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1.クッシングと私

「クッシング症候群」という病気を聞いたことはありますか?

私は5年前、この病気と診断されました。副腎に腫瘍ができてコルチゾールというホルモンのバランスが崩れ、高血圧や免疫力の低下、体力の低下、骨密度の低下や血糖値の上昇などにつながります。やがては心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こす「怖い(by最初に発見してくれた医者)」病気です。コルチゾールはあらゆる生体機能を調整し、多すぎても少なすぎても病気につながるそうです。下垂体にできた腫瘍が原因だと「クッシング病」となります。

幸いにも早期発見で、自覚症状は当時、ほぼない状態でした。クッシング症候群になると現れるとされる外見的な症状(ムーンフェイスや首肩の肉が盛り上がる「バッファローハンプ」、中心性肥満など)もなかったので、正確には「サブクリニカル・クッシング症候群」というのが病名です。

治療として提示されたのは、腫瘍ごと副腎を摘出する手術でした。「副腎は2つあるため、1つとっても残りの1つが機能するから問題ない」というのが医者の説明でした。

しかし、もともと備わっている臓器を取るには抵抗も恐怖もある。しかも私の場合、残るもう1つの副腎にも「原発性アルドステロン症」という別の病気があることがわかり、手術してもすべてが解決するわけではない。手術後も長く治療を続けたり、体力等に変化が起こるらしい…

本当に手術以外の選択肢はないのか。進行すると、どんな症状が出るのか、どの程度までなら今と同じような日常生活が送れるのか。手術するとどんな状態になるのか、術後はどのぐらいで回復・社会復帰できるのか。仕事や日常生活を送りながら、治療や回復を続けることはできるのか。術後の治療もずっと必要なようだけど、どのぐらいの期間?そして、また元気になることができるのか?

知りたいことや、疑問がいっぱい。不安もいっぱい。でも、どこに、誰に聞けばすべての答えが得られるのだろうか?珍しい病気とされて症例が少ないうえ、当時通っていた医者は質問にも答えてくれず、患者にちゃんと向き合ってくれず、いまいち信頼できない。ネットを検索しても、出てくるのは医学的で難解な専門情報か、または数少ない経験者によるブログといったような両極端なものしか見当たらない。ブログは途中で途切れているものも多く、「その先はどうなったの!?」と読み進めるほどに不安が強まり、絶望の淵に落とされるような状況でした。 

「情報が欲しい!なのに、ほしい情報を見つけられない!!」

当時は(今もだけど)仕事もプライベートもやりたいことがたくさんありました。これまで何度か病気やケガ、手術も経験していましたが、なぜか自分は元気だと盲目的に思い込んでいました。一方で、年を重ねるごとに「このまま同じやり方、ペースで進んでいていいのかな」と、行く末について悩み始めていたときでもありました。

この病気が進行すれば、または思うような回復が見込めなければ、もしかしたら今と同じような生活を送るのは無理かもしれない。その場合、私はどんな人生を送りたいだろうか。どんな生き方をすれば後悔しないだろうか。

「この先、どのぐらい元気でいることができて、自分のやりたいことを追求できる人生を送れるのだろうか」。

切実に知りたいけれど、考えるための情報が足りない!

そんなとき、Facebook上でアメリカのクッシング患者さんたちが作るグループを発見し、参加してみました。参加者は詳しい症状や対処法、手術後の経過、術前・術後の外見の変化等々、個人情報(自分のプロフィールや写真)もバンバン公開しながら情報を共有しています。私自身も体調が悪化した時やふとした疑問を投稿すると、すぐにいろんな人が自分の体験談などを交えてコメントしてくれます。

「この症状はクッシングによるものなの?」「そもそも、これは症状と言えるの?」「薬や医者でなく自分で対処する方法はあるの?」「日常生活でのこんな困りごとはみんなどんな風に対応してるの?」「どれぐらいで職場復帰した?」…etc。日々の生活で今知りたいけど医者にはなかなか聞けない疑問も、ここに投稿すれば、現実の事例に基づく具体的な答えがすぐに返ってくるのです。

「私だけじゃないんだ」と思うことができるし、他の人の症例もとても参考になる。このグループの存在が、症状や病気について周囲の理解がなかなか得られない中で精神的な支えにもなりました。

このFacebook グループのような存在が日本語でもあればいいのにな…と思ったのが、今回のブログを思いついたきっかけです。日米では個人情報の扱いや考え方が異なるので、全く同じものは難しいかもしれませんが。

せっかく珍しい?!経験をしているのだから、記録に残して他の人とも共有したい。今後、知識や技術の進歩で、同じ病気の患者さん(早期発見)も増えるだろう。発覚時期が早ければ早いほど、仕事や家庭、日常生活との両立で悩む人も多いはず。同じ病気でなくても、似たような症状を抱える人や治療に向き合う人たちにも、働き方や生き方を考える上で何かの役に立つかもしれない。

病気になっただけでも不安なのに、体調が辛かったり、周囲に理解してもらえなかったりするとさらに孤独感が強まりますよね。そんな時、家族とも友人とも違い、心置きなく病気のことが話せるような、ちょっとした心の拠り所になるような存在があればいいな、と私自身が思っていました。
「あなたは一人じゃない」ということが伝わればいいな。そんな願いも込めて、このブログを始めることにしました。

前置きが長くなりましたが、私の自己紹介です。40代、女性。仕事は不規則で体力勝負、忙しくてストレスも多いけど、大好きでとても楽しんでいました。その仕事は今後も続けたいけど、若いときと同じような働き方はもうできない。他にもやりたいこともある、と考え始めた矢先に、病気が発覚しました。プライベートでは知らない土地に旅したり、人と会って新しい世界を知ったりすることが大好き。好奇心が私の原動力です。

そんな私にとって、アクティブな活動が制限されるかもしれないこの病気は、とても脅威に感じました。思うように動けなくなるかもしれない。でも、大切な私の身体だし、一生大事にしたい。

「この先、どれだけ自分の意思で元気で動けるだろうか。限られた時間の中で、何を優先したいだろうか」と考え始めました。当たり前に存在すると思っていた日常を改めて見直し、意志を持って生きようと決めました。病気をきっかけに、ライフシフトも模索したのです。ブログでは、そんなことも含めてつづりたいと思っています。

朝顔、という花を知っていますか。その日に咲き終わっても、翌日にまた新たな花が咲いていきます。花は可憐だけれど、ツルを支柱などに巻き付けて成長していくしぶとさもあります。
病気が分かったとき、将来への不安から毎日泣いていました。今も時々、よりによってなぜこんな病気に、なんで私が、と思うときもあります。周囲を見て焦ったり、自分自身に怒りを感じたりするときもあります。それでも、1つしかない大事な自分の身体。できる限りのことをして、これからもこの体を大切にして一緒に生きて生きたい。そして、どんな状況にあろうとも「生きる」ことを目いっぱい楽しみたい。「あさがお」の名前には、そんな願いも込めました。

これから病気が発覚した経緯や症状、手術を受けると決めた経緯、治療の状況などについて記していきたいと思います。私の経験をシェアすることで、同じような境遇の方の不安や苦しみが少しでも和らぎ、今後を考えるときに何かのヒントになれればいいな、と願っています。クッシング症候群や下垂体機能障害、内分泌関連のご病気の経験者やご家族の方々なども、参考になるような情報があればぜひシェアしていただけたらうれしいです。感想もお待ちしています。


いつだって朝は来る!

このブログにつづっているのは、あくまでも私の個人的な見解や体験です。実際には病院や医師によって意見や制度等々、異なる場合があります。また、私が経験した当時から現在まで時間も経過しているため、諸事情が変化している場合もあります。あくまでも「一つの事例」として理解し参考程度にとどめていただければ幸いです。


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