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VOCA展2024

VOCA展実行委員会に依頼された美術館の学芸員や、ジャーナリスト、研究者らが、これぞという40才以下の作家を推薦し、その作家たちが平面作品の新作を出品し、その優劣を競うガチンコバトル。

それが、VOCA展です。

ちなみに。

村上隆さんや奈良美智さん、蜷川実花さんといった、
日本を代表する現代アーティストたちも、若き日にVOCA展に選出されています、
いうなれば、VOCA展は日本の若手作家の登竜門といった存在です。


なお、出展できる平面作品は、壁面に展示でき、

250cm×400cm以内のサイズであれば、何でもOK。
つまり、絵画や版画、写真に限らず、映像作品も出展OKとなっています。
また、“厚さ20㎝以内であれば平面とみなす”というルールもあるため、
その条件を満たしてさえいれば、20cm以内の薄型立体作品も出展OK。
要するに、わりと何でもありな展覧会です(笑)。



さてさて、第31回目となる今回のVOCA展で、

グランプリとなるVOCA賞を受賞したのは、大東忍さん。


受賞作となった《風景の拍子》は、現在彼女が住む秋田県のある集落の風景を木炭画で描いたものです。

誰もいない静謐な空気が画面からひしひしと伝わってきますが、よーく観てみると、中央に不思議なポーズをした人がポツリと描かれています。

実は、大東さんは、「現代美術家」の他に、

「盆踊り愛好家」という肩書きがあるそうで、画面に描かれているのは、盆踊りする彼女自身の姿なのだとか。

なかなかにシュールな作品です。
⭐️

準グランプリに当たるVOCA奨励賞の受賞者は2人。

1人は、沖縄出身の上原沙也加さん。

受賞作の《幽霊達の庭》は、台湾をテーマにした作品です。

そして、もう一人は、片山真理さん。

自身をモデルにしたセルフポートレートの作品で知られる義足のアーティストです。

片山さんはすでにいくつもの国内外のグループ展に参加する実力者。

それゆえ、このような若手発掘の意味合いも兼ねた展覧会に選ばれるのは意外でした。

そして、実力者である以上、

何かしらの賞を受賞するのは、逆に意外ではありませんでした。


VOCA佳作賞を受賞したのは、笹岡由梨子さん。

受賞作の《Animale/ベルリンのマーケットで働くクマ》は、自分自身の身体を使った映像と、自分で作詞作曲した音楽で構成された作品です。

ビジュアルと音楽のインパクトが強すぎて、正直なところ、内容がほとんど入ってきませんでした(笑)。

なんとなくワハハ本舗の芸風に通ずるものを感じました。


もう一人のVOCA佳作賞受賞者は、宮城県出身の佐々瞬さん。


仙台市の中心に位置する戦争被災者のための街が、昨年、77年の長い歴史に強制的に幕を閉じられたそうで。

受賞作である《そこに暮らす人々は自らの歴史を記した》は、その最後に建て壊された1軒の家をテーマに制作された作品だそうです。



さて、ここからは惜しくも受賞は逃したものの、個人的に印象に残った作品を紹介していきましょう。

まずは、松延総司さんの作品から。

電話している最中に、ふと何気なく描いてしまった落書き。

あるいは、間違って書いてしまった文字を、上から塗りつぶしたもの。

そういった日常の何気ない“描かれたもの”、

ドローイングとも呼べないものを連続パターン化させて、工業製品のようにプリントし、壁紙にしたという作品です。

もともとは、どうでもいいもののはずなのに、完成した壁紙は、クールでオシャレな印象で、普通に売ってたら、欲しいと思ってしまうほどでした。


どうでもいいものを作品にするといえば、長田奈緒さんも。

木製の巨大なパネルの左上に、ペットボトルが置かれています。

そして、右のほうには、おそらくそのペットボトルから流れた水の染みが見て取れます。

と、思いきや!

こちらは染みではなく、その染みを、シルクスクリーンで再現したものなのだそうです。

頭によぎったのは、“何でそんなことをするの?”のただ一言です。


最後に紹介したいのは、宮内裕賀さんの《生かされていくこと》。

アオリイカが共喰いする姿を描いたものです。


宮内さんは、近所のおじさんが釣ってきたイカの美しさと、その美味しさに魅了されて以来20年近く、イカだけを描き続けているそう。

肩書きも「イカ画家」です。

しかも、ただイカを描くだけでなく、イカを毎日美味しく食べ、その墨で顔料を、

甲から胡粉を作り、作品に使用しています。

そう、イカを使ってイカを描いているのです。

なので、この作品も近づいて匂ったら、イカ墨の匂いがしたのかも。

自分は嗅ぐ勇気が出なかったです。

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