基準値から動作について統合と解釈する【健常者の数値と基本動作】
上記のような疑問を持ったことはありませんか?
統合と解釈を行う上で大事なことが基準値。理学療法評価を実施した後で,その数値が正常なのか異常なのか,目標とする動作やADLを遂行する上で十分なのか不十分なのかを考えることが統合と解釈では必要となります。
ところが,例えば基礎運動学や徒手筋力検査,または評価学の教科書には,そのような数値の記載がなく,セラピストや学生が臨床実習で統合と解釈を行う場合に困る場面に多く出会します。
理学療法評価で実施した機能評価と動作観察を統合と解釈するためには,目標となる動作がどの程度の機能レベルで遂行可能かを考える必要があります。例えば起立に必要な膝関節の屈曲可動域は110度前後ですが,110度という目標値を知らなければ,ゴール設定はできません。同じように筋力についても目標値を知る必要がありますが,MMTでは表現できないことが多く,にも関わらずMMT5を単に目指すということが良く行われています。
そこで本記事では,筋力の基準値について,歩行や歩行速度,起立検査やMMTとの関連についてまとめていきます。参考文献も記載していますので,原本確認も自分でできるようにしています。また,引用した数も多く記載しており,その上で数値の解釈についても説明しています。実臨床にも,実習にも,統合と解釈や考察を行う上でもとても役に立つと思います。力作ですので,是非購入して読んで頂きたいです🙏
筋力の基準値 健常者の平均値
1.握力の平均値
性別と年齢によって平均値が示されています。
例えば,70-74歳の女性であれば23.91kg(2021年平均),24.03kg(2020年平均)と示されています。握力はサルコペニアやフレイルにも用いられる指標ですが,平均値を知ることで対象者の数値を適切に判断できるようになります。
2.握力とADL
ADLについて良く見かける数値は,
・カットオフ値:男性27.8kg、⼥性18.4kg
・ペットボトルの蓋開に必要な握力:10.5kg
です。
いわゆるカットオフ値はサルコペニアやフレイルの基準値となっている値になりますので理解しやすいと思います。ペットボトルについてはホームページ上ですが参考になると思います。握力は全身の筋力との関連も述べられていることは良く知られていますが,臨床現場で定期的に評価している施設は少ないようです。脳卒中症例の麻痺側であっても測定すべきと個人的には考えていますので(5kg未満は精度はありません),ぜひ評価に加えて頂きたいと思います。
3.一般健常人の筋力
一般健常人の筋力はどういった評価によって表現されているでしょうか?よく見かけるのは,等尺性筋力kgf,体重比kgf/kg,トルク/体重比Nm/kgでしょう。これらは研究領域において数値化しやすく,またハンドヘルドダイナモメーター(HDD)やバイオデクスなどのリハビリテーション室や大学学部や院の研究室で所有していることが多い機器を使いやすいことから,多くの研究論文で使用されている値になります。また文献でよく調べられている筋肉は膝伸展筋力である大腿四頭筋がほとんどです。
以下に基準値としてまとめてある数値を参考文献とともに紹介します。
1998年と2004年の理学療法ジャーナルで下肢筋力についてまとめられていた筋力についてです。そのほとんどが等尺性筋力kgf,体重比kgf/kg,トルク/体重比Nm/kgで記載されています。MMTで表現されている0から5はどのように考えれば良いでしょうか?
4.筋力をMMTに換算すると
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