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トリプルファイヤーの話

私が好き好んでライブに行っているバンド・トリプルファイヤーの7月14日に行われた配信ライブが素晴らしかった。2/10のアルティメットパーティ7-3以降5ヶ月振りのライブという上がりまくった期待値を軽く超えて来るような良いライブだった。私は音楽に特別詳しくはないので、どこがどうみたいな事は言えないのだが、ただでさえ普段余りやらない上に、割と盛り上がった所に水をぶっかけるように持って来る曲だと思っていた「カモン」を最初に持って来て、良い意味で裏切られた。そして当然全く盛り上がってないので普段以上に虚無丸出しの吉田くんの歌唱がカメラに語りかけることで何かメッセージがあるように感じられてしまったのが新鮮だったし、変化する歌詞が淀みなく出てくる様子は生粋のフリースタイラーみたいだと思った。最初は存在感強めだなと思ったキーボードが即興性があって、しかも理解して必要な所に入れてるんだと気付いてからはこの人面白いなと思って聴いていた。ベースとドラムは何時も通り安定してたが、この日はキレが増していたように感じられた。後はパーカッションの音がクリアだったのも良かったし、ドラムと合わせるとことかは本当に格好良かった。サクセスのサビっぽい所でスティックくわえるマルチタスクなシマダボーイをちゃんと近くで抜いてたのもカメラワークわかってるな……という感じだった。「諦めない人」(元「KEEP ON」)の時のギターは心なしか抑え目だったような気がして、以前鳥居さんにこの曲のギターが超格好良いと言う感想を伝えた時に「下品じゃなかったですか?」と言われた事があって、フォーンとしたパーカッションとの緩急の対比が格好良いと思うので配信とかフェスとか対バンの時は鳥居さん言う所の多少下品な感じでも良いんじゃないかと思ったが、その後の「バー」とか「お酒を飲むと楽しいね」とか「相席屋」はそれぞれの調和が取れていて凄い丁度良い感じだった。

550人限定の制限があったので、サーバーが貧弱なのかと心配してしまったが、結果大きなタイムラグもなく、回線も快適だった。リアルタイムで視聴していたが全編通して常に閲覧者は150人前後だったので「ワンマンが完売する人達の対バン配信なのに550枚なんてすぐに売り切れるし、映像もカクカクするんじゃないか」と考えていたちょっと前の自分にそれは杞憂だよと教えてあげたい。配信なんて……と思ってはいたけれど、ここ1年位に披露されたもはや次のフェーズに来てるのでは?と思える新曲や、毎回アップデートされていたライブを、何度も観れる配信って最高……!と言わざるを得ない。翌日会社を休んでアーカイブに備えただけのことはありました。

私がトリプルファイヤーのライブを初めて観たのは2017年のやついフェスで、別のアーティスト目当てで行ったので他に特に予定もなく、友人が観るというので着いて行ったのがきっかけだった。会場のO-nestのフロアは人も疎らで、最前を避けるように男性が数人という状態で、「ささ、遠慮しないで最前どうぞ」とニコニコ促され、曲も大して知らないままライブが始まったのだった。「今まで聴かなかったタイプの音楽だけど歌詞の破壊力……」それが第一印象だった。その後も何回かライブに通う内に、次第に曲にも気を向ける余裕が出来、当時マスロックっぽさを感じて相当計算して曲を作っているに違いないと思い俄然興味が出てきたり、歌詞や曲の内容がライブの度にアップデートされて行くのが面白くて、アルティメットパーティ3以降の都内のライブはほぼ網羅しているんじゃないかと思う。それだけ通っていても、「ある意味哲学的とも思えるリリックとそれをストイックに支えるリズム隊。そして隠そうとしても隠しきれない独特なギターが……あとパーカッションが入る事で途端にアグレッシブに……」トリプルファイヤーの音楽を人に説明するとしたらこの位しか言えないだろう。難しい。

2017年9/8のアルティメットパーティ3と11/16のアルティメットパーティ4の間にどんな天啓があったのか覚えていないが、いつしか私はシマダボーイの一挙一動を観察し、パーカッションの構成をチェックするようになっていた。ほとんどのライブに足を運んでいたのは、単純にどのライブが5人編成になるかわからないので全部チケットを購入していたからという単純明快な理由からだった。そして徐々に4人編成の方が少なくなって行った。私はインスタグラムをライブの覚え書きのように使っているのだが、通常の編成に加えたまにジャンベありのアレンジにしてまた戻したり、ボンゴとコンガのコンビネーションのためなのかある日を境に楽器の配置を横から前後に変えたり、新しいコンガに変えたての時は音がペキペキしていてそういうものなのかと思ったり、新しい自作楽器が登場したり、それをバージョンアップさせたりというようなことが書かれていて、この文章を書くために確認していたら、3年弱続いた監視が途絶えた事実に改めて悲しくなってしまった。

ライブ終わりにたまに話し掛けると吉田くんはいつも「こんなもんじゃない……これで終わりじゃないんで……」と何もない空間を見つめながら呟いていた。前述の「KEEP ON」→「諦めない人」のように、「鋭いアドバイス」→「恵方巻」→「シルバースタッフ」、「TKS1985」→「バー」「思ってないと言わない」→「ここではないどこか」、「神に愛された男」→「ギフテッド」と楽曲が生まれては研ぎ澄まされて行くのをリアルタイムで体感していた。(2回しか披露しないで消えたか原型がなくなった曲もあった)どう見てもユーザーフレンドリーでないバンドなのに、曲のアレンジや歌詞や楽曲そもそものテーマまでも試行してリリースに向かう様子を共有できるってそうそう出来ない体験ではないだろうか。もちろん配信ではなくライブで観れるのが一番ではあるけれど、これで終わりではない。

次は8/15のグッドマン配信。グッドマンが終わっちゃうのは悲しいけど、ライブは楽しみです。

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