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シミセンの勉強法入門

勤務先で紹介した勉強法です。手を加えたいところもありますが当時のまま掲載します。

この数年間で書きためたものをまとめました。同じ記述が何度も出てくるかもしれません。それは、それが大切なことだからです。何度も出合っていると自然に頭に入り、そのうち、体が覚えます。しっくりいくものが自分の中に残っていきます。小中学生の間により良い自分なりの勉強法を身につけておくと強いです。何らかの形で皆さんのお役に立てれば幸いです。

ここに書き上げた勉強法は、「勉強法が変わる本 心理学からのアドバイス」市川伸一著(岩波ジュニア新書)、「脳を活かす勉強法」茂木健一郎著(PHP)、「勉強のチカラ!」、「読むチカラ」(宝島社)、「子どもの集中力を育てる」(文藝春秋)、「学ぶ力を伸ばす本」(大和書房)、「やる気も成績も必ず上がる家庭勉強法」(筑摩書房)以上、齋藤孝著(いったい何冊本を書くのだろう? 私もいったい何冊付き合うのだろう?)、「受験脳の作り方」池谷裕二著(新潮文庫)などを参考に、私なりの勉強方法を紹介したものです。不明瞭な点があれば遠慮なく質問してください。本を読んでみたいという方がいらっしゃったら遠慮なくおっしゃってください。(市川先生の本だけは図書館で借りました。)


Ⅰ 記憶力UP法      

①「覚える」とは「思い出す」ことである
   漢字や英単語を覚えるために10回書きをしたりする人がいますね。でもそのときに単なる作業になってしまっている人はいませんか。つまり、正しい漢字を見ながらそれをただ単に写していくだけ。だから、誰かとしゃべりながらとか、テレビを見ながらとかでもできてしまうのです。けれども、それでは決して覚えることはできません。一度しっかりと見たもの、聞いたもの、書いたものなどは頭のどこかに記憶として残っています。実は大切なのはそれを思い出すことなのです。ちょっと思い出そうとして出てこなければすぐあきらめて答えを見てしまう人がいるのではないですか。そこをがまんして必死に思い出してみてください。「ここまで出ているんだけど、あれ何だったっけ」という感覚が分かりますか。たとえば「昨日の夕飯はなんだったかな?」というようなことでもいいのです。何気なく通り過ぎていることはなかなか思い出せないものです。とにかく「思い出す」ということに力を入れてみてください。それが記憶力アップにつながります。

②テストを繰り返す
 必死に思い出そうとするのはいつですか。そう、テストのときですね。テストをくり返すのが、覚えるための最良の方法なのです。テストと言っても、小さなもの(小テスト)から大きなもの(入学試験)までいろいろあります。自分で作ったミニテストもいいでしょう。一度解いた問題集の答えを隠して何度も解いてみるというのも十分に効果があるのですが、問題を読んでも答えがぱっと分からなかったらすぐに答えを見てしまう人がいます。それでは覚えることはできません。ただ逆に、1つ1つに時間をかけすぎるのも問題です。数分(ものによります)思い出そうとして出て来なければ次に進みましょう。そういう意味でも、やはり時間制限のあるテストがいいのです。テストをやって、間違ったところは答えを見直して、もう一度テストをやって、合格点が取れるまで繰り返しテストを受ける。数週間たって忘れたころにまたテストをして思い出す。(当塾のカリキュラムはその通りになっているのです。)テストをうまく活用して覚える力を身につけていきましょう。

③一夜づけより毎日少しずつ覚える
 定期テスト前、前日に徹夜をして覚えて、けっこういい点を取っていると自慢している人はいませんか。そういう覚え方では、その1回のテストではわりと良い結果が出せても、しっかりと記憶として残ってくれません。だから、範囲の広い大きなテストでは点が伸びないことになるのです。定期テストで同じくらいの点数をとっている人でも、何日にも分けて少しずつ覚えた人は、覚えたことが長期の記憶としてしっかり頭に残っています。それが真の実力になっていくのです。脳は寝ている間に知識の整理をしています。だから、何日にも分けて同じことをくり返し、その間に何度も寝ている方が、良い状態で記憶が残っていくのです。

④寝るのは記憶力アップの必要条件
 先ほども言いましたが、脳は寝ている間に知識の整理をしてくれます。何度も出合うことがらは大切なことだと信じて長期の記憶へと保存されていきます。いったん寝るという過程を経ないと覚えたことが長期の記憶にはなっていかないのです。だから、きちんと睡眠をとるのは記憶力をアップする上で絶対欠かせないのです。もちろん寝ているだけではだめですよ。繰り返し覚える、何度もテストを受ける、間違い直しをする、何度も何度も同じことに触れる。そのうえで、睡眠もしっかりとる。これで記憶はしっかりかたまっていきます。

⑤優先順位を決めて覚える
  すべての事柄を同じ重みで覚えようとしていませんか? どれが特に大事かを考えて、3段階くらいに分けて覚えるようにしましょう。最重要項目についてはまず先に覚えてしまうようにしましょう。何が重要であるかを知るためには、まず授業をしっかり聞き、ノートや教科書へしっかり書き込んでおく必要があります。さらに、しっかり内容が理解されていれば、どこが大切かは自ずと分かるはずです。また、教科書や参考書の太字部分、問題を解いていて何度も出てくる言葉などは確実に重要な部分です。どうしてもどこが大事か分からないときは、早めに先生に聞いておくようにしましょう。

⑥関連づけながら覚える
  俗に言うゴロ合わせなどもこの中に入れていいと思います。「鳴くよウグイス平安京」(794年)とか「かりあげしんかんせんはやい」(火山岩:流紋岩・安山岩・玄武岩/深成岩:花こう岩・せん緑岩・はんれい岩)などというものです。勉強とは関係ないですが、電話番号などを覚えるとき、短時間であればメモを取らずに覚えて(短期記憶)電話をかけることができます。しかし、少しおいてもう一度かけようと思っても、すぐに忘れているはずです。また、最近の携帯電話の番号など、ケタ数が増えてくると覚えるのが大変です。人間はだいたい7ケタくらいしか一度には覚えられないようです。ところが、円周率を何万ケタだか覚えている人がいます。それは、何らかのストーリーとしてゴロあわせで覚えているのですね。さて、それとは別に、歴史を覚えるときなど、出来事を単に一つ一つ別々にして覚えるのではなく、どういうつながりがあるかを意識して覚えると良いでしょう。塩酸・硫酸・酢酸・炭酸・ホウ酸など酸がつくのは酸性というようにグループ分けしていくのもいいでしょう。英単語では単語一つ切り取って覚えるのでなく、例文まるごと覚えてしまうと、その言葉の持っている雰囲気や使い方まで分かってしまうでしょう。

⑦分解して覚える
  難しい漢字などは部分部分に分解して覚えるといいです。私は解答の「解」という漢字を、牛の角(つの)を刀で切り落とす、というように覚えました。だから決して牛を午(うま)と書くことはなくなりました。これは小学生のとき塾の国語の先生に教えてもらいました。疑問の「疑」という漢字、これが私は覚えられませんでした。そこで、まったく意味は無いのですが、私はこの漢字を「日比野(ヒ)待(マ)て(定)や(矢)」と言って覚えていました。6年生のころのことです。(日比野君どうしているかなあ? 塾の算数特訓の授業でいつもトップを競い合っていた???友人です。)英単語も言葉の成り立ちが分かれば分解して覚えることができます。また、分解することで、似た意味の言葉をグループ分けすることもできます。

⑧すでに持っている知識(既有知識)を利用して覚える
  私は25年以上理科を指導しているのに、海風と陸風のどちらが昼に吹く風かいまだに覚えられません。それは覚えなくてもその場ですぐ考えて決めることができるからです。昼間、太陽によって照らされているとき、海と陸では陸の方が暖まりやすい(既有知識)。陸の上の空気が暖められて膨張し、上昇する(既有知識)。海の方から陸に向かって風が吹く→海風。夜はこの逆ですが、陸の土の方が海の水より暖まりやすくさめやすいという事実と、暖まった空気は膨張して上昇するという事実を知っていればその場で判断ができます。これで丸暗記では対応できない問題を解くこともできます。別の例。円すいの側面席の求め方。今では私も母線×半径×円周率という公式は覚えてしまいました。これは、ひんぱんに登場するため、いちいち考えていては時間が足りなくなるからなのですが、自分が生徒のころには公式の丸暗記はなるべくしないようにしていました。円すいの側面は扇形になりますが、その弧の長さと底面の円周の長さが等しいということさえ理解していれば、先ほどの公式はすぐ導くことができます。理数系の教科にはこういうことが多いと思います。すでに知っている知識をうまく活用できないか考えてみるようにしましょう。そうすることで覚えなければいけないことが減っていくはずです。もっとも、何度も登場する公式などは自然に覚えてしまいますね。(2次方程式の解の公式など)

⑨意味を理解して覚える
  単なる丸暗記ではなく、ちゃんとその意味・本質を理解した上で覚えていると、そう簡単には忘れなくなります。脳の中で深い処理をすることで長期の記憶に持っていくことができます。理解するというのがどういうことかについては「理解力UP法」としてまた別に紹介しますが、「ふにおちる」という言葉が一番近いだろうと思います。授業を聞いていて、「なるほど、そういうことか」と思ったようなことはありませんか? そういうふうに全身で?理解したことはなかなか忘れません。

➉繰り返し繰り返し覚える
  さあ、いろいろな方法で一通り覚えたことも、放っておくとまた忘れてしまいます。忘れたころにもう一度覚えなおしましょう。何度も使う知識は脳の引き出しの前の方に集まってきて、引っ張り出しやすくなります。1年間着ることのなかった服はタンスの奥の方に入り込んでしまいますよね。何度も繰り返すことで、知識は確かなものになっていきます。もっとも、自分が意識して繰り返さなくても、学校や塾でたくさんテストを受けたり、たくさんの問題にあたっているうちに、出題されやすい事柄には何度も出くわし、自然に覚えてしまいます。だからこそ、理科の先生は理科の、社会の先生は社会の知識がたくさんあるのですね。)

Ⅱ 理解力UP法       

①「分かること」と「分からないこと」をはっきり分ける
  意外とこれができていない人が多いのです。授業で問題を解いて答え合わせをするとき、間違っているのに直して○にする人。宿題で解答をそのまま写してくる人(できない問題があったら解答解説を見て自分なりに考えてくるのは決して悪いことではありませんが)。テストのときに横の人の答えを写してしまう人。誰のための勉強でしょう? 正解になって、良い点数を取って誰かにほめてもらうのはうれしいことですが、ほめてもらえばそれで満足ですか? ちゃんと自分の力がついていないと意味がないですね。間違っているところを消して鉛筆で書き直したり、空白だったところを、解説を聞いて鉛筆で書き込んだり、それでは一体自分が現時点で何が分かっていて、何が分かっていないかの区別ができません。それでは後に復習するときにどこから手をつけていいかが分かりません。答え合わせをするときには、もし間違っていても決して自分の書いた答えを消したりせずに、必ず赤ペンなどで直し、理解したうえで答えを書き写すようにしましょう。解説を見て理解したとか、誰かに聞いてできたものなら青マルにするなど自分なりに工夫をしましょう。それから、記号の問題などではカンで答えを書くのはやめましょう。カンでやって正解してしまうと「できたつもり」になってしまいます。本番の入試のときにはもちろんカンでも何でも必ず答えを書いてください。白紙は確実に×ですから。でも、ふだんはカンで解くのはやめましょう(テストのときはカンで答えた問題は自分なりにチェックをしておいて後で必ず見直してください)。とにかく、何が大切かというと、今の時点で、自分はどこまで理解していて、何を覚えていて、何がまだできないのか、その区別をすることなのです。その上で、できなかったところのやり直しをしていきます。やり直して正解した場合は緑でマルをするなどしてみましょう。ここでも、1回でできたのか、2回目にできたのかの区別をするのです。3色ペンを準備して、区別をしていくと良いでしょう。

②「まなぶ」は「まねる」から
  学ぶというのはまねるところから始まります。たとえば、算数や数学では先生がまず例題で解き方の説明をします。その後、数字や文字が異なる類題を進めることになります。同じパターンの問題なので、自分でうまく数字や文字を変えて当てはめていけば解けるようになります。それを繰り返していくうちに、自然と身につき、解き方をマスター(理解)したことになって行きます。国語などでも先生の解き方をまねる内に、そのコツを学びとることになります。これは、スポーツとかいろいろと技術に関わるところでも同じことが言えるでしょう。上手な人のやっているのを良く見てまねる。その技を盗む。いまでは減っているかもしれませんが、弟子入りをして、生活をともにして、師匠のやっているのを盗んでいくというのがもっとも典型的な「まねる」「盗む」ところからの「理解」(ふに落ちる、身につける)ということになるのでしょう。落語家とか政治家でもそうかもしれません。

③型から入る
  技を盗むといっても最初から何十年とやっている人と同じようにはできません。たとえば、画家になろうと思って、ピカソのまねをしてみてもあまり意味はありません。まずは、しっかりと基礎的なデッサンの練習から入るべきでしょう。スポーツでも芸術でも落語でも、もちろん勉強でも必ず最初に基礎・基本というものがあります。まずはそれを身につける必要があります。秩序(ノモス)だった基礎的な型から入り、それを自分の体の中で熟成するうちにいったん混沌(カオス)とした状態を経て、その後、自分なりの世界(コスモス)を作り上げていくのが芸術家などの本来あるべき姿だと言われます。最初から型破りなことをしていたのでは、土台がもろくてすぐ崩れてしまうのでしょう。昔から勉強の基本は「読み・書き・そろばん」と言います。そろばんが百マス計算に変わっても良いわけですが、やはり基礎・基本を固めるのが最優先です。それがなければ理解は進みません。一方で最先端の話などに興味を持ってから、必要に応じて基本事項を身につけるという方法もあります。何のためにこの訓練をしているのか、いま自分がどのあたりにいるのか(平方根は2次方程式や三平方の定理で必要になるなど、その教科全体の中でどのあたりに位置しているのか)など分からずに苦しい練習を繰り返すのは難しいでしょう。もっと言うと、何の疑問も持たずに言われるがまま基礎訓練をしているというのも困ったものです。この点は、年齢、学年にもよるので、小中学生の間は有無を言わせず、基礎を学ばせるほうが良いという考え方もあります。

④分解して考える
  基本的なことばを知らない、ルールを覚えていない、そのために問題の意味自体が理解できないということがあります。授業を聞いても理解が進まない場合、いくら努力をしてもテストで結果が出てこない場合、一度じっくりと、どの段階で分からないのか、問題を分解して考えてみる必要があります。これに一人で取り組むのは難しいことではありますが、まずは自分で、徹底的に一つの問題を分解して、どことどこが分からないのかを見つけ出していってください。そこから対応の仕方が見つかります。(その後どういう進め方をすれば良いかについては、いつでも相談してください。)極端な例を挙げると、英語で数学の授業を受けたとすると、数学の内容そのものが分からないのか、英語が分からないから、どのページを開いて、何をすればいいのかすら分からないのか、そこをはっきりさせないと、対処のしようがないということです。どちらも、ということも多いでしょうが。

⑤「思い出す」と「分かる」はよく似ている
  前に「記憶力UP法」の中で、「覚える」というのは「思い出す」ことだと言いました。思い出そうとしていると、よく「もうここまで出てきているんだけど」という思いになることがあります。実はこの「ここまで出ているんだけど」というところから「あっそうだ、思い出した」というところにいたるまでの過程が、「分かった」「ひらめいた(ユーリーカ)」というときの脳の働きとよく似ているのだそうです。算数・数学の問題などを解いていて「もう少しで分かりそうなんだけど」という思いをしたことはないですか。「分かる」と「分からない」の間には大きな溝があるようですが、実は一つながりになっていて、ほんのちょっとしたきっかけで「分かる」ようになるものなのです。しかしそこまでの過程では集中して同じ問題を考え続けるという必要があります。私は高校生のころ物理学の難問に1週間くらい取り組んだことがあります。最初はどうすればいいか全然分からなかったのですが、通学途中の電車の中などの時間も使っていろいろ考えをめぐらせていました。そうしたら、寝ているときに夢の中でその解法を思いついたのです。これ、うそのような本当の話です。しばらくの充電期間の後、ポンと一つ上のステージに飛躍するのです。それが「分かる」ということです。すぐにあきらめていたのではいつまでたっても理解力は身につきません。「思い出す」練習とパズルなども使って一つのことに集中して時間をかけて考え抜くという練習をしていきましょう。そこから理解力が養われていくことでしょう。

⑥自分一人でたどり着かないと目的地への道は覚えられない
 少し考えて分からないとすぐ人を頼りにする人がいます。あるいは、すぐ答えを見てしまう人がいます。質問をして教えてもらって分かったとしてもそれだけでは自分の力にはなっていません。答えを見て、「あっそうだったのか、よし分かったぞ」と思っていても、次に同じ問題が出たときに解けるとは言えません。必ずもう一度自分一人で解いてみないといけません。少し時間はかかるのだけれども、自分一人でいろいろ悩みながら答えにたどり着いた場合、それはしっかりと自分の力になっているはずです。こんな話を聞いたことはありませんか? 見知らぬ町に行って、誰かに案内してもらって目的地に到着した場合、次に一人で行こうと思ってもなかなかたどり着けない。それは連れて行ってもらえるという気軽さからあまり周りの状況を意識しないから。でも、最初から迷いながらでも地図片手に自分一人で目的地に着くことができれば、決してその道を忘れることはない。当塾の魅力は、もちろん「質問がしやすいこと」にあります。けれども、何でもかんでも分からなければすぐに先生に聞いてしまおうという発想は捨てましょう。「分かったつもり」と「分かった」とは違います。危険なのは「分かったつもり」になってその後、まったく手をつけないこと。とにかく、目安としては、1問に最低10分(ものによります)はかけて考えるようにしましょう。知っているか知っていないかだけの問題のときでも、知らないと言ってすぐ答えを見たり聞いたりするのではなく、しばらくは「本当に聞いたことなかったかな?」「これノートに書かなかったかな?」などと考えて思い出す努力をしてみてください。

⑦壁を作らない・すぐあきらめない
 理解する力を養うには、まず自分で自分の限界を決めない・壁を作らないということが大切になってきます。「どうせ私なんて」「数学は苦手だから」などと決めてかからないことです。「なせばなる、なさねばならぬ、なにごとも」という言葉がありますが、最初からあきらめてしまえば、何も始まりません。スタート地点にも立っていないということですから。まずは自分で何とかしようと努力してみてください。上に書いてきたように「まねる」とか「分解する」とか必死に「思い出す」とか、自分でできそうなことをやってみてください。前にあるのは大きな壁ではありません。近づきすぎると見えないかもしれませんが、一歩下がってみてください。それは少し高い階段になっています。自分の力で何とかよじ登れば、一つ上のステージに上がることができるのです。

⑧やっぱりテストで身につく理解力
 それでは一番理解力が身につくときはいつでしょうか? 一人で何とか思い出そうとして、必死に考えて答えを導き出そうとする、実はそれはテストのときです。記憶力アップにもテストが有効、理解力アップでもテストが大事なのです。テストを受けるたびに(真剣にですよ)理解する力は身についていきます。当塾では本当にたくさんのテストが行われています。もし、その1回1回を有効に使って、真剣に取り組んでいけばそれで十分に力はついていくのです。もちろんテストの時間内だけ集中して真剣に取り組むというのではあまり進歩は望めません。それでは、テストを利用してどんなふうに勉強していけばいいかを説明しましょう。

(ⅰ)テストの準備はしっかりと・・・まずは、テストの実施日とその範囲を確認しましょう。テストの種類にもよりますが必ず1回1回のテストを大切にしてしっかりと準備にかかりましょう。毎週の確認テスト用の問題集などを利用したり、範囲の内容で以前間違ったところの復習などをしておきましょう。それから、大きなテスト(統一テストや各種模試など)前には必ず前の学年や以前に習った内容の復習をしましょう。勉強したことがそのままテストには出なくて、成果が上がらず、悔しい思いをすることもあるでしょう。それでも、やったことは必ず自分の力になっています。そういう努力が後々必ず効いてくるのです。
(ⅱ)テスト中は真剣に取り組む・・・分からないと途中であきらめないこと。あきらめればそこまでです。時間いっぱい粘り強く取り組んでください。必死に思い出すのです。必死に考えてみるのです。その積み重ねで、理解力が養われます。
(ⅲ)テスト後のやり直しも重要・・・まず、テスト終了後、すぐに配られた解答で自己採点をしてください。これは、どんな問題を解くときでも同じですが、一つ問題を解いてそれがあっているのかどうか気にならないというのは良くないのです。すぐにできたかどうかのチェックをしましょう。答案が返ってくる前に必ずやり直しを済ませましょう。「鉄は熱いうちに打て。」その日のうちのやり直しが重要です。そのためにはテスト問題には自分の答えを書いておくのが良いでしょう(記述問題の答えをあまり時間をかけて写すのは良くないですが)。間違いなおしノートなどを作って、間違った問題をそこにはり、その下にやり直しをしていくようにすると、自分だけの、自分の苦手なところを集めた問題集が出来上がります。それは後に宝物となりますよ。
テストはもちろんその時点での自分の力を確認するために実施しています。「分かる」ことと「分からない」ことを区別して、何をしっかり復習すればいいかを知るための道具でもあります。そして、何よりもテストがあるからこそ皆勉強するのであって、このテストを勉強する機会としてとらえているかどうかで大きく結果は違ってくるのです。ぜひ、テストを使って勉強をするという習慣を身につけて下さい。
そして、理解力のアップを図りましょう。


Ⅲ 読解力UP法      

①少し難しい文章を読む
 もともと本を読むのが好きな人は、読解力もあり、国語が得意になる場合が多いです。しかし、読書は大好きなのだけれど、あまり国語が得意でないという人もいます。読書が好きというのと、国語ができるというのとは必ずしもイコールではなさそうです。その理由 一つめ。たくさん本を読んでいても、自分にとって読みやすく、スラスラ頭に入ってくるようなものばかり読んでいる人。実はこれでは一向に読解力は養えません。他の教科の勉強でも同じなのですが、自分にとって楽な問題ばかり解いていたのでは、いつまでたっても自分のレベルは上がりません。少し、難しいかなと思うくらいの問題を解いていく必要があります。これはスポーツだって同じでしょう。できることを繰り返しやっているだけでは力になりません。少し負荷をかける。そのことで自分は一つ高いレベルに位置することができるのです。では、どんな本を読めばいいのでしょう。まず、図書室や図書館に行ってみましょう。もちろん本屋さんでもかまいません。内容はやはり興味があるものがいいでしょう。学校や塾の授業で先生や友達から聞いてちょっと興味を持ったこと。最近テレビで見ておもしろそうと感じたこと。好きな作家でもかまいません。自分の目当ての種類の本が置いてある棚に行ってみましょう。ふだんなら、パッと開いてみて「これ読みやすそう」と感じたものだけ読んでいるかもしれません。それをちょっと変えてみましょう。「なんか難しそうだなあ。でもこの中身には興味があるし、この本に書かれていることを知りたいなあ。」と思えるモノを手にしましょう。さあ、そしてちょっと時間はかかってもいいので、何度も読み返してもいいので、じっくり読んでみましょう。最初の数ページで挫折するかもしれません。それでも、そんなことを繰り返しているうちに、少しずつ読む力はついていきます。もともと本を読むのが好きでなく、図書館なんて行ったことないという人は新聞でもいいと思います。大人向けの普通の新聞なら、小中学生にとってはどれもレベルの高い文章となるでしょう。簡単なコラムやエッセイでもいいです。ときにはチャレンジして、政治や経済、教育、科学や医療についての記事を読むのもいいでしょう。本の紹介(書評)を読んでみるのもいいでしょう。それで興味が持てれば、その本自体を読んでみればいい。もし、家族に読書好きの方がいるなら、ちょっと借りて読んでみるのもいいでしょう。とにかく、自分にはちょっと難しいかなあと思えるくらいの文章を読んでみるというのが大切です。

②いろんな内容の文章を読む
 読書好きで、国語が苦手な人の理由 二つめ。物語ばかり読んでいて、説明文なんて読んだことがないという人。ちょっと大きな国語のテストを受けてみれば分かりますが、長文問題は物語だけでなく説明文やエッセイ、詩なども登場します。いろんなタイプの文章を読んでいきましょう。でも、興味が持てないと読むこと自体が苦痛になりますね。国語の勉強のためとか、読解力をつけるためとか思って無理やりに読むのと、自分から興味を持って主体的に読むのとどちらがいいでしょう。もちろん後者のほうです。私の読書法・・・(1)1冊の本を読んでいて、その中に登場するいろんなお話に興味を持ったら、そちらにも手を広げて読んでいく。どんどんアンテナを広げて、テレビや新聞に出てきた話で興味がわいたらそれに関する本も読んでみる。次々に世界が広がっていきます。 (2)一人の作家の作品を読み通す。(私の場合は、安部公房・夏目漱石・三島由紀夫・村上春樹・森毅・梅棹忠夫・養老孟司など)その人が小説家であったとしても小説ばかり書いているわけではありません。紀行文とか軽いエッセイとか、人生論だったり、ドキュメンタリーだったり。・・・とにかく、興味の向くまま、いろいろ読んでみることをおすすめします。自分の守備範囲を決めてしまわないこと。自分は、説明文は苦手と決めてしまわないこと。もともと本が苦手な人。先に書いたように新聞でいろいろ読んでみることをおすすめします。が、よく考えると、みなさんは学校で塾で、いろいろなテストで、常にいろいろな種類の文章に触れています。それを繰り返し読んでみるというのでもいいのです。たとえば私はテスト監督をするときに生徒の皆さんといっしょに国語の問題を読んでいます。私からするととてもうらやましい。それはなぜか。小中学生でもこんなに質の高いいろいろな文章に触れることができるのだから。結構いい文章が多いです。以前小6統一テストで思わず涙ぐんでしまった物語(重松清)もありました。だから、教科書でもテストでもいいので、毎日一つ、長文を読んでみてはいかがですか。

③自分勝手な読み方をしない=本文から答えを探す
 国語好きで、国語が苦手な人の理由 三つめ。自分の気持ちだけで答えを書いてしまって間違う人。「自分はこう思う」というのは捨てましょう。本文には何が書かれているのか、この文章をふつうみんなはどう読み取るのか、というふうに考えてみてください。もっと言うと、問題の作成者はいったい何を答えさせようとしているのか。そんな特殊な読み方をすることはないでしょうから、一般的にどうとらえられるかを考えて答えるようにしましょう。ちょっとおもしろい具体例。あまりいい例ではないかもしれませんが。「美人コンテスト」というのがあります。ふつう審査員は自分の好みで選べばいいのでしょうが、あるときこんな課題が出されました。一番たくさんの人が美人だと思って投票した人に投票していた人のなかから抽選で何かプレゼントがもらえる。一番多くの人が投票していてその中から抽選するわけだから当たる確率は低いのだけれど、それでも、ふつうの人と違う人を選んでしまったのでは意味がない。そこで、みんな一般的に美人と言われる人はどんなタイプかを考えて投票をするのです。これ、国語のテストとよく似ています。実は、何か新しい商品を開発して売るという場合も同じようなことが言えるのです。(もちろん、特殊な、せまい範囲の人をターゲットにした商品もありますが。)自分の主観が必ずしも正しいとは限りません。少し冷静になって一般的にはどうかを考えてみましょう。「算数は答えが一つに決まるから好きだけど、国語はいろいろありうるからあいまいで嫌い。」という人が時々いますが、実は突き詰めると国語も必ず一つの答えに行き着くのです。答えは必ず本文中に書かれています。そうでないとテストにならないですものね。もちろん、文章を書いた当の本人がどう考えているかは別問題ですが・・・。読書が嫌いな人でも、ここに書かれたことを意識して問題に答えてみてくださいね。

④読んだ内容を誰かに伝える
 さあ、読書が苦手な人も、努力していろいろ読んでみようとしてみました。けれども一向に読解力がついているとは思えません。なぜでしょう。実は読んでいるように見えて、字面(じづら)だけを追っかけていて、中身が全く頭に入っていないという場合があります。特に、少し難しめの文章を読もうとしている場合はそういうことが起こりがちです。私の場合。ちょっと無理して哲学の本なんかを読んでいると、読みながら、ふと気がつくと他のことを考えているということがよくあります。趣味で本を読んでいる分には、実はそれでもいいと思っています。1冊の本の中身を丸々理解しなくても、少しでも心に響く文章に出会えればそれで幸せです。心の琴線(きんせん)に触れるというのでしょうか。そんな経験を私も何度もしてきました。でも、やはりいまは読解力を身につけたいところ。だからここでのおすすめは読んだ内容を人に伝えるということです。要約するというとちょっと堅苦しいので、単に自分が読んでおもしろいと思ったことを人に伝えるだけでいいのです。ことばにして伝えることで頭の中が整理できます。うまく言えなければ、しっかり理解できていない、自分のものになっていないという証拠です。私はこの十年間、本を読んだ後には必ず感想を書くようにしています。(校通信に掲載するためですが。)それだけでなく、帰りの電車で読んだ本の内容をすぐ人に言いたくて、家について夕飯を取りながらパートナーに話を聞いてもらったりしています。相手は迷惑かもしれませんが。新しいことを知ると、人に言いたくなるもの。おもしろい話、悲しい話、珍しい話、何でもいいので、読んだことを人に伝えましょう。

⑤すき間の時間に読書
 私の読書時間は1日に約1時間半。朝の30分と往復の通勤電車の中と寝る前。朝にもう少し時間が取れればいいけれど、ついつい遅くなってしまう。新聞を読むのに時間が取られることもあります。電車の中はよく読めます。気持ちよく寝てしまうこともあるのですが。ときどき事故などで電車が遅れることがあります。それでも本を読んでいれば、あまり気にならずに待つことができます。皆さんもいろいろとすることがあると思いますが、ほんの少しのすき間の時間に本を読んでみてはいかがですか。5分でも10分でもいい。1ページでも1節でもいい。何かまとまった本でなくてもいいです。夕飯の準備ができるまでの5分間で教科書の長文を一つ読む。学校に行く前の5分で前回のテストの長文を一つ読む。そういうのでもいいと思います。その積み重ねで、瞬時に集中するという力が身についていきます。実はこれは読書だけでなく、問題集を解くときにも言えることです。ほんの少しのすき間時間でプリント1枚仕上げる。「これだけは覚えよう」を1ページ覚える。やることはいっぱいあります。「ちりも積もれば山となる」毎日5分でも1ヶ月で2時間半にもなるのです。ぜひ試してみてください。

⑥語彙(ごい)を増やす
 さてここまで読んできてくれた方に質問です。ここまでで意味の分からない言葉がいくつ出てきましたか? 負荷・挫折・コラム・エッセイ・主体的・後者(前者)・ドキュメンタリー・ターゲット・主観・字面・心の琴線に触れる・語彙・・・などなど。私が小中学生向きに書いていても、ちょっと知らないことば・読めない漢字が登場します。少しくらい読めない漢字があっても、全体の流れをうまくつかんでいけば良いという考え方もあります。それはその通りで、テストのときなど知らないことばが出てきても前後の文脈から判断して意味を読み取ることは必要です。(英語も同じ)けれども、やはりことばを知らないから読めないということが往々にしてあります。大人にとっては一般常識ということばや考え方が出てきて、それを知らないから問題文全体の意味が分からないということもあります。これは国語だけではないですね。どの教科でも起こり得ることです。だから、とにかくたくさんのことばを知ってほしい、知らないことばに出合ったらすぐに辞書を引いて調べてほしい。意味の分からない文章に出合ったら、大人の人に聞いてみてほしいのです。そして、常識を身につけてほしいのです。慣用句やことわざも同じです。そして、たくさんのことばを覚えて、常識を身につけるには、たくさんの文章を読むしかないのです。結局はここに行き着くのです。読んで、分からなければ調べて、それでも分からなければ聞いて、これはどの教科の勉強でも同じですね。たくさんの文章を読むようになるには、いろんなことに興味を持つようになるのが一番です。本来、人間は「好奇心のかたまり」です。他人のことが気になったり、知らないものを知りたいと思ったりするのは当然のことなのです。そういう気持ちを、どんどん伸ばしていきましょう。

⑦読書好き人間になろう!
 本を読むと世界が広がります。過去にも行けるし、未来にも行けるし、世界中のいろいろなところに連れて行ってもらえるし、宇宙にも行けるし、死後の世界にも行けてしまう。いろんな人になりきることもできます。王様になったり、総理大臣になったり、数学者になったり、医者になったり、軍人になったり、フランス人になったり、ロシア人になったり、老人になったり、恋人になったり、自分さえそう思えばその人になりきることができます。一生かかっても体験できないようなことを読書はさせてくれるのです。一人で黙読をする時間を大切にしましょう。いまはインターネットやケータイやとあらゆるところから情報が流れ込んで騒がしい時代になってしまっていますが、読書をして頭の中をクールダウンする時間もとても大切なのです。ぜひみなさんは読書が大好きな大人になってくださいね。


Ⅳ 集中力UP法        

①積極的集中と消極的集中
 集中すると一言で言ってもいろいろな集中の仕方があります。この文章を書こうとしていたら、飼っていたアゲハがさなぎから羽化して出てきているとパートナーに言われました。それで、飛び立つまでの間ずっと観察していました。その間、1時間とちょっと。ストローのような口をこそこそ動かしたり、おしっこ?をしたり、はねを少しずつばたつかせたり。途中にはナナホシテントウが飛んできたり、よその子どもたちが近づいてきて「おっちゃん、何してんのん?」と聞かれたり、カに刺されたり・・・。やっとの思いでアゲハは飛んでいきました。興味があることだから、自分が知りたいと思うことだから、1時間という時間もあっという間に過ぎていきました。気にしなければ見過ごしてしまうことでも、積極的に興味を持てば、1時間くらいは集中できるものです。本を読む、テレビを見る、ビデオを見る、ゲームをする、何でもいいのですが、おもしろかったり、楽しかったりすればずっと集中できるものですね。でも、本を読むときの集中と、テレビを見るときの集中はちょっと違うように思います。本は自発的に積極的に読まないと読み続けられません(東野圭吾(読みやすい、ぐんぐん引き込まれる)を読むのと、夏目漱石(たいくつでなかなか進まない、けれど何かありそうと期待できる)を読むのとでは集中の具合がずいぶん違いますが)。でも、テレビは自然と情報が入ってくるから、消極的な姿勢でも見続けることはできます。とくに、映画などは至れり尽くせりで、見ている人を飽きさせないようないろいろな仕掛けがあります。だから2時間かそこらの時間集中を持続することができます。ゲームでもそう。勉強のときはどうでしょう。夢中になって、時間を忘れて勉強に取り組めればいいのですが、そんなことができるのはほんの一部の人でしょう。そういう人がいろんな大発明をしたりするのでしょう。ただ、そういう人は他の日常生活のもろもろを忘れてしまって、大変なことになったりもするようですが。いやなことだと思うから、楽しくないから、あるいは、誰かにやらされていると思うから、なかなか長続きしないのでしょう。簡単な問題で、自分で解ける問題ならどんどん続けて進めることができるのに、ちょっとハードルが上がって難しい問題にぶつかると、たちまち集中力が持続しないという人も多々います。でも、実際には、少し自分の実力よりも上のことをしないと力はついていかないのだということを肝に銘じておいてください。忍耐力も重要です。さて、本当は、新しいことを知るのは楽しいとか、できなかったことができるようになるのは「快感」とか、自分の目標達成のために頑張っているのだとか、そういうのがあれば勉強も続けられるのではないでしょうか。勉強に対して積極的になれる方法はないか、自分なりに探してみてください。

②能動的集中と受動的集中
 積極的・消極的と似たような言葉ですが、能動的と受動的という言葉もあります。能動的は自ら進んですること。受動的は受け身な状態。誰かに言われてやるのではなく、自分から進んでするのが能動的。遊びでも、誰かに命令されてするのはあまり楽しいものではないですね。何事も能動的にするのであればきっと集中できるでしょう(何かを自発的にやり始めても、すぐ飽きてしまうという人もいるでしょうが)。さて、ここで受動的というのは決して悪い意味ではないということを分かっておいてください。たとえば授業を受けているのは受動的な状態です。スポーツでもコーチなどに指示をされて練習するのはどちらかというと受け身になります。この受け身の状態のときでも、積極的に取り組んでいるか、消極的なのかで、同じことをしていてもずいぶんと結果が違ってくるでしょう。授業中、寝てしまう人がいます。寝てはいなくてもダラーとしてやる気のない人。仕方なくお客様状態で授業に参加している人。いろんな人がいます。これはみな消極的受動。スポーツでも無理やりしごかれて早く終わらないかなあなんてことばかり考えている、これも同じです。それに対して、授業中、目を輝かせて一生懸命話を聞き、メモを取っている。これは積極的受動。スポーツなら、コーチの指示を聞いて、それにしたがって行動し、どんどん力をつけていく人。どちらが良いかは明らかですね。私が大学生のころに受けた村上陽一郎先生の科学思想史の授業で、私はあまりのおもしろさに必死にメモを取りながら聞いているのに、横で寝ているヤツがいました。同じ内容でも受け手の姿勢で全く違ってくるのです。受動的な状態に置かれていても、常に積極的であることを心がけてください。さらに、誰にも何も言われなくても、積極的に能動的に勉強や、習い事や、スポーツなどを続けてできればすごいですね。そうすれば必ずや力がついてくるはずです。最初は受け身でも、次第に能動的に変わっていく場合もありますね。始めは先生やコーチの指示に従ってやっていたけれど、次第に自分なりの方法を見つけて、創意工夫をしながら進める、こんなふうに変わっていけたら最高です。そのやる気はどこからわいてくるのでしょう。やる気スイッチの入れ方はまた別の機会に書いてみたいのですが、ほめてもらえるとか、ごほうびがもらえるとかいろいろあるでしょう。競争に勝ちたいという動機付けもあるでしょう。でも一番はやはり、おもしろいとか、自分の中からわき起こる好奇心が最も積極的・能動的にさせるのではないでしょうか。

③瞬間型集中と持続型集中
 少しまた見方を変えましょう。同じ集中でも、短時間で集中する瞬間型集中と、長時間一つのことに取り組むことができる持続型集中があります。まず瞬間型から。私は常にかばんの中に本を入れています。電車の待ち時間、電車に乗っている間、昼食が運ばれて来るまでの間、寝る前・・・などなど、5分でも空き時間があれば本を読みます。すぐに本の中の世界に入っていけます。たとえば、最近入試問題にもよく登場する重松清の小説なんかを読んでいるとします。仕事に向かう電車の中で本を読んでいて、駅に着いたらしおりをはさんですっとかばんに入れ、帰りの電車に乗るとすぐに続きを読み出す。10時間ほど間に仕事をして、いろんなことがあったわけだけれど、それらが全部すっ飛びます。本が好きな人ならこんなものなのでしょうが、よく考えるとこれってすごいですね。瞬間的にそこに入って行けてしまうのです。勉強をするのでも、すき間の時間を利用しなさいとはよく言うことです。バスを待っている10分間でも1問解くことはできるのです。スポーツとは違って、脳に準備運動は必要ありません。(朝起きてすぐは働きが悪いですが。)即、集中。この訓練をしましょう。次に持続型の集中について。私はどちらかというとこちらは苦手です。1冊の本を読み続けることができなくて、並行で数冊の本を読んだりします。もちろん、マイクル・クライトン(ジュラシック・パークの原作者です)などのように読みやすくてしかも夢中にさせてくれるような本なら、わりと長時間続けて読むことはできます。(私自身はだいたい読むのが遅いのですが。)でも、いくら新訳で読みやすくなったとは言えドストエフスキーなんかはやはり長時間読むのは疲れます。まあ、細切れでも、途中で投げ出してしまわずに継続できるということが大事なのかもしれません。何事も持続させる方法は、やはり興味を持ち続けるということになるのでしょう。


④タイムプレッシャー
 それでは具体的に集中力をつける方法を紹介していきましょう。まずはタイムプレッシャーから。学校ではきっと百マス計算などで時間を競い合ったこがあるでしょう。家で勉強をするときにも、時間を決めてやってみると良いでしょう。自分の限界に挑戦しながら、どんどん時間を縮めていくのも良い方法です。制限時間があるとあせってしまいますが、それが脳をきたえるのには有効なのです。みなさんは実際にはいつもテストのときにやっているわけですが、家庭学習のときでも時間を計ってやってみましょう。家でテストをやり直すときとか、赤本(過去の入試問題)を解くときに同じ年度の問題を2回目以降するときにはどんどん時間を短くしていくと良いでしょう。あるいはあらかじめ決めておいた一定の時間内に、どれだけたくさんの問題が解けるかに挑戦するのもいいでしょう。記憶コンテストの練習などでやってみてください。本番のテストは100問で30分ですから、5分で何問まで解けるかチャレンジしましょう。25問くらいまで行けると良いですね。クラスで競争をするというのも良いでしょう。早くできた人から帰って良いですよと言うと、みんなすごくあせりながらやります。「もうちょっとでできそう、ちょっと待って」など言いながらやってくれる人が多いです。これは、かなり集中できます。私が実践してきて、力がつくと自信を持って言える勉強法の一つです。

⑤計画を立てるのは大切、けれどそれ以上にすぐ始めることが大切
 目標達成のために計画を立てることはとても大事なことです。計画性なく進めてしまうと、期日までに全てを終えられない可能性があります。小さなテストならともかく、入試の日に間に合わなかったということでは困ります。だから、まずは、大まかにでもいいので、いつまでに何をするか(期限目標)、毎日何をするか(ルーチン目標)は決めておくようにしましょう。しかし、その計画がうまく進まないというときには、それを見直して改善していかなければいけません。最初に決めたものにこだわりすぎるのも良くありません。さらに、計画を立てたことで満足してしまい、その後具体的に動かない、これが一番困ったものです。あるいは、さあ勉強を始めよう!と机に向かったのはいいものの、まずは机の上の整理整頓、そして、今から何時間で何をしてと、いろいろ準備をしている間に、勉強自体をする気がなくなったり、時間がなくなったり、というのでも、また困ります。やろうと思い立ったときが始め時。すぐに始めてください。今すぐ集中。瞬間的に集中。勉強をやりながら、新しくやるべきことが見つかったらとりあえずメモをしていって、どんどんこなしてそのメモしたことがらをどんどん消しこんでいきましょう。全部消えるとちょっとした達成感が得られます。悩む前にまず行動。走りながら考えましょう。

⑥パズルで集中
 パズルは集中力をつけます。これは間違いないです。パズル道場に来てくれる人たちの様子を見ていると、その集中力はすごいものです。いっしょに体験に来られた保護者の方までもが夢中になったりされています。難しすぎるのはダメですが、何とか頑張ればできそうというレベルだと特に長続きします。1日でできなくても、何日かかけてできるのでも良いです。できない時間が続いた後、「できた!」となると脳に快感物質(ドーパミン)が流れます。それを一度味わうと後が強いです。できれば小さなころからパズルに慣れ親しんでおいてほしいものです。中学生くらいになると、できない経験を多く持ちすぎてあきらめが早くなってしまいます。あきらめない、粘り強く集中する力、それがパズルで養える力なのです。あきらめが早いと思う方、一度パズルに挑戦してみませんか。書店で探せばたくさんのパズルが並んでいるし、新聞にも週末あたりによく出ています。本当はパズルでなくても、数学の問題でも何でもいいのです。ただ、パズルの方が遊び感覚でできるので、「快感」を味わう最初のきっかけとしては良いというだけです。できない、わからない、とすぐあきらめてしまわず、がまんして考え続けてください。そこを突き抜けた先にある「快感」をぜひ味わってみてください。がんばれば「快感」が得られる。「よし、次もがんばろう!」と思ってもらえたら最高です。


⑦声に出す、深呼吸、身体を動かす、ジャンプ、肩入れ
 一人で勉強をしているときなら、声に出して覚えるのも効果的です。目で見る、声に出してみる、耳から聴く、五感をフルに使って覚えていきます。絶対集中できます。眠くもなりません。どうしても眠くなってきたら、一度深呼吸をしてみましょう。浅い呼吸が続くと脳が酸素不足になります。息はしっかりはき切ってから吸うようにしましょう。また、立ち歩きながら声に出して覚えるのもいいです。英語の本文とか、憲法とか、「これだけは覚えよう」などを丸暗記するのにはいいでしょう。漢字を覚えるときにも、鉛筆を持って紙に書かなくても空に書くのでも十分に覚えられます。その他、集中力が途切れてきたと思ったら、ひざの屈伸をしたり、軽くジャンプをしたり、あるいは肩入れ(両膝にそれぞれ手を当て、股関節を広げて、左右順番に肩を内側に入れる)をしたり、しこを踏んだりするのもいいです。どうしようもなく、ストレスがたまって、イライラしてきたりしたら、外の空気を吸って、家の近くをぐるっと1周走ってきてもいいかもしれません。自分なりのストレス解消法、集中力UP法をあみ出しましょう。

⑧満員電車で集中
 最後に私の経験から、満員電車集中法。集中力をアップさせる方法ではないのですが、満員電車の中は意外とよく集中できます。今通勤に使っている電車は比較的すいており、集中できなくなることが多々あります。本を読んでいても、隣の会話が気になって、本の内容が全く頭に入らなくなることがあります。ところが、ある一定以上こみ始めると、いろいろなところから声やその他いろんな音が入ってくるので、それは全て雑音となってしまい、まったく一つの信号としての意味を成さなくなってしまいます。そうすればこっちのものです。ぐんと集中力がアップします。実は高校時代の受験勉強には結構この満員電車が役立ったのです。往復2時間は乗り物に乗っていましたから、その時間を有効活用しないといけません。当時から本はよく読んでいましたが、大学受験が近づいてきたころには、電車の中で良く勉強したものです。私の学生時代の友人には、浪人時代に東京の山手線に何周も乗車して勉強したという人がいます。冷暖房完備ですからね。こういうことを考えると、ながら勉強はふつう良くないのですが、少し大きな音で音楽をかけながら他の音をすべてシャットアウトして勉強するというのも一つの集中法と思われます。ただし、日本語の歌詞がある音楽は良くありません。口ずさみながらでは考えたり覚えたりはできないです。単なる作業におちいります。気をつけてください。私の場合は、音楽はどうしても聴き入ってしまうので、あまりステレオをかけながら勉強するということはなかったと思いますが、高校入試をひかえた中3の冬、誕生日プレゼントに複数の友達からもらったセックスピストルズという当時としてはちょっと過激なパンクロックグループのLPレコードを何度も繰り返し聴きながら、受験勉強したという記憶があります。それが良かったのかどうかわかりませんが、とりあえず第一志望には合格したので良かったことにしておきましょう。

さて、集中力と一言で言っても、集中の仕方にもいろいろあるのだという話をしてきました。なんとなく分かってもらえましたか。どういう集中の仕方が良いのか分かってもらえましたでしょうか。そしていくつか、具体的な集中力アップ法をお伝えしました。ぜひ、いろいろ試してみてください。そして自分の中でうまく行くというモノが見つかればどんどん実践していってください。皆さんの集中力が飛躍的にアップし、どのクラスでも、緊張感ただよう、積極的で、前向き、前のめりの授業が繰り広げられることを期待しています。


Ⅴ やる気力UP法     

①ライバルを見つける
 私自身の経験から話をします。小学5年のはじめ、一番仲が良かった友だちが、個人塾に行くからいっしょに行かないかと誘ってくれました。そこでは、別の学校の友だちもたくさんできました。個人の塾とは言っても、1クラス30人くらいはいたと思います。近隣では結構有名な先生だったようです。(この話を以前校通信で紹介したら、私と同時にその塾に通っていたという保護者の方がいらっしゃいました。桂のI先生です。)その塾では、いつも計算ドリルが宿題になっていたのですが、やっていった分にどんどんチェックが入ります。一人すごく優秀な男がいて、私はいつも彼と競争でドリルを進めていました。それがおもしろくて、どんどん前のめりで勉強に打ち込むようになりました。その後も、模擬試験の点数などでずいぶん張り合ったと思います。当塾では、もちろん同じクラスの中にも良きライバルはいますが、はり出された順位表の中に目立った名前の人がいつも上位にいる、なんてことがよくあります。そういうときは、その人を勝手にライバルに決めてしまいます。そして次回は絶対この人に勝とうなんて考えます。そんなことを思っていたら、日曜特訓でその人と出会った、なんていうケースもあるのです。いつも敵対視していたけど、けっこういいやつだったということが実際にありました。

②自分との戦い
 また、勉強は自分との戦いでもあります。自分で限界を勝手に決めないようにしましょう。たとえば、陸上競技とか、スイミングとか、そういう一人で戦うスポーツの場合、常に自分の限界に挑戦していくことになります。棒高跳びで世界新を出した選手は、自分が世界で一番なのだから、次はその自分の記録を破らないといけません。これは結構きついと思います。いままで、勉強をしてきて、もうこれ以上は無理という限界までやってみたことはありますか。あまりいいことではありませんが、大学生とかになると徹夜で勉強することがあります。そういうことをしてもあまり効率は良いと思いませんが、それでも一つのテーマを突き詰めて連続で考えてみるというのは力になることだと思います。私自身は、実は一番勉強したと思えるのは、中学受験前のことです。もう寒い季節でしたが、一日中、全国の入試問題を片っ端から解いていました。食事の時間をのぞくと、15時間くらい連続で勉強をしたと思います。まあ、おもしろかったからできたのです。当塾では小6の算数合宿や小6・中3の正月特訓を実施しています。1日1教科8時間勉強します(合宿の2日目は10時間以上)。1日中同じ教科をするという経験はあまりないはずです。皆、熱が出そうになるくらい頭がフル回転するようですが、それが終わった後の充実感はすごいと言ってくれます。それが、入試当日の自信にもつながります。さらに、うまく行ってクラスでトップをとった場合などでも、次はその位置を維持しないといけません。それは結構なプレッシャーになります。でも、それがまた程よい緊張感を生むのだと思います。そういう、緊張感を楽しみましょう。毎回のテストでは、自分の中できちんと目標を決めておくと良いでしょう。ドキドキしながらテストを受けましょう。そして、どんどん自分にストレスをかける。ストレスに打ち勝つ力を養っていくことが大切です。少々のことではへこたれない。それが将来、生きてくる力になります。

③自分をコントロールする
 ちょっとやる気がなくなってきたなあと感じたら、いったん自分から離れて、もう一人の自分になってみます。自分のことを冷静に見つめる自分。そういう存在に今まで気づいたことはないですか? 何かで盛り上がって楽しく振る舞っているときでも、今の自分、まわりの人にはどんな風に見えているのだろうかとか、つい何か悪いことをしそうになったとき、いけない、いけないと思い直すときなど。何かにのめりこんでいる自分とは別の自分がいますね。そういう自分を見つけておくと、やる気力が低下してきたときでも、今はこういう時期だから、少し休んで気分転換でもして、それからまた続きをやろう、なんて冷静に考えることができます。いつまでもやる気のない状態を引きずるのはよくないですからね。また、受験のときなどで、緊張してどうしようと、パニックになったときでも、もう一人の自分に出てきてもらえると安心ですよ。自分で自分の心をコントロールできるようになりましょう。

④カラ元気
 やる気力が低下しているとき、しんどいとき、ちょっと息を抜くのも一つの方法ですが、場合によってはそんなときでもちょっと無理してカラ元気を出してみるのも良いでしょう。そうしていると自然に元気になることがあります。実は私自身、ちょっとしんどいなあ、と思っているときでも、授業をしているうちに皆さんのパワーをもらって、どんどん元気になっていくことがあります。自分で、しんどいとか、だるいとか、思ったり口に出したりするのではなく、ちょっと無理してでも元気に振る舞ってみてください。きっとカラ元気が本元気に変わってくるはずです。

⑤一度むちゃくちゃ勉強してみる
 何かのテスト前、一度、もうこれ以上できないというくらい勉強してみてください。必ず今までより成績が上がります。自分もやったらできるんだということがわかります。そしたら、また次もがんばろうという気になります。良い循環に入っていけばしめたものです。中途半端なやり方では無理です。とにかく、繰り返し、完璧になるまで何度でもやり直す。そのためには早めの準備も必要です。一つのテストに目標をしぼってやってみましょう。全部が無理そうなら一教科でもかまいません。要は、やったらできるんだということを知ることが大切です。スポーツでも音楽でも勉強でもある程度遺伝は影響すると思いますが、特に勉強は後からの努力次第で大きく違ってくるものだと思います。努力は決して裏切りません。結果が出ないのはやはりまだまだ自分にあまいところがあるからです。一度、だまされたと思って、むちゃくちゃにハードに勉強をしてテストを受けてみてください。

⑥あこがれる・感染する
 皆さんにはあこがれの人がいますか? すごいなあと思える先生に出会ったことがありますか? 私には過去に、そして現在でも、あこがれており、その先生の考え方などに共鳴し、感染してしまった人が何人もいます。それは、実際に教わった先生もですし、本を読んでという場合もあります。何度か書いてもいますが、紹介しましょう。高校時代の倫理社会の庭田茂吉先生。この先生からは読書の楽しみを教わりました。大学生のころ、科学思想史の村上陽一郎先生。歴史に対する姿勢を学びました。生体物理学の沢田康治先生。カオスやフラクタル、発生生物学のおもしろさを教わりました。講演会とたくさんの著作から、数学・教育・人生論の森毅先生。二十代のころ最も影響を受けた先生です。今私が持っている人生観の半分はこの先生の考え方に感染して出来上がったものです。その後は、養老孟司先生、齋藤孝先生、茂木健一郎先生、内田樹先生などなど。そうそう、まだ高校の物理の先生をしていらっしゃったころですが、いまよくテレビにも出ているでんじろう先生にも感染して、いろんな実験もしました。もっと古典的なものもたくさん読んで刺激を受けたいと思いますが、なかなか思い切って時間をかけることができません。それでも、最近のいろいろな本の中から二次的にでも古典の考え方に触れることはできます。すると、私自身が考えていたことのほとんどは過去にすでに誰かが考えていたことだということが分かります。というか、ほとんどの場合は、どこかで読んで知らぬまに自分が勝手に考えたことと思い込んでいただけなのかもしれません。とにかく、おもしろいと思うから本を読んでみる、話を聞いて見る。この人はおもしろいと感じたら、その人の全著作を通して読んでみる。そして、その人の考え方に染まっていく。そうやって、どんどん学ぶことが楽しくなっていきます。上にあげた先生たちは、皆楽しんで勉強していると思います。そして、楽しそうにそのことを伝えようとしています。それが、実は、先生と呼ばれる存在にとって最も大切なことなのでしょう。私自身、25年以上先生と呼ばれてきて、何度かは先生のおかげで…と言ってもらった経験があります。中3の理科の授業で、当時通っていた公開講座で聞いてきた話を毎回楽しそうに語っていました。聞いている生徒たちはもう一つピンときていないように思っていたのですが、最後の合格体験記に、先生のおかげで理科のおもしろさを知った、と書いてくれました。とてもうれしかった経験の一つです。私が書いている校通信を楽しみに読んでくれていて、卒業してからも6年間ずっと取りに来てくれた生徒もいます(現役で東大に合格しました!)。自分がだれかに影響できるというのは、とてもやりがいのある仕事です。同時に、一つ一つの言動に注意しなければいけないとも感じます。やはり、合格体験記に書いてもらったことですが、練習で受けた学校に合格したとき、私が本人以上に喜んでしまって、でもそれが本人の自信につながって本番もうまく行ったという話もありました。その生徒は、将来塾の先生になりたいと書いてくれていました。うれしかった。結局は大手の保険会社に勤めることになりましたが。皆さんも、ちょっと先生に対する見方を変えてみて、うんと素直に、刺激を受けてみてはいかがですか。学ぶことが楽しくなるはずです。自分から、前のめりで、楽しんで勉強をする、実はこうなることがやる気力UPの最も有力な方法なのです。そうだからこそ、私たちは常に「学ぶことは楽しい」ということを皆さんに伝えていかないといけないと考えています。

最 後 に               

 さあ、勉強の仕方のヒントはありましたでしょうか。まずは、ここに書かれたことを参考にして、自分なりの勉強スタイルを確立していってください。そんな楽な方法で成果をあげることはできませんが、あまり効率の悪い勉強法では時間ばかりかかって成果が上がらないということにもなりかねません。自分の勉強法にもし自信が持てないようなら相談してくださいね。

 最終的に一番大切なのは、「目標を持つ。目標に向かって努力する。」ということです。まだはっきりと目標が定められていない人がいるのなら、まずは現段階で自分が行きたいなと思う学校を見つけましょう。それはいまの自分で行ける学校ではありません。あくまでも、行きたいと思う学校、あこがれの学校を見つけてください。そして、その学校に合格するには、どれだけの力が必要になるのか、自分の現在の位置はどの辺りか、それを客観的なデータをもとに判断していきましょう。そうすることで、今後自分が何に取り組んでいけばよいのか、どういう勉強の仕方をしていけばよいのかということも見えてくるはずです。

 定期テストの勉強も受験勉強も基本は同じです。そして、勉強というのは一生涯ついてくるものです。その都度、目標が変わればその内容も方法も変わるでしょうが、自分なりに身につけた勉強スタイル自体はずっと残っていくものと思います。それをいま、小中学生の間に、身につけて行ってほしいものと思います。


ここに書き上げた勉強法は、「勉強法が変わる本 心理学からのアドバイス」市川伸一著(岩波ジュニア新書)、「脳を活かす勉強法」茂木健一郎著(PHP)、「勉強のチカラ!」、「読むチカラ」(宝島社)、「子どもの集中力を育てる」(文藝春秋)、「学ぶ力を伸ばす本」(大和書房)、「やる気も成績も必ず上がる家庭勉強法」(筑摩書房)以上、齋藤孝著(いったい何冊本を書くのだろう? 私もいったい何冊付き合うのだろう?)、「受験脳の作り方」池谷裕二著(新潮文庫)などを参考に、私なりの勉強方法を紹介したものです。不明瞭な点があれば遠慮なく質問してください。本を読んでみたいという方がいらっしゃったら遠慮なくおっしゃってください。(市川先生の本だけは図書館で借りました。)この数年間で書きためたものをまとめました。同じ記述が何度も出てくるかもしれません。それは、それが大切なことだからです。何度も出合っていると自然に頭に入り、そのうち、体が覚えます。しっくりいくものが自分の中に残っていきます。小中学生の間により良い自分なりの勉強法を身につけておくと強いです。何らかの形で皆さんのお役に立てれば幸いです。

保護者向け シミセンの勉強法入門番外編

やる気スイッチの入れ方             

①ほめる
 子どもががんばったとき、努力したこと自体をしっかりほめてあげてください。努力ができる子に育ちます。テストで良い結果が出たときは感情を込めてほめてあげてください。全体としては良くなくても良いところを見つけて一度はほめてあげてください。大人でもほめられるとうれしいものです。うれしく思えばまた次もがんばろうと思えるはずです。ただ何でもかんでもほめすぎると効果が薄れます。上手に、ここぞというときに、ほめてあげたいものです。(私自身の経験では、ほめるとすぐ次のテストで気を抜く生徒が結構います。そういう場合は、常に次に向けての課題を提示するようにしていきます。)

②しかる
 しかり方によっては上手にやる気を引き出すこともできると思います。なるべく冷静に何が良くなかったのかを伝えてあげる。その上で、次に向けてどう取り組めばよいかをいっしょに考えてあげる。自分の親もいろいろ考えてくれている、と思えると、自分もがんばらなければと思うようになってくれることでしょう。

③ごほうび
 ものでつるというのはどうかと思いますが、次のテストで何点以上取ったら何かを買ってあげるというのは実は結構効果があります。しかし、それはうまく利用しないとかえってマイナスになることもあるので気をつけたいものです。以前、中間テストで5教科400点以上取ったらケータイを買ってあげると言われて、初めて本気でがんばって100点以上点数を上げた生徒がいました。本当にケータイを買ってもらって、次の期末テストの結果は…でした。ゲームソフトなども気をつけたほうが良いでしょう。「100点取ったらおすしを食べに行こう!」くらいが一番いいのかもしれません。きっとそれでもちょっとはやる気になるでしょう。何が良いかは、子どもたちと相談してみてください。

④プレッシャーをかける
 「次のテストが悪かったら塾はやめさす。」できればこれは使わないでいただきたい方法ですが、塾が大好きな子どもにとっては、これも結構効果はあります。「次のテストが悪ければ、ゲームは1ヶ月取り上げる。」これも、効果がありそうです。こわいお父さんが定着しているご家庭なら、次はお父さんから話をしてもらう…というだけでも効果があるかもしれません。

⑤無理やり一度高得点をとらす
 中学生になるとちょっと難しいですが、一度親がかなりついて見てあげて、テストで確実に良い点数を取らせる。自分もやればできるという気になれたら、その後のがんばりもききます。できれば、担任といっしょになって、こういう方法をとるとさらに効果が上がると思います。ご相談下さい。

⑥何のために勉強するのかを伝える
 子どもたちにはなかなか今何のために勉強しているのかは見えてこないものです。受験生は、目前にせまった入試があるので、それに合格するためという目的がはっきりしていますが、その他の学年では目標が見つからないまま、なんとなくやる気がなくなってくるということも多々あります。できれば、保護者の皆さんが、社会に出て生きていくとはこういうことである。こんなふうになるためには、こんな職業に就くには、どんな学校を出て、どういう勉強をする必要があるのか、ということを伝えていただけるとありがたいです。もちろん、私たちも折に触れてそういう話もしていきます。

⑦「すごい!」と思える体験
 以前テレビで「リーマン予想」に人生を捧げてしまった数学者たちの話を見ました。くわしい内容は私も良く分かりませんが、素数がどういう頻度で現れるのか、その研究が、実は素粒子や宇宙の研究につながっていく、そんなワクワクする話でした。そういうものにいかにたくさん触れる機会を持つか、これはとても大切なことと思います。山の頂上から見下ろす景色でも良いでしょう。天体観察会で見る満天の星も良いでしょう。科学館であっと驚く実験を見るのも良いでしょう。1500年前の建築物の遺跡も良いでしょう。化石を掘り当てるなんていうのも良いでしょう。とにかく、いろんな感動体験をすることで、そこから前のめりに勉強するおもしろさを知ることができれば一番強いと思います。私たちも授業の中で、ぜひそんな感動する話をしていきたいと思います。

シミセンの理科勉強法            

 「好きこそ物の上手なれ!」どの教科でも同じですが、好きになる⇒得意になる⇒より好きになる・・・という良いスパイラルに入っていけば必ずどの教科でも得意になって行きます。私は、この循環の最初は「好きになる」ことだと思っています。しかし、残念なことに、いろいろな調査結果から、学年が上がるほど「理科嫌い」が増えているという報告が聞こえてきます。学校でもゆっくり実験をする時間がないようなのです。そこで、ここでは家庭でできる「理科好き」を育てるための方法を提案したいと思います。

 理科はおもしろい。へー、そんなことがあるのか。なるほど、そうだったのか。…こんな思いになったのは私もこうして理科の授業を受け持つようになってからのことです。もちろん理科は好きな教科の1つでしたが、そんなにおもしろいとは感じていなかったと思います。高校ではもう、物理しか勉強しなかった。化学、生物、地学なんかは全然おもしろくなかった…といった感じです。でも、大人になってもう一度小中学校の理科を勉強し直してみると、あたりまえのことですが、理解がしやすく、生き物や天気、石ころにまで目を向けられるようになりました。それでいろいろと本を読んだりしていると、もう理科はおもしろい。へー、そんなことがあるのか。なるほど、そうだったのか、…の連続です。この思いを生徒のみなさんに何とか伝えたいものと日々思っています。しかしやはりお子さまと一緒にいる時間が長いのは保護者の皆様です。そこで、お願いがあります。皆様にも理科に興味を持っていただきたいのです。無理矢理好きになれと言われても無理でしょう。これは子供も同じ。いろんなことを見聞きする中で、自然に興味を持ち、おもしろいと感じていただけたら、その思いをお子様と分かち合っていただきたいのです。それでは、そのための具体的なアドバイスを5つほどさせていただきます。(どちらかというと小学生向けになってしまいますが。)

①お出かけ不思議発見 
 そんなに遠出の必要はありません。近くの川や野原でお子様と遊んでみてください。教科書にあった生き物が発見できるでしょう。見たことのないものがあったら家に帰って百科事典ででも調べてみましょう。一緒に調べることが大切です。雲の形はどうでしょう。天気予報を出し合ってみましょう。川原の様子はどうでしょう。たまにはキャッチボールもしてみましょう。ボールはどんなふうに飛びますか? 電車に乗って出かける機会があったら、乗っている自分にはたらく力も考えてみましょう。発車するときと停車するときでどう違う? 夜に散歩をすることがあったら、空を見上げてみましょう。星は、月はどんな形? どんな動き? 私についてくるように感じるのはなぜ? できれば、博物館や科学館・プラネタリウム、植物園や動物園・水族館にも出かけてみてください。ふだん見られないものがきっと見られます。

②家事で不思議発見 
 台所は不思議がいっぱい。ジャガイモを切ったとき包丁につく白い粉は? うがい薬(ヨウ素液)を1滴つけると・・・。なすびの煮汁にお酢を一滴、何色になるでしょう。赤キャベツ、ぶどうの皮などでもやってみましょう。キンカン(虫刺されの)や石灰水(乾燥剤を水に溶かす)も一滴落としてみましょう。お湯はどんな風に沸騰するでしょう。ゆで卵と温泉卵の違いは? 魚の卵と、ニワトリの卵の違いは? 次は洗濯。どんなときによく乾くでしょう。どういう干し方がいいですか。掃除。ほこりが上がると光の筋がきれいに見えます。お風呂の水を抜くとどんなふうに流れ出て行くでしょう。玄関の打ち水。涼しく感じるのはなぜ? 虹もできるかもしれません。そういえば最近、どういう訳か虹があまり見られなくなりました。

③テレビで不思議発見 
 テレビは不思議の宝庫です。百聞は一見にしかず。NHK教育の「サイエンスゼロ」は少し専門的ですが、そのときどきで最先端の話題が登場します。理系ばかりではありませんが。他にもNHKでネイチャーもの・実験ものはいろいろありますね。民放では「世界一受けたい授業」でんじろう先生の授業は本当に受けてみたいですね。ダラダラとテレビを見るのは良くないですが、「これは」と思うものがあれば、ぜひいっしょに見てあげてください。

④本から不思議発見 
 「本を読みなさい」ではなく、保護者の皆様が本を読んで「こんなおもしろいことが書いてあるよ」と言ってあげてください。雑誌、新聞、百科事典、写真集、パソコンでも何でもいいと思います。一緒に調べたり、一緒に見て感動を分かち合ってください。それでは私の独断で、最近(ずいぶん前に読んだものですが、なかなか良いセレクトなのでこのまま残しておきます)読んだものの中からおすすめの本を…
○「渋滞学」西成活裕著(新潮選書) 車や人の渋滞はどうやってできるのか。小中学校で学ぶ理科からは少し離れているようですが、自然科学のものの考え方がよくわかります。
○「生物と無生物のあいだ」福岡伸一著(講談社現代新書) 生物の研究がどういうふうに進んでいくのかが手に取るようにわかります。野口英世のことも始めて知りました(一般に言われていることとの差異を)。
○「進化しすぎた脳」池谷裕二著(講談社ブルーバックス) 中高生と語る「大脳生理学」の最前線というのがサブタイトルです。「へえ、そんなことがあるのか」とおどろきワクワクの連続です。
○「生物をめぐる4つの「なぜ」」長谷川眞理子著(集英社新書) 本書に登場する渡り鳥の話が、灘中学の入試問題のテーマに選ばれています。中学高校の先生方もいろいろ本を読んで、入試問題のテーマを探すのでしょうね。
○「不思議の博物誌」河合雅雄編(中公新書) 兵庫県立人と自然の博物館(ひとはく)のメンバーが、植物・動物・化石などについて語っています。三田にある博物館です。一度訪れてみてください。
○「一番大事なこと」養老孟司著(集英社新書) 養老先生の環境問題入門です。いつものことながら、ちょっとふつうと視点が違うのでおもしろいです。国語の問題にも登場しています。環境問題では「ほんとうの環境問題」池田清彦、養老孟司共著(新潮社)という本も出ています。池田先生の意見は結構過激なので、鵜呑みにするわけにもいかないのですが、ペットボトルの分別収集は意味がないなんていうのはとっても考えさせられます。「もったいない」の精神だけはちゃんと持ち続けたいものです。
小学5,6年以上なら、ちょっとがんばれば読めそうな本ばかりです。実際に中学入試にも登場するわけですから。ぜひ、図書館や書店で見つけていっしょに読んでみてください。 

⑤子供の疑問に不思議発見 
 子供はすぐ「なぜ」と問いかけます。できればその気持ちを失わないでほしい。その好奇心の芽生えをつみ取らないようにしたい。いつもそうは思っているのですが…私自身、反省しなければならないことも多いです。お子様の疑問につきあってみてください。一緒に調べてあげてください。きっと答えの見つからないものも多いことと思います。でも、そうやって一緒に調べたり、考えたりすることが最高の教育なのではないでしょうか。「勉強しなさい」の一言より絶対効果があると思います。特に性に関する問題は避けて通らないでください。5年生に「ヒトの誕生」の単元があります。中3の最初でも生殖や遺伝を扱います。 

 最後に、「理科好きになるための方法」(その1)実際に見る (その2)名前を覚える この2点に気をつけて、「自然」とかかわってみてください。空を見上げると話がはずみます。昼も夜も。小さな生き物がいとおしくなります。雑草なんていう名の草はないのです。私たちも授業でできる限り「理科ってこんなに楽しいんだよ」ということを伝えていきたいと思っています。保護者の皆様にも理科はおもしろい。へー、そんなことがあるのか。なるほど、そうだったのか。…と、思っていただけたら、きっとお子様たちも理科が好きになって行かれるのではないでしょうか。そんなふうにして、理科好きが増えていけばうれしいと思います。「好きこそものの上手なれ!」。きっと得意にもなって行かれるでしょう。

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