統一であり、趣味で、だからこの海におはぎを投げる日にすんなりと繋がった事もあるかもしれない。

 私の祖母は本当に働き者だった、働き者というよりは、働かなければこの世界から消えてしまう、そんな千と千尋の神隠しの呪縛を守るような執着で仕事をしていた。今回の舞台の作品の核となる部分

欲から生まれる原動力と孤独について


これが今回のダンス作品の私の中でブレない軸としているテーマだ。
私の祖母は昭和初期、あまり裕福な家庭では無く育った。戦後という時代背景もありますが、食事も家族内でランク分けされており、いつも量も質も良いものは長男であり、男であったという。残飯処理としての食事が祖母に回ってくるという。そういう生活環境から、祖母はいつも食に対しての執着を持っていた。大人になってからも、漁師の妻として懸命に働き、漁業では男性社会というのもあり、女は一歩後ろに下がり、祖父を支え、睡眠時間3時間ほどの日々でも惜しまず働いた。一番驚いたのは、私の父が生まれた時、まだミルクを飲むような赤子の頃、天井から哺乳瓶をぶら下げ、寝かせたまま仕事に行っていたという。それ位、祖母にとって仕事=富を得ることは優先順位の高いものだった。そして、いつも「食で困りたくない」「食べられないという思いだけはさせたくない」と口にしていた。
 祖母に男女で仕事が違かったり、できないことがあるのは悔しい?と聞いたことがあるが、そのことについては大して気にしていないく、「仕方ないし、そう言うもの」と言っていた。それよりも、とにかく貧乏にはなりたくない、見窄らしい姿は見せたくないと常に話していた。

幼少期の貧困生活や食に対する想いから、必死に働き、理想の自分をつくってきた祖母であるが、埋まってゆく理想と平行に個も強くなり、家族から孤立してゆく様にも私には見えた。

私の父は、おはぎは食べない。
そして、解散した私の家族もおはぎを食べるのは私だけだ。

祖母からおはぎを教わりに行った時

この「海におはぎを投げる日」には答えも終わりもない。
その様な気持ちで私はつくっている。ある視点から見れば豊かで、ある視点から見れば乏しい。そこにクロスした生き物や現象がどのように影響しあって、どの道を選んでゆくのかは私には決められないしコントロールすることができない。

どうにもならない家族や現実は、風の便りに、潮の流れに任せるしか方法がない事もある。でもそれでもそこに立つ人たちには出来るだけ、信じていて欲しいと思う、愛されていたことや、愛することが無駄ではないことを。そして、できる限り、「ありがとう」と言う言葉を忘れないで生きていて欲しいと私は願っている。残りの道に「かわいい人ね」と背中で言われて欲しいと願っている。

とても臭い文章になってしまったが、そしてもしかしたらありきたりな結果を描いている気もするが、でも、そう言うことを考えながら、この作品を作っています。

まもなく12月に入ります。
もうすぐ、1年を掛けてこの作品と向き合ってきたことになります。でもまだまだ終わりそうにありません。
 これはダンス作品ではありますが、ダンスに縁のない人にも上記に話したようなことを一緒に見つめてもらえたら嬉しいです。いろんな人が生きている中で、私が選んだ一番は誰にも否定ができないのだと思います。例え、それが幸せを呼んでいる結果でなくとも。そう言うことも全て背負って、それでも尚、おはぎを作って配り、魔除けをし、平和を願い、誰かに、、、

「あなたのおはぎって美味しいわね」

と言ってもらいたい。これは、祖母の話でしょうか、私自身の話でしょうか。

asamicro

写真撮影:前谷開 ※お弁当写真はasamicro

egglife「海におはぎを投げる日」豊岡演劇祭2023より

「海におはぎを投げる日」 物 語

asamicro の祖母の人生に焦点をあて抽象的な振付とエネルギッシュな動きで展開するダンス作品。 昭和初期のとある漁業町には 1 年に1 度、 漁師たちの業務安全を祈願して海におはぎを投げる風習が実在した。どこまでも広がる海を見つめ、最も個人的な希望を祈り、願い、大きくて 豊かな孤独がここにはあった。

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egg life新作公演【海におはぎを投げる日】

作品詳細

https://www.asamicrodance.com/about-2-1

【公演日】
12月15日(金)  夜の部:開演19:30〜

12月16日(土)  昼の部: 開演14:00〜 / 夜の部: 開演19:00〜

12月17日(日)  昼の部:開演13:00〜    
※開場は開演15分前

会場: SCOOL(三鷹駅南口・中央通り直進3分)

【Ticket】

前売一般 3,500円/前売高校生以下 2,500円
当日一般 4,000円/当日高校生以下 3,000円

【ご予約方法】
10月1日より、チケットぴあ、にてご予約できます。

チケットぴあ

[WEB]https://w.pia.jp/t/egglife-tokyo/

[店頭]セブン・イレブン

Pコード:522-068

【お問い合せ】
egglife.dance@gmail.com

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主催:egg life

振付・演出・構成:asamicro

出演:asamicro / TAIKI(TERM-INAL / Novel Nextus ) / 山中芽衣 / 北川結(モモンガ・コンプレックス)/ 小畑仁

舞台監督:鐘築隼

楽曲制作・演奏:小畑仁

舞台美術:日原聖子

テクニカルサポート:庄子渉

特殊照明:鈴木泰人

制作サポート: egg life crew ( 稲本朱珠, 上田千尋 )、宮本緑

フライヤーイラスト:モトムラアヤコ

撮影:前谷開

協力:ST スポット

助成:公益財団法人東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京[スタートアップ助成]

制作活動を行うにあたり、あなたの力をどうか貸してください!ご支援頂いたサポートは国内・国外で朝ごはんダンスの展示やパフォーマンスが出来るように使わせていただきます。