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音楽:プロの演奏家として生活するなら? 打楽器の腰野真那さんをインタビュー!

腰野さんのプロフィール

新日本フィルハーモニー交響楽団のパーカッションセクション担当、腰野真那さんです!

コシノさん1

(中央で打楽器の演奏をしているのが腰野さんです。)

群馬県沼田市出身。 2012年武蔵野音楽大学卒業。 2015年桐朋オーケストラ・アカデミー研修課程修了。 2016年新日本フィルハーモニー交響楽団入団。

(以後、新日本フィルハーモニー交響楽団→「新日本フィル」と略します。)

演奏家の毎日

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腰野さんの子供時代!
小学校:
親が色々な習い事をさせてくれるタイプだったので、習字、英会話、学習塾、水泳をやっていました。(いやだと思った習い事はすぐ辞めていました。笑)
中学校:吹奏楽部に入って、プロの先生に打楽器を教えてもらい、プロを意識しだしましたが、高校受験を考える頃には建築家にも興味がありました。
高校:高校はまったく音楽とは関係のない学校に行きました。「建築家になりたい!」と思い進学した学校は、部活動にオーケストラ部も吹奏楽部もありませんでした。

(オーケストラ部:吹奏楽では管楽器と打楽器のみで構成されているのに対して、オーケストラは弦楽器・管楽器・打楽器で構成されています。)

音楽を始めたのはいつ頃?

4〜5歳のときにリトミックの教室に通い始めました。6歳のときにピアノを始め、10歳の時に姉につられて打楽器を始めました。

リトミック(Rythmique)とは:
楽しく音楽と触れ合いながら、基本的な音楽能力を伸ばすとともに、身体的、感覚的、知的にも、これから受けるあらゆる教育を充分に吸収し、それらを足がかりに大きく育つために、子どもたちが個々に持っている「潜在的な基礎能力」の発達を促す教育です。
特定非営利活動法人リトミック研究センター「リトミックとは」より

どうやって大学を選んだの?

 建築家に興味を持ち、高校へ進学したのはよかったのですが、少し時間がたってから「なんか違うな」と気が変わり、1浪して音楽大学に行きました。受験生の時に武蔵野音楽大学の先生に打楽器の指導を受けていたので、先生がいる大学に行きました。

オーケストラにはどうやって入るの?

大体どのオーケストラも募集は突然かかります。一度オーケストラのメンバーになると病気・怪我・定年でやめないかぎり席が空かないので、オーケストラに入るには運も必要です。(突然ホームページで募集がかかったりした時にすばやく応募できるよう、気になるオーケストラの情報は頻繁にチェック!)

オーディションでは、通常90人ほど応募して通るのはたった1人です。ヨーロッパでは、オーケストラから招待がないとオーディションを受けられないので、誰でも応募できる日本では倍率が高くなってしまいます。海外から来る演奏者ともオーディションで勝負しなければいけないのでより倍率が高くなります。

ちなみに、倍率は楽器によって違います。打楽器は基本一つのオーケストラに3人ほど在籍します。在籍できる数が少ないと必然的に倍率は上がり、弦楽器など人数が多い楽器より倍率は高いかもしれません。

最後に、どのオーケストラにも個性があるので、その個性に合う人が合格します。技術があるだけではオーディションを突破してオーケストラに入団するのは難しいでしょう。

コシノさん2

演奏中の腰野さん

オーケストラ以外の仕事もしているの?

大体の人はメインでオーケストラの仕事をしつつ、音楽に関する副業をしています。例えばソロの演奏家として活動したり、楽器を教える先生として活動しています。また、音楽とは全く関係ない仕事をやっている人もいます。例としては投資活動をやってる、会社を経営している、家族の会社で働いている等です。

私(腰野)の場合、まず人に教えています。個人レッスンで教えたり、音楽大学を受験するつもりの高校生を教えています。アマチュアオーケストラメンバーに指導することもあります。

オーケストラ奏者のキャリアとは?

だいたいのオーケストラには、定年退職があります。新日本フィルの場合は65歳くらいまで継続することが多いです。

現在のチャレンジ

音楽は演奏会だけではないと思っています。現在は老人ホームにいらっしゃる認知症の症状を持つ方に、音楽を使ったレクリエーションを行なっています。その人の人生の中で深い関わり合いのあった音楽を聞くと、当時のことを思い出すようです。

他には、発達障害の子供達への音楽アンサンブル指導等を通して、コミュニケーションの課題の解決を手伝ったり、その子の情緒の発達を支援しようとする活動を行なっています。

演奏家としての嬉しいこと、悲しいこと

嬉しいのは、認知症や話せなくなった高齢者の方が、音楽活動を一緒にやって行く中で、笑ったり話してくれた時です。音楽は記憶を呼び起こすことができるようなので認知症の人の若い頃に、聞き馴染んだ音楽を弾くことで当時あったことやその時の感情を思い出して、楽しんでもらえると嬉しいです。

反対に、音が嫌だとか、音楽によって辛い記憶が引き出されるケースもあります。その人の嫌なことと音楽が結びつく場合は悲しいです。「音楽は時に一方的で、ある意味暴力になりうる」と先生に言われたことがあります。「音楽は素晴らしいもの!」と決めつけるのではなく、両面あるということを常に考えています。

パーカッションの魅力とは?

打楽器は誰が叩いても関係なく、誰でも音が出せることが魅力です。プロが演奏するのもいいけれど、どんな人でも演奏をして音楽を楽しめます。

コシノさん キッチン

コミュニティコンサート:越野さんの「キッチン・コンチェルト」演奏

キッチン・コンチェルト:聞いてみたい人はこちら

パーカッションで一番難しい楽器は?

個人的にはインドのタブラバヤという楽器が一番難しいです。動画を見ても何やってるかわかんないです。指をすごいスピードで動かしています。

パーカッションあるある
あるある1:打楽器は曲の中で全く出番がないこともあり、待ち時間が常に長いため、打楽器奏者は皆待つことに慣れています。
あるある2:打楽器の人は忘れ物が多いです(楽器の種類が多く、その分たくさんバチを持たなければいけないから)、細かいことも気にしません。(私はジュニアオーケストラのときトライアングルのバチを忘れて、はさみの金属部分を使ったことがあります。)
あるある3:打楽器の男性は、フルートやバイオリンを担当する女性と付き合うことが多いです。同じ楽器同士での交際はレアです。特に打楽器は低音で重めの音が多いので、全然違うキャラクターの楽器(高く、きらびやかな音)と付き合いたくなるのかも。笑
ちなみに、演奏家同士で付き合う割合と、音楽とは全く関係ない人と付き合う割合は半々ぐらいです。楽器同士の方が話が合っていいと思う人、他には家で音楽の話をしたくない人もいます。これは個人の好みや考えの差ですね。

〜オーケストラあるある〜
あるある4:総人口が少ない楽器だとオーディションは知り合いばかり。
あるある5:プロでもオーディションは好きじゃない。
あるある6:新日本フィルの場合、オーディション合格後に約9ヶ月間、試用期間があります。そこを切り抜けて本合格になり、ようやくオーケストラのメンバーになれます。(オーディションも試用期間も、緊張状態が続いてストレスがかかりキツイです。できれば二度とやりたくないです。)

演奏家は家に楽器があったりするの?

私はそこらじゅうに楽器がある中で生活しています。たぶん30個くらい楽器があります(マリンバの下にベッドをねじ込んでいます、笑。)
たくさん練習しないといけないので、今は防音のマンションに住んでいます。防音のマンションに住みたいなら不動産屋さんに相談すると、色々調べてサポートしてくれます。まずは聞いてみることですね。

ボレロとかを弾いている時はどんな気持ち?

打楽器がメトロノームのようにきっちりしすぎているとオーケストラ全体が合わなくなってしまいます。メトローム的にならないように叩くためには、周りの人と合わせることが必要です。他の楽器の音を聞いたり、調べたりして演奏しているので疲れますが、打楽器はオーケストラで特に周りの音を聞く楽器だと思います。

パーカッションはどんな人に向いていますか?

強いて言えば、飽きっぽい人に向いています、笑。
打楽器にはいろんな種類があり、様々な楽器で自分の可能性を試すことができます。時に行き詰まりを感じている打楽器があっても、別の打楽器に打ち込んで、また行き詰まりを感じていた打楽器に戻ると、知らないうちに壁を乗り越えていて、楽しく演奏できているこもあります。いろんなことに興味がある人の方が向いているかもしれません。

音楽をやりたい人へのメッセージ

音楽はたくさんあるんです。世界中の民族で音楽がない民族はないでしょう。演奏家のプロにならなくても音楽のある人生を楽しんで欲しいです。演奏者でなくても、演奏会の企画やマネージメントを担うスタッフになったり、ステージマネージャーになったりしてプロの演奏家を支えることもできます。他にはホールスタッフ、レセプショニスト(受付)、照明・音響担当など様々な仕事を担当する人々が演奏者を支えてくれています。「音楽=楽器を習わなきゃ」というわけではありません。

腰野さんのモットー

「常に楽しむ」自分にはできないと思ったり、この音楽は理解できないと一瞬思っても、絶対に楽しいところを見つけてやる。

まとめ

腰野さんのお話を聞いて、自分も頑張れば音楽を仕事にできるかもしれない、と希望がわいてきました!自分が今習っているバイオリンをもっと練習して、プロのオーケストラに入りたいです。(早速、今からバイオリンを練習しようと思います。)腰野さん、ありがとうございました!



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