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続・トリプルファイヤーの話

私が好き好んでライブに行っているバンド・トリプルファイヤーの約6年ぶりのアルバム『EXTRA』がようやく完成したとのことで、5月23日に代官山 晴れたら空に豆まいて にて行われた「トリプルファイヤー新譜完成試聴会」に参加しました。
前作『FIRE』の発売が2017年11月、私がライブに行き出したのはその半年前からで、2018年11月には「ギフテッド」(当時は「神に愛された男」)がアルティメットパーティ6で初披露、翌2019年からは「ユニバーサルカルマ」や「諦めない人」が新曲①②という仮タイトルで披露されていたこともあって、私がライブに行っていた期間のほとんどはライブ定番曲の『EXTRA』の音源化を心待ちにしている状態だったと言ってもいいかもしれない。

自分の感覚の言語化はできるけど、詳しくもないし掘り下げもしないので感心されるようなことは言えないんですが、ライブに行ってる回数だけは多いので、バンドがどう成熟していってるかという観点からは感想を言ったり褒めることができる。
これは2020年に行われたトリプルファイヤー初の配信ライブが素晴らしかったという感想。バンドのここが良いとか曲のこういうところが好き、という話はこの時に散々した。

ライブで曲が熟成されていくのを体感しながら楽しんでいたはずが、コロナ禍でそれが中断されてしまった上に、世の中的には解禁されながらも私は個人的に2022年まで現場を節制していた。(どう考えても行かないわけにはいかない“月光密造の夜”があったことで解禁した)

2020年〜現在まで私が観たトリプルファイヤーライブ

『EXTRA』の制作は2020年末から録音が始まった、と試聴会で言っていた。ミキシングを待つ間、現場では4人編成でできる曲を作ろうという試みがなされ、それが現在のライブで披露されている新曲①とかの番号のみの新曲となっている。2021年はほぼパーカッション入りのライブだったが、2022年は逆にパーカッション入りは月光密造の夜くらい(それもスカートがいたからかもしれない)、2023年は新曲発表会やワンマンも4人編成で、パーカッションが入ったのは“第30回南太平洋シマダ選手権大会”とZAZEN BOYSとの2マンの2回しかなかったが、全部じゃないけど定期的に4人編成のライブにも行き、最初からパーカッション入りで披露されていた『EXTRA』の楽曲の余白を4人でどう埋めているかという、他にやってる人がいなさそうな視点で楽しんでいた。

新譜完成試聴会で聴いた『EXTRA』は意外な程今っぽくて、そりゃそうか、令和になったんだもんな…と思った。パーカッションが入ると途端にアーバンな感じになるけども『FIRE』には、(いわゆるエモみという意味で)まだ全然いなたい感じがあったと思う。ライブで披露されていた『EXTRA』も、楽曲が研ぎ澄まされればされるほど、“初見殺し”感は強くなっていったように思える。盛り上がりかけては静まる対バンは結構あったけど、地蔵どころか五百羅漢寺かな?ってほど盛り上がらない対バンを試聴会の4日前にも体験したばかりで(今考えればアウェイすぎただけなんだけれども)、バンドの知名度の割にこの反応のなさは何なの?6年ぶりの新譜出るけどこんなんで大丈夫なの??と正直不安に思っていた。
どのバンドでもそうだけど、継続してライブに足を運んでもらうような新規ファンを獲得するためには準備が必要だ。いい肉食べるだけでなく、スカウト担当者の目に留まらないと野球選手にはなれないのと同じように、良い曲作って歌うこと以外にもやった方がいいことがたくさんあって、まさにその最たる機会が新譜発売とそのプロモーションなのに出る出る言って何年も全然アルバム出ないので、「アルバムは?」と事ある毎にメンバーやマネージャーさんに詰め寄っていた。
試聴会のトークパートでの、新譜発売までの経緯や、報告できずに心苦しかったという話を聞いて、「問い詰めたファンの一人で申し訳ない…」と思いつつ、スカート澤部さんも「近所迷惑なほど、どこ行っても会う人にトリプルファイヤーの新譜の話をしていた」(シマダボーイ談)らしく、問い詰めファンとして心が軽くなりました。

『EXTRA』の個人的な聴きどころをネタバレにならずに期待感を高める程度の紹介すると、

「お酒を飲むと楽しいね」
ボーカルにオートチューンぽいエフェクトがかかっていて、今までエコーみたいなのはあったけど、こんなに声自体にかかってるのは初めてで1曲目ということもあって新鮮だった。ツボイさんがHIPHOPの人だから出てきたミックスでは…と結構衝撃的で、単純な私は初手で「ツボイさんに頼んだ甲斐があったな…」と思いました。

「サクセス」
シマダボーイがサビで大活躍するのでこの曲を聴くためにライブに通っていたと言っても過言ではない位好きな曲。『FIRE』の音源発売以降のライブでよりパーカッションを遠慮なくぶっ叩くようになって来たと思っていて、そのライブで出ていた感じが音源になるとどうなるんだろ…と思っていましたが、『EXTRA』は「サクセス」だけでなく全曲通してパーカッションが活かされていてとても良いです。推しの音が大事にされてるの嬉しい。突然のウィスパーボイスのサクセスや、曲後半の色々な譜割りのサクセスが面白かった。

「ここではないどこか」
「歌詞がひどすぎてミスしちゃうから」という理由で歌詞変更になったのであんまり人に言えないけど、「思ってないと言わない」時代が好きだったせいもあり、ライブでは曲全体がマイルドになってしまった印象を持っていた。それなのに、冒頭に謎の無茶格好良い電子音が入っていて(機材トラブルで偶然できた音)、AIのような(ボーイ談)プラスチック米さんとのツインボーカルが不穏に拍車をかけていて、澤部さんが「びっくりしたけど、今そのもの」と言っていたのが印象的でした。

音の密度も凄いし、吉田さんのボーカルが全体的にトーン低めで年相応の落ち着きを身につけていて逆に歌詞の怖さが増していた。要所要所で締めてくるんだけど、ミキシングで遊んでくる感じが凄い。また、それが良い感じに馴染んでいて、思いもよらないことやってるんだけど、“トリプルファイヤーならやっても不思議じゃない”という枠を外れないギリギリのとこ攻めててそこも凄かった。ライブで散々聴いたよ!という人ほど面白いと思う。待ち時間に比例しただけの驚きがあるので…「ツボイさんは、ミックスでバンドの可能性を広げてくれる」と多分鳥居さんが言っていたが、本当にその通りだと思う。


質疑応答タイムがあるというので、事前にいくつか質問を考えていましたが、その内の一つに「皆さんの考えるリード曲はどれですか?」というものがありました。我ながら良い質問だったと思う。

吉田さん→「ギフテッド」と思ってたけど「相席屋に行きたい」も泣ける…でも歌詞的にラジオでかからないから…やっぱり「ギフテッド」かな。
鳥居さん・大垣さん→「お酒を飲むと楽しいね」
山本さんは言ってない気がする。
澤部さん→先行シングル2曲とするなら①「相席屋に行きたい」②「ここではないどこか」順番は逆でもいい。「ギフテッド」と「お酒を飲むと楽しいね」は勝手に盛り上がるので…
シマダボーイ→「相席屋に行きたい」フルートの音がなぜか渋谷の街の汚い感じを思わせる。渋谷ノワール的な…(リード曲言ってないと思ったんだけど、相席屋らしい)
吉田さんがあんななのに、ラジオでかかるかどうかを意識していたのが意外だった。確かにJ-WAVEのINNOVATION WORLDでかかるなら「ギフテッド」かもしれない。

『FIRE』は時代も国もわからない感じで好きだったけど、『EXTRA』は有り様がはっきりしていて最高!と澤部さんが言っていたのが印象的だった。
コンセプトアルバムではないんだけど、一貫したものがあって、多分私はそこが好きなんだと思う。ライブに行く音楽と普段聴く音楽は全然別のタイプだったんですが、『EXTRA』はヘビロテする予感がしている。
8月19日に渋谷CLUB QUATTROでの開催がアナウンスされたリリースパーティに先駆けて、6月29日に渋谷WWWXでのmei eharaとの2マン(販売中)、7月17日に新宿LOFTでのスカートとの2マン(一般発売6/8〜)、その4ステ全部にシマダボーイ!嬉しい!シマダボーイは何ステあっても困らないので!

個人的には、パーカッションありきで作っているスカートの楽曲とパーカッションありのライブで作り上げていったトリプルファイヤーの楽曲を聴き比べるのも感慨深いのではないかと思っている。澤部さんは、試聴会のトークパートでは全然話し足りない感じだったので、きっと新宿LOFTは凄いことになるはず。



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