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【映画】「五香宮の猫」野良猫をとりまく環境について考える

想田和弘監督のドキュメンタリー映画「五香宮の猫」を観たので感想を綴ります。

瀬戸内の風光明媚な港町・牛窓。
古くから親しまれてきた鎮守の社・五香宮(ごこうぐう)には参拝者だけでなく、さまざまな人々が訪れる。近年は多くの野良猫たちが住み着いたことから“猫神社”とも呼ばれている。
2021年、映画作家の想田和弘とプロデューサーの柏木規与子は、27年間暮らしたニューヨークを離れ、『牡蠣工場』(15)や『港町』(18)を撮ったこの牛窓に移住した。新入りの住民である夫婦の生活は、瀬戸内の海のように穏やかに凪ぎ、時に大小の波が立つ。猫好きのふたりは、地域が抱える猫の糞尿被害やTNR活動、さらには超高齢化といった現実に住民として関わっていくことになる。

伝統的なコミュニティとその中心にある五香宮にカメラを向ける想田は「映画監督になった理由」を問われ、「これ映画になるの?」と突っ込まれる。そんなやりとりの愛おしさ、想田流“参与観察”ならではのハプニング。小さな対立と不意に展開する幸福な偶然。四季折々の美しい自然のなか、生きとし生けるものが織りなす限りなく豊かな光景。それは愉快で厳しく、シンプルで複雑な世界の見取り図でもある。
『精神0』から4年、記念すべき観察映画第10弾となる本作は、ベルリン国際映画祭をはじめとして、世界各国の映画祭でSOLD OUTが続出し、熱狂の拍手で迎えられた。これは、作家自身の物語であり、他者との共存を想うあなたの物語。

「五香宮の猫」公式サイト 解説より

穏やかな海を見下ろすように存在する五香宮。そしてそこに暮らす野良猫たちの生活と猫たちに関わる住民の人々の日々の生活を映した映画です。
春、暖かな日差しの下でのんびりと過ごす猫たちを観察しているとほっこりします。民家の通りを歩く姿も、釣り場でお魚のおこぼれをじっと待つ姿も、ああここでは猫と人が共存しているんだなと感じます。
しかし、それは何も知らない外部の人間が表面だけを見た印象にすぎません。
実際はTNR活動をして過酷な中を生きる野良猫をこれ以上増やさないようにしている方々の苦労、猫の糞尿に悩まされている住民の本音、猫が飼えないからと別の町から猫に会いに五香宮に来る人が悪気もなく餌を与えてしまう現実など、知りえなかった様々な問題が映像を通して伝えられますが、この映画はどの立場にも寄せることなく事実だけを淡々と映していくので、観る私たちはフラットな気持ちで猫たちと向き合うことができます

私はどちらかというと犬好きな方なのですが、数年前に我が家で起きた事件から猫さんの事が気になって意識していろいろな活動を見るようになってます。
私が住んでいるところは山間の小さなコミュニティですが、3ブロックほど先の住人さんが沢山の猫を飼育放棄している状態でその猫たちが地域で野良猫化していました。
ある大雨が降った夜に子猫の鳴き声が近くで聞こえ気になっていたのですが、翌日になっても聞こえたので探してみると家の前の側溝に小さな子がびしょ濡れになって鳴いていたのでした。
家に連れ帰りタオルで拭いてきれいにしてあげてミルクをあげると、衰弱していた子猫は一生懸命ミルクを飲もうとしていました。
その生命力に本当に心打たれました。
夫は愛犬をいつも見てもらっている動物病院に子猫を連れていき先生に診てもらいました。10日ほどしてすごく元気になり餌もモリモリ食べるようになったので、ご近所さんの家に戻してあげたのですが、数日たって同じ子ががりがりになって外に姿を見せていました。もういたたまれなくてすぐに連れて帰りました。

我が家ではトラちゃんと呼んでいました

数日間は保護したトラちゃんを和室の奥で生活させていましたが、愛犬がトラちゃんに興奮してしまって我が家では共存できそうになかったので、車で40分ほどの愛猫家の親戚にお願いするとすぐに暖かく迎え入れてくれました。
トラちゃんは今も元気で幸せに暮らしています。

凛々しい子です
右→左。数か月であっという間に大きくなりましたね!

この地域で野良猫化した猫たちをTNRしている方々がいて、その方々の活動のお陰であれから1、2年たつとあっという間に猫がいなくなりました。
映画でもありましたが、野良猫は生存率がもともと低くて生きても3年ぐらいなのだそうです。生まれた子猫もほとんど死んでしまうとのこと。飼育放棄されたここの猫さん達も自然と淘汰されて数が減ったのだろうと想像します。

TNR活動を自然摂理に反する行為だという人もいますが、もともと野良猫は人間が捨てた猫たち。手術はかわいそうだけれど、将来的に可愛そうな運命の猫たちを増やさないために大切な活動だと私は思います。それに活動をしている方々が一番つらい思いをしていると感じています。

人間の都合で飼われたり捨てられたり、虐待された子もいたりで保護されて再び人間に心を開くまで時間がかかる子もいますよね。
坂上忍さんも保護活動されていて私はよく動画も見るのですが、今は微笑ましく暮らす保護猫さんたちも過酷な過去があったと思うと本当に心が痛いです。

映画の中でも五香宮の猫たちが捕獲されてさくら猫になって戻ってくるまでの映像がでてきます。TNR活動をされている方々は地域の人々に理解してもらうための努力もされているわけでその行動に頭が下がります。
他の場所から猫を撮影に来た方が言っていた言葉が気にかかりました。
ここが猫神社だと有名になればそれを目当てに来る人がいる。そうしたらここに猫を捨てに来る人もいる。。。。。
実際五香宮に新入りの子猫が3匹も最後に出てきたのがそれを物語っていました。

映画は住人の方々が会合を開いているところも映していました。
それぞれの立場でそれぞれの言い分は尤もですし、上手く折り合いをつけていくことの難しさが映像から伝わります。
高齢化し過疎化していく町の観光資源として猫を活用したらどうか、という案も理解できますがそれを実現するのはなかなか大変です。

動物を飼育するのは、自分の心に余裕がないと難しいと感じます。
私の場合は、愛犬によって心救われることが多いので自分がしんどくても愛犬の為にせいいっぱいのことをしてあげたいと思っています。
現代は戦争や環境・社会問題など人々が考えていかなければいけない課題が山積みで、それらは動物よりも優先されてしまいがちなのかもしれません。しかし「五香宮の猫」を通して猫を取り巻く現実を知ることによってその意識が少し変われればいいなと思います。

旅行で行った先に出会った野良猫さん、お腹を空かせているようで可哀そうだけれど安易にえさをやってはいけないんだなとか、そういう風に考えられればいいな。

また犬猫を飼いたいなと思ったら、地域の保護センターで保護犬、保護猫さんをお迎えするという選択肢も考えられたらいいな。

それからどんな動物であれ飼うと決めたら最後までそれを全うするようにみんなが考えられるといいな。最近高齢の方が孤独死した傍で衰弱した猫が見つかったニュースを見ましたが、そうなるまえにもし何かあった時のペットのことも考えられたらいいな。

ふとそんなことを思いました。

私にとっては「五香宮の猫」が猫を取り巻く環境について考えさせられた映画となりましたが、想田監督はこの映画を「観察映画」と言っていますから私のようにそう深刻に考えずに、猫にほっこりさせられたり、美しい田舎の原風景を眺めたり、そんなふわっとした感情でみるのもありだと思いました。

私的に「五香宮の猫」評価は★★★★☆でした!


追記
動物のドキュメンタリーと言えば「ストレイ 犬が見た世界」というのがありまして、犬目線のローアングルで撮られた作品があります。いったいどうやって撮ったのかなという映像もあり、犬になりきれます。
難民の子供たちの過酷な現実なども交えながらイスタンブールに暮らす野良犬を映した映画ですので、是非一度見てみて欲しいです。

U-NEXTアマゾンプライムで観られます。


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