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【エッセイ】社会貢献したい学生さんと社会起業家を国際協力の全体像の中に位置づける

国際協力に興味のある学生さんたちの就活支援をはじめて、1年ほどになる。その中で、昨今というわけでもないだろうが、わたしが直接、個別面談した100余名の言葉の中から気になったキーワードをいくつかひろいあげてみた。

1.社会貢献がしたい

わたしは、1992年に学部卒で建設コンサルタント会社に就職した。1970年生まれのわたしは、新人類の少し下の団塊ジュニアの世代にあたる。

この当時、大阪外国語などというバリバリの文系でアラビア語、しかも中世の歴史書や地理書旅行記に興味があったわたしは、例えば外交官になりたいとか、ジャーナリストになりたいとか歴史家あるいは研究者になりたいとは思っていたが、外大生に人気のある商社マンとかメーカーの海外営業マンということにはてんで興味がなかった。

いろいろ就活も失敗して、紆余曲折があったのち、かろうじて政府開発援助(ODA)をしている会社に決まったとき、実は、税金でおこなわれている政府の仕事をしてお金をもらっていることに正直ほっとしていた。

むろん、当時から日本国内にも多くの国際協力NGOが活躍していた。金もうけでなく、開発途上国で現地の人のために働きたいと考えたときに、おそらく熱心な学生ほど、国際協力NGOで働きたいと考えるのは過去も現在もそうであろう。

しかし、これは時代背景を考えていただきたいのであるが、今から30年前は、おそらく男子学生の大多数にとっては、「NGOで働くということは選択肢になかった」。

なぜなら、当時から、国内の国際協力NGOは財政基盤がぜい弱で、専任の有給スタッフを抱えている団体は、大手を除いてはほとんどなかったこと。

仮に有給スタッフになったとしても、いわゆる商社やメーカーなど一般の民間企業の水準と比べようもなく給料が少なかったこと。

むろん、給料だけではないが、中年層になるにつれて、特に男子職員の離職率が高かったということが当時からいわれていたからである。

ところが、である。確かにNGOの離職率や低賃金であることは、いまでも変わっていない。しかし、それでもNGOやNPOで働きたいという若い仲間が増えているのはどういうことか。

それは、「社会貢献」がしたいということを正々堂々と語れる世の中になったということ。そして、逆に「お金もうけがしたい」と積極的に主張することが格好悪いと思われるようになったことが原因だろう。

でも意地悪な人は、「それは建前に過ぎない。社会貢献するだけで食べていけるのか」という言葉を投げかけるであろう。いや、にこにこ笑って聞いていながら、心の中で「そんなことできるか。きれいごと言って」と思っているのかもしれない。

ここでは「社会貢献で食えるのかどうか」について議論を深めるつもりはない。ただ、事実として以前にも増して、それを口に出していう人が増えてきているのではないか。

おそらく昔の人も思っていなかったわけではない。しかし、なんとなく気恥ずかしさや照れがあったと思われる。今では、堂々と胸を張って「社会貢献」を口にすることができるようになっていることを素直に喜びたい。

2.アフリカ・ラブ

次によく聞くキーワードが、「アフリカ」である。たまたまわたしのまわりの感度のいい若者がアフリカ・ラブなのだろうか。アフリカと言っても、抽象的なものではなくて、具体的な国名がでてくる。わたしは、どこそこの国で働きたいなどというものである。

開発途上国としては、東アジア、東南アジア、南アジア、中近東、中南米、南アメリカ、実はどこでもいいのであるが、わたしが出会った学生たちの一番人気は、ダントツにアフリカである。

推測であるが、アフリカについての情報が以前に比べて格段に増えたということはなくて、おそらくSNSなどの発達で、個人によるアフリカの情報発信が格段に増えたということだと思う。

実は、若い学生に影響がある国際協力をやっている20代、30代のインフルエンサーのフィールドは、ほぼほぼアフリカである。

あとやっぱりアフリカは21世紀の最後のフロンティアということがいえるであろう。あるいは、いままで東南アジアや南アジアをバックパックしてきた人たちの眼がアフリカに向いたという可能性もあるかもしれない。

3.社会起業家による開発途上国の社会課題の解決

さて、「社会貢献」×「アフリカ」となると次に来るのは、ずばり「社会起業家」である。わたしの海外経験からいうとアフリカ大陸は、エジプト(3件のプロジェクトで足掛け5年ほど)、アラブ首長国連邦のドバイ(2年ほど)、エリトリア(3年)、西アフリカのブルキナファソ(2週間ほど)で、開発コンサルタントの業務経験として、それほど多いほどではない。

ただし、会社組織として多くのJICA(国際協力機構)などのアフリカ案件を動かしていたので、実際にアフリカで働いている開発コンサルタントの仲間から多くの話を聞いてきた。

ただ、開発援助とのからみでいうと、おそらく今の人たちは、「アフリカは第二次世界大戦後、膨大な開発援助(国際協力)がおこなわれてきたのにもかかわらず、うまくいっていない。だから国際機関や国際協力NGOに任せておくだけではだめで、民間人も社会貢献ビジネスとしてアフリカに関わらなければならない」という論理ができつつあるのではないか。

これは、2000年以降、顕著になったBOP(Bottom of PyramidあるいはBase of Pyramid)の流れて、アフリカが21世紀における世界最大の市場になることを見通して、民間投資を拡大しようとする巨大資本の流れとも連動しているかもしれない。

巨大資本といっても、以前のように欧米など先進国の企業ではなく、今日では中国やアジアの巨大民間資本がアジアに乗り出しているのである。東アジア、東南アジア、南アジア、われわれ日本人が知らないだけで、多くの資本家がいる。

ただし、若い人が「社会起業家」に着目するのは、それら巨大資本の経済至上主義によるアフリカなどの開発介入をよしと思っていないということが根底のあると思われる。

もっとも、アフリカの農村部では、小さな資本でスタートアップできる。現地社会へのインパクトが目にみえる形で分かりやすいというところも魅力なのであろう。

実はアジアでは、かなりボトムアップがはかられており、現地の人たちだけでも結構がんばってやっているので、外国人として日本人が現地に入って何かをやった場合のインパクトがみえにくいというところもあるだろう。

ともあれ、アジアもアフリカも、場所が違えば、全然、社会状況が違うので、ひとつのところだけの経験で「あるべき開発うんぬん」を語ることはナンセンスである。

4.まとめていうと

ここまで、この1年間、国際協力に関心のある大学生や大学院生と就活面談を続けてきて気になった言葉を3つとりあげて、その意味するところを検討してきた。わたしの文章は基本的にエッセイが多く、これなども学術論文や外部の記事に根拠を求めているわけではない。

しかし、記事を引用していないとはいえ、基本的にわたしの見聞情報に基づいているので、一方的な妄想ではないことはご了承願いたい。

さて、まとめていうと、おそらく「社会貢献×アフリカ×社会起業家」という三点セットはこれからも当分、国際協力業界のトレンドであると思う。真ん中のアフリカが、アジアや中南米とか別の地域や国名に代わることはあっても「社会貢献」と「社会起業家」人気は不動であろう。

ちなみに、これは国際協力の分野だけではなく、日本国内の地域づくりの現場でも「社会貢献」と「社会起業家」に熱い視線が注がれている。実際、わたしがフェイスブックなどで交流している大学生や大学院生も、くちぐちにこれらの言葉を口にする。

つまり、いまのZ世代あるいは20代から30代の方々に共通のキーワードということもできよう。

5.旧来のODAとNGOでの業務経験からみると

ところで、わたし自身は、1992年から2008年まで政府開発援助(ODA)を実施する開発コンサルタント会社で、事務系コンサルタントあるいは社会開発コンサルタントとして働いてきた。

その業務内容は、技術協力といわれる開発調査、無償資金協力や円借款による社会基盤整備(土木工事)、技術協力プロジェクト、JICAの国内研修など、日本政府、特にJICAがおこなっている援助スキーム(援助のやり方)のほとんどを実際に経験してきた。

これらの業務の中で、相手国政府はもとより、世界銀行やアジア開発銀行やFAO、EUなど国際機関や他国のドナーなどとも仕事をしてきた。開発途上国で活躍している国際NGO(Internatioal NGO)や、ローカルNGO(Local NGO、開発途上国に拠点をおく現地の人によるNGO)とも情報交換をしている。

2013年から2015年にかけて籍をおかせていただいた国際協力NGOでは、アジアの17ヵ国から、現地で実際に地域のために活動しているローカルNGOや行政関係者を、毎年5,6ヵ国で12、13名を日本の愛知県に招いて秋口に5週間、一部屋3名で合宿しながら参加型のリーダーシップをおこなっていた。

わたしは、海外研修担当として、このリーダーシップ研修のファシリテーターや、元研修生を訪ねて、スリランカ、インド、フィリピンのローカルNGOとの協働事業の管理やリユニオンセミナー(その国の元研修生による同窓会セミナー)の打合せに現地に行くこともあった。

別のところですでに書いているが、16年間、政府開発援助(ODA)の世界で働いてきたものにとっては、このローカルNGOの世界は、その後の生き方を変えるほどの衝撃でもあった。

ここまで書いてきたように、わたしは従来のODAの世界とNGOの世界を語るにたる経験と人脈を持っている。人脈といういい方は嫌いであるが、いままで一緒に現場でがんばってきた仲間たちとは今でも連絡がとれる状態にあるので、自分がよくわからないことについては、その道の専門家にコンタクトすればよい。

6.国際協力の一部としての社会起業家

自分としては、政府開発援助や旧来の国際協力NGOの世界に興味がある学生さんが多いかと思って、就活支援をはじめたのであるが、実は、みなさんの関心は、そこになかったというのが、この1年をふりかえってわかったことである。

確かに、わたし自身は、社会起業家ではない。しかし、政府開発援助も国際協力NGOも「社会貢献」の要素が高い働き方である。アフリカ地域については、さいわいアフリカをがっつりやっている仲間も多い。

そんなかんなで、結論から言えば、ニュータイプであるあなたの夢や悩みに対してがっつりと対応することができるといえる。

もし、国際協力キャリアに疑問や悩みがあるようであれば、実際に現場で働いてきた人に聞いてほしい。それは、外からみるのと内部からみるのとでは、情報量や中身の深さにおいて雲泥の差があるからである。

国際共創塾では、さまざまなキャリア支援メニューを用意している。

あなたとお話ができることを楽しみにしています。

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