「陰キャ」という言葉の変化について考えた
「陰キャ」という言葉について知っていますか。この記事を読んでいるということはご存じではないかと思いますが、調べてみるとこのように書かれていました。
学生の頃に一度は目にしたことのあるような、クラスに一人はいる教室の隅で本を読んでいて話しかけづらく、席替えや修学旅行の班決めで荷物扱いされるような子です。僕もそんな人間だったので正直こんなことを書くのはあまり気分は良くありませんが。
今回はそんな「陰キャ」という言葉について最近変化が起こっていると感じたので文章に、まとめてみることにしました。
「陰キャ」という概念の誕生について推測する
言葉には当然、その名前を名付けた人間がいます。
ここである考え方を紹介したいのですが、例えば犬というものに初めて名前を付けた人はあらかじめ存在していた特定の生物の集団に「犬」と名前を付けたのでしょうか?ソシュールという言語学者は、そうではなく「犬」という言葉が誕生することで犬の概念が生まれたという考え方を唱えました。私たちは世界を言語によって区切ることで概念を生み出してきたのです。
これを「陰キャ」という言葉に当てはめて考えると、「陰キャ」という言葉ができる前は「陰キャ」という概念はまだ存在していなかったということになります。誰かが言い始めて、初めて「陰キャ」と呼ばれる集団が誕生した。では誰が言い始めたのか。確実に言えるのは、「陰キャ」当人ではないということです。
冒頭にも述べた通り、「陰キャ」というのは良くないイメージの言葉です。他人を見下すニュアンスでも使われる、ともあります。スクールカーストの下位に位置する人々を見下すような言葉を付けるのは、当然それより上の人々でしょう。いわゆる対極の「陽キャ」と呼ばれる人々です。
では「陽キャ」という言葉を作ったのはどのような人々なのでしょう。スクールカーストの上に位置するのが陽キャなら、それより上の人々はいません。
僕はこれは「陰キャ」という言葉が出来てから対概念として自然と生じたものだと考えます。何かの言葉には必ず対義語があります。「陽キャ」もまた、対義語として生じたものでしょう。
ここで言いたいのは、「陰キャ」は「陽キャ」によって生み出された言葉で、「陽キャ」のほうが後に誕生したと推測できる、ということです。
「陰キャ」という言葉に生じ始めた変化
この「陰キャ」という言葉に変化が起きている、というのが本題です。それは「『陰キャ』が『陰キャ』を指す言葉では無くなってきている」という変化です。
現在探す限りはこの2作品のみで筆者は未読なのですが「陰キャ」、「陰キャラ」という言葉がライトノベルのタイトルになっています。
スクールカースト下位の人間に名付けられた、場合によっては人を見下すような言葉が商業の場で堂々と使われるようになった、というのはよく考えれば凄い変化ではないでしょうか。
ライトノベルは2作品のみですが、SNS上などを見ているとその人がどんな人であろうと自虐的に「陰キャ」という言葉が使用されるようになったと筆者は感じています。これは具体的な例を挙げられませんが。
「陰キャ」はラノベの読者層が感情移入しやすい言葉、または自虐的な意味へと移り変わっているのです。
言い換えると、元は教室の中で使われていた陰湿な言葉が市民権を得ている、という変化です。
補足として、直接的に「陰キャ」とはタイトルにないものの「陰キャラ」の属性をタイトルに使用しているライトノベルの例です。
なお、これらの作品を筆者は未読ですが、決して作品を批判しているわけではなく、むしろあらすじを読む限り作品は「陰キャ」であることを批判していないと感じました。
これからの「陰キャ」がどうなるか推測する
先に述べた通り「陰キャ」という言葉の使われ方が変化した今、従来「陰キャ」と呼ばれていた人々には呼ばれる名前がなくなっているのではないかと推測します。そのような蔑称ともとれる呼び名がなくなったことは喜ばしいとも取れますし、極端な話ですが居場所が無くなったとも取れます。
そもそも、最初の方で述べたソシュールの論に基づいて言うのであれば言葉というのは人間が勝手に作った線引きに過ぎません。「陰キャ」、「陽キャ」という線引き自体、ナンセンスなものではないでしょうか。このような声、もSNS上では散見されます。「陰キャ陽キャ気にしている時点で陰キャ」などという自己矛盾を孕んだ一文もその例です。
まとめ
「陰キャ」という言葉はそれよりスクールカースト上位の人々が生み出し、そのあとに対義語としての「陽キャ」が生まれたと推測します。
しかし、教室の中でのみ使われていた「陰キャ」は最近ではライトノベルのタイトルや、自虐的な言葉として使用され、市民権を得はじめ、元々「陰キャ」と呼ばれていた人々につける名前は消滅していっているのではないかと考えました。
僕自身は陰キャ陽キャ気にせず生きていきたいと思います…
という陰キャの戯言でした。
以上、ここまでお読み頂きありがとうございました。
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