![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/13869501/rectangle_large_type_2_6045c6d8592de48f91ea1ce58c310a8a.png?width=800)
「BL」という偏見はもうじきなくなる/キヅナツキ「ギヴン」
ボーイズラブ、略してBL。
その言葉の意味を考え続けて幾千年…(うそですたぶん3年くらいです)
元々の言葉の意味は、Wikipediaだったりいろんなところで言われているものだったと思う。(以下Wikipediaより引用)
ボーイズラブ(和製英語)とは、日本における男性(少年)同士の同性愛を題材とした小説や漫画などのジャンルのことで、1990年代中盤〜後半に使われるようになった言葉である。
BLとはつまるところ、男性同士の恋愛を描いた作品のこと。
まず大前提として。今回、そういう物語を非難するつもりは毛頭ない。私自身、積極的にBL作品に手は出さないけど、好きな作家がBL作品を出している場合は買って読む。それに、人には人の、自分には自分の好きなものがあるのだから、「なんかいやだ」というふんわりとした理由で否定するのは間違っている。
閑話休題。
たとえば少女漫画や少年漫画には、明確な「対象年齢」というものが存在している。ちゃおだったら小学生〜せいぜい中学生まで。マーガレットは中高生、みたいな。そういうジャンルわけはレーベルが担っていたり、作者が担っていたり、いろいろなのだけど。
そう、それが「BL」にはない。え、なんで?
問題意識を持つようになったきっかけは、「ギヴン」という作品。高校生・大学生の男の子たちがバンドに精を出しつつも人間関係に悩む青春作品。あんなに楽しかった音楽への情熱が湧いてこない、好きだった人に二度と会えない、不毛な恋がやめられない…などなど悩みは尽きない。
今年の夏(2019年7月)、なんとアニメ化しました。おめでとう。
で、私がいろいろ考えるようになったきっかけがこれ。アニメ化が決定した時、各所でこういう書かれ方をしていた。
キヅナツキ『ギヴン』TVアニメ化決定!ノイタミナ初のBL作品 バンドマン4人を描く青春群像劇
「ノイタミナ初のBL作品」
この言葉を見た時、え?って思った。
ノイタミナ枠では、ほんの少し前に「BANANAFISH」が放送されていた(リメイク版のほう)。それに記憶に新しい「さらざんまい」だって。私はこの2つの作品のことを、「部分的なBL」だと思っていた。(詳しい説明は省きます)
でも違ったらしい。ノイタミナ的な見解としては「ギヴン」が初めてらしい。
ノイタミナ的な解釈を考えると、「BL」とは「男性が男性に向けて明確な好意を向ける」、つまり「セックス、もしくはそれに近しい行為をする」なのかな、と。ああ、あと「掲載誌がそもそもBL作品専門」というのも大きい。この解釈は一般大衆にも当てはまるのかな、たぶん。
でも、よく考えて欲しい。
男が男を好きになる、っていうのは必ずしもセックス込みなのか、と。
結果としてそれが発生するのも問題ないし、それが目的なのもなんらおかしいことではない。
でもさ、すべての「男性同士の恋愛」という感情に、セックスは含まれるのだろうか。いや、人同士の感情に。
たとえば先ほど例に挙げたマーガレット。あれは女子中高生をターゲットにしているだけあって、絶対に性行為はしない。男女の裸なんてもってのほか、たぶんキスが描写の限界。
あれはれっきとした少女漫画。もう少し上の年代をターゲットにする作品になると、そういうことしてもOKになったりする。(おそらく掲載誌によって厳格な基準はあると思う)
そう、性行為なしでも「恋愛」は描ける。
私が言いたいのは、「BL」だって性行為なしでも成立するということ。
「ギヴン」だって、まだしていない。春樹と梶さんはたぶんしたっぽい描写があったけど、主役二人はしていない。(今後するかもしれないけど、それは結果や目的として、だと思う。きっとそういう描写になると思う。これは希望も含めての話だが。)
「ギブン」はまだ明確な性行為が描かれていない。でも「BL」と呼ばれるのは、なぜだろう。
「性行為」だけが愛ですか?
男同士のセックスを、エンタメとして消費するのだけが「BL」ですか?
私は「BL」にすごい思い入れがあるわけでもないし、世間に物申したい気持ちもさらさらない。でも、この問題に対して思考を止めたくない。
そもそも論だけど、対象者を性別や年齢で分けるのって結構不毛だと思う。もちろんボーダーラインが必要なケースもある。が、たとえば少年向けと言われるジャンプだって、大人も女の子も読む。ジャンプ作品の中には、明確に女の子をターゲットにした作品だってある。漫画に限らずターゲティングした方が正しく売れるのはわかっている。でもさ、そろそろそういうの抜きにした作品が当たり前のように売れて欲しい。たとえば「BL」と言われている作品とかから。ちなみに、とても好きな作品で全年齢全人間対象のものはあるけど、たぶん「BL」として処理されている。これは、売る側の意識の問題なのかもしれない。これ以上は考えても仕方がない事なので、一旦筆を止めます。
結論。作品を分類わけするのは、大事だけど時として不毛だなことだと大人になって思いました。売る側と買う側、あと評価を下す側の意識が、もっと優しいものになりますように。
いつかこの問いに対して答えを出したい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最後に。作品についてあまり触れていなかったので少しだけ感想を。
ギヴン、めちゃくちゃに青春で、めちゃくちゃに感情をかき乱してくる。物語の中心人物ではないのだけど、村田雨月という人物がどうしようもなく愛おしい。若く才能のあるヴァイオリニストで、わりと全部持っている天才で、なのに、大好きな人とは一緒になれない。音楽か、恋愛か。彼は才能を身に纏った化け物ではなく、ただのちっぽけな人間だから悩むのだと思う。ままならない恋になす術がなくなっている、そのどん詰まり具合が、お見事。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?