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街の歴史や物語から作品が生まれる瞬間を、アーティストと観客が一緒に体験する。YAU CLASS TOKYO PHOTOGRAPHIC RESEARCH編

「有楽町アートアーバニズム YAU」は、街がアートとともにイノベーティブな原動力を生み出すための実証パイロットプログラムとして、2022年2月にスタートしました。
アーティストが作品を生み出し人々が交流する場である「YAU STUDIO」では、徐々に活動が展開し始めています。

その「YAU STUDIO」を舞台に有楽町の人々がアートについて学び新たな思考を深めていく「YAU CLASS」では、同じく大手町・有楽町・丸の内エリアで新たなワークスタイルのあり方を探る試み「丸の内ワークカルチャーラボ」と連携したトークイベントをおこなっています。
過去2回のYAU CLASSを経て、第3回目は、TOKYO PHOTOGRAPHIC RESEARCH(以下TPR)より小山泰介さん、山本華さんと三野新さんにお話を伺いました。

アーティストが作品を生み出す場に、観客が同時に存在する稀有な場所、YAU

TPRは、「2020年代東京を舞台に、最先端の写真・映像表現を通じて未だ見ぬ都市と社会と人びとの姿を探求し、見出されたヴィジョンを未来へ受け継ぐこと」を目的としたアートプロジェクトです。写真家だけでなく、現代美術家、建築家、デザイナーなど、様々なメンバーからなるコレクティブとして、有楽町ではYAUに先駆けて2020年から活動を展開。「有楽町アートサイトプロジェクト」として、3〜4ヶ月をかけて有楽町エリアのリサーチをおこない、各ビルの仮囲いを使って屋外作品を展示しました。

(出典:TPR ホームページ)

YAUでは「INSIGHT/ONSITE: Studio TPR」プロジェクトとして、若手作家や学生など、20名近くのアーティストが集まって活動しています。

小山さんは、元々アーティストとの距離が遠いビジネス街である有楽町を舞台に、各アーティストがリサーチや作品制作を通じて様々な気づきを得ていると言います。

「TPRを器のように捉えて、色々なアーティストの視点を集めてアーカイブし、作品を通じて未来の東京にどうこの瞬間を残していくかということをやりたいと思っています。
YAUは、今まさに作品が生まれようとしている場所。その場所に、作家と観客が同じレベルでいられるということは今まであまりない体験ですし、作家にとっても面白い経験だと思っていますね。」(小山さん)

TPR・小山泰介さん


都市の歴史や物語を見つけ、痕跡として記録し続ける

今回TPRに参加している写真家の山本華さんは、テーマとして、「アメリカ」や「法、からだ、言葉」などのキーワードを元に作品を制作しています。

「例えば、アメリカといってもアメリカ合衆国そのものなのかというとそれはちょっと違っていて、日本の中のアメリカやアジアの中のアメリカなど、日本をアメリカというフィルターを通してみるということ。これは、自分の中の制作に強く影響していることだなと思います。」(山本さん)

山本さんは、YAUでは有楽町とアメリカの関係性に着目。戦後GHQの総司令部が置かれ、その結果様々な部分でアメリカの影響を受けた有楽町の歴史や痕跡に着目しながら、ご自身のテーマである法との境界線に焦点を当てた作品などの制作を進められているそうです。

三野新さん(左)・山本華さん(右)

山本さんと同じく、今回TPRとして参加する三野新さんは写真家であり舞台作家。写真や演劇作品を制作するだけでなく、近年では建築設計に関わるなど、多様なフィールドで活動されています。

今回、YAUでは「どういった人や作品、テーマが都市の中に入り込んで、作品として提示ができるのか」ということを考えられているとのこと。その参考になるものとして、「King-Richard_3_1.tomb_プロジェクト」という作品を紹介してくださいました。


この作品は、シェイクスピアの「リチャード3世」という舞台作品をベースに三野さんが作った脚本を参加者に読んでもらいながら、ギターを演奏しつつ、開発が進む渋谷・桜丘エリアの仮囲いを一周するというものです。

「都市を記録の対象として認識した時に、どんな形で痕跡として記録し続けることができるのか、ということを考え続けていますね。例えば、都市と都市に関わる当事者の間に入り込み、生み出される物語を戯曲にして、記録として残していく。そういったことを考えながら、今回のプロジェクトも取り組んでいきたいなと思っています」(三野さん)

3人のお話を受けて、今回司会を務めたYAUディレクターの森純平さんは、「今回YAUを通じて、皆さんの活動や作品がどうアートアーバニズムにつながっていくのかということを考えています。
皆さんのお話を聞いて、『アート』と『アーバニズム』の関係性も色々と設計できそうだなと思いました。さらに、街の人に対しても、アートとアーバニズムがどういう関係性をつくっていくのかということも、これから考えていくべきことだと思っています」と話しました。

TPRを始め、YAUに参加するアーティストの作品や活動について、詳しくはYAUホームページをご覧ください。

写真:加藤甫

執筆:原田恵(YAU編集室レポーター)
ライター・編集者
事業創造プログラムの企画運営、ウェブメディア運営、まちづくりに主軸を置く不動産会社での企画広報・バックオフィス業務を経験。
現在は表現する人の活動支援をテーマに、まちづくり・文化芸術分野におけるライティングのほか、小さな組織・企業のバックオフィス業務にも携わる。


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