見出し画像

続・夢十夜(二)

一 紙飛行機


たまたま幼稚園の頃うちの子どもたちと一緒だったT君を見つける。「よく見つけてくれましたね」と母親。「とてもかわいい子だったのですぐにわかりましたよ。」僕たちはその子の家に来て一緒に遊んでいる。ずいぶん長居をしてしまった。「そろそろおいとましようか」靴下を脱いでいたのでそれを探す。箱に入っているのを見つけて娘に渡す。妻は脱いでいない。僕は自分の靴下を履く。妻と娘は先に出ている。外では他の子どもたちも一緒になって遊んでいる。Tの母親が色紙で紙飛行機を作って飛ばす。僕はそれを拾い、頭を折り返したり、翼を少し曲げ上げたりして加工する。ふわふわと飛んでいく。
 

二 寮生大会


僕と妻は学生寮にしばらく滞在している。これから寮生大会が開かれようとしている。僕はパジャマから着替えようとしている。しかし、棚のどこを探しても自分の着るものがない。時間がない。あせる。横には高校のK先生や他の人たちがいる。しかし出かけようとする様子がない。「参加しないのですか?」と聞いても無反応だ。妻が、ネットで大会が定足数にあと少し足りていないという情報を入手する。早く行かなければとまたあせる。僕のいるフロアの人々はのんきにしている。女性は化粧もしていない。学生寮で副寮長をしていたMさんは立ち話をしている。僕は、「みんな参加しないのですか?」と聞く。無反応。「それは反対の意思を表明しているのですか?」と重ねて聞く。みんなニヤニヤしているだけだ。議論はした方がいい。どうしてみんなこんなに無関心になってしまったんだろうか。モンモンとしている。
 

三 夏の課題


夏休みの課題で提出した美術の作品を皆返してもらっている。僕のものもあるはずだから探してみるが見つからない。優秀な作品は廊下の壁にはりだされている。ひょっとしてその中にあるのかと思って見て回る。しかし僕の作品はない。いったい僕の作品はどこに行ってしまったのだろうか。わりと良く描けていたのに。
 

四 PK


サッカーワールドカップに出場した選手のうち2人が僕の近くでシュート直前のシーンを再現している。それを見ているうちに僕も久しぶりにボールを蹴ってみたいと思う。ゴールキーパーに入ってもらい、PKの要領でボールを置いて蹴ろうとする。ボールに近づき左足をボールの横に踏み込む。右足を後ろに振り上げて思いっきり蹴ろうとするが、どうしても足を振り下ろすことができない。ゴールが決まるかどうかなどはどうでもよい。とにかく思いっきり蹴ってみたいだけだ。もう一度試してみる。がやっぱり蹴ることができない。
 

五 盗撮


3組限定レストランで妻と2人、ランチが出てくるのを待っている。大画面でテレビが映し出されている。何かの情報番組だろうか。そこに突然妻の顔が映し出される。今現在の妻の顔である。この部屋がどこかから撮影されているのか。僕の心臓がばくばくと鳴り始める。
 

六 饒舌なI君


Iくんとエレベーターに乗っている。1階に下りたいのだが上にあがっていく。途中階から男性2人が乗り込んでくる。その人が1階を押すのだがまた上に行ってしまう。「エレベーターがおかしくなったかもしれないですね」と電話しようとしている。長くなってくるので世間話が始まる。「受験大変やな」と男性。「もう合格してるけど、明日もう一つ頑張るんやな」と僕はI君に話しかける。そのうちやっと1階に下りてきた。「先生、そうしたら明日5時にここでお願いします」「ごめん、入試当日は送っていくことはできないねん。お母さんは仕事か?」「はい」「そしたら、一人でいかなあかんなあ。大丈夫か?」「はい」寡黙な生徒である。駅に向かって二人で歩いている。僕はI君はもうR中学に進学するものと思いこんでいる。「先生、僕お笑いが好きで、・・・中学もいいかなと思ってるんです」「そうやったん」「僕、吉本の動画とかもいっぱい持ってます」「へー、そうなん」初めて話が弾む。「先生、F高校の文化祭に行ったことがあって、そこの生徒2人でやってた漫才がむっちゃおもしろかってん。アップタウンっていうんやけど、ダウンタウンよりよっぽどおもろいねん」「へー、どんなネタですか?」「まあ、学校のなかのいろんなあるあるとかかなあ」「内輪受けするだけのネタではダメですよね。普遍的でないと」なんかI君がとても饒舌である。I君にもちゃんと得意分野があったんだ。なんだか僕もうれしくなってくる。
 

七 うなぎの寝床


僕は父が生まれた家にいる。僕も小さい頃は住んでいた。うなぎの寝床と言われるように間口が狭く、奥行きが長くなっている。途中には狭い庭がある。そのさらに奥にはもう一つ部屋があったはずだが、今は朽ち果てている。ここをなんとかリフォームして住めないかと考えている。ふと表通りに目をやると、向かい側には僕の今の職場がある。教室には見慣れた顔がいくつもある。こちらに気付かれるのではないかと思って、ふと身を隠す。
 

八 ふたつの本屋


出勤前、反対から地下鉄に乗ってきたため、いつもと違う出口から出た。すると、見知らぬ本屋があった。期待して入ってみる。しかし、新刊ばかり並んでいるが、僕が興味持てるような本は一向に見つからない。ふと見ると、卒業生のI君が店長をしていた。店の外に出て少し話をする。「ベストセラーは何冊か置いておいたらいいが、その間に自分が売りたい、読んでほしいと思う本を何冊か忍ばせておくといいと思うよ。そういうこだわりのある店の方が結果的に長く続くと思う」と僕は言う。「そうしてみます。」I君と別れて職場に向かっているとまた別の本屋を見つけた。6年も通っていたのに、全然気付かなかった。中に入ってすぐの棚には、古い岩波新書が雑然と並んでいる。僕はこの中から掘り出し物がないか探す。さらに上の棚には、みすずの本ばかりやはり雑然と置かれている。一通り見る。しかしそれ以降は、興味のある棚は1つもなかった。戻ってもう一度先ほどの棚を見ようと思ったら、そこはすっかり空になっていた。遅くなってしたまったので急いで職場に向かう。大きな交差点を走って渡る。制服を着た高校生たちが大勢いる。絡まれたら嫌だななどと思いながら、その横を走って通り抜ける。もう職場の入っているビルがあってもよさそうな距離なのに、僕の職場は見つからない。
 

九 源氏物語の研究をしている男性


お祭りでもしているのだろうか、外はにぎやかだ。僕たちは誰かの家で休ませてもらっている。妻は僕に、もうお腹空いたんじゃない、とたずねる。僕は、あいまいな返事をする。11時半くらいだから早めにお昼にしようというのか。僕はてっきり外に食べに出るのかと思ったが、屋台とかで買ってきて食べようと思っているようだ。食卓の上にはどんとカニがおいてある。見知らぬ少女がカニを食べている。台所では大きな鍋にお湯を沸かしている。僕は手を洗おうと洗面所を探す。引き戸を開けると誰か中年の男性が着替えている。「失礼しました。」「あぁ、横には源氏物語の研究をしている人が住んでいるの。」少女が教えてくれる。別の男性が、お鍋が沸騰していたからと火を止めていた。よく見ると中の液体はどろっとしている。あんかけにするつもりだったのだろうか。僕はお風呂場らしきところを見つけて、扉を開く。狭すぎるユニットバス。さらにはタオルや着替えなど、ものが多すぎる。あぁ、こんな生活をしている人もいるのだと思う。ふと目を外に向けると、源氏物語の研究をしているという男性がせっけんで手を洗っている。あっ、そこで洗えたのかと思う。妻はなかなか帰って来ない。
 

十 ストリーキング


僕は海岸の近くにある旅館の温泉に入っている。大きな窓の外はもうすぐ砂浜だ。知り合いが海の方で何者かに襲われている。僕はすぐに窓から飛び出して助けに向かう。たくさんの海水浴の人々がいる。僕は自分が素っ裸であることに気付く。これでは自分が捕まると思って、両手で股間を隠す。急いで旅館に戻る。大勢の制服を着た生徒たちが歩いてくる。知り合いに見つかったらどうしようと思って身を隠す。旅館の近くにもどるとさっきまで全開だった窓が閉まり、シャッターまで下りている。どこかから入れないかと入り口を探す。ふと次の瞬間には温泉の中に入っている。良かった。


あとがき


 最近はわりと現実的な夢を見ることが多く、なかなか記録することができないでいた。もっと、エレベーターが横に動き出すとか、電車が階段を上って行くとか、地下鉄のホームが動き出すとか、そういうおもしろいのが見たい。つまらない人間になってしまったのか、はたまた精神的に安定しているということか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?