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【アートノトお悩みお助け辞典】頁3.起こっても慌てないための「トラブル対応」スキル

第一線で活躍する各分野の専門家にご協力いただき、芸術文化活動に役立つコラムや情報をお届けする「アートノトお悩みお助け辞典」
今回は、ビジネススキル講座「明日から使える!創造現場のビジネススキル はじめの一歩」で講師を務めていただいた山田邦明先生の著書「クリエイター1年目のビジネススキル図鑑」(株式会社KADOKAWA)から、許諾をいただいて【起こっても慌てないための「トラブル対応」スキル】をピックアップ。
日々の創作活動の中で役立つ情報をQ&A形式でお届けします。 


以下、山田邦明「クリエイター1年目のビジネススキル図鑑」(株式会社KADOKAWA、2022年)より許諾を得て一部抜粋転載


起こっても慌てないための「トラブル対応」スキル

この世は森羅万象。いろんな事が起こるものです。僕がクリエイターの相談に乗った、様々な実際のトラブルについて見ていってみましょう。

▶著作権者の名前を出しているから、引用しても違反にならないよね?

 著作者の名前を出しただけで、適法な引用になるとは限りません。引用している場合は、それが適法な引用に該当するかどうか検討する必要があります。

▶自分で買ったCDだから、YouTubeにアップしてもいいよね?

 CDを買ったというのは、そのCDの所有権を手に入れたということ。著作権とは別の問題になります。そのため、CDを買っただけで、自由にYouTubeにアップしていいわけではありません。著作権そのものの考え方や、YouTubeの規約などの話になります。

▶自分の作品を勝手にNFTにされた

 NFT(Non-Fungible Token) とは、『非代替性トークン』のこと。NFTは唯一無二である、のように言われることが多いのですが、取引履歴が生まれるのは、あくまで一度NFTになって以降の話で、実際に作者本人がNFT化したかどうかは、どの作品においても、究極のところ証明しようがありません。そのため、勝手にNFTにされるという事態が起こります。

 この場合、有効な1つの手段に「GoogleにDMCA請求をすること」が挙げられます。DMCA請求は次のような手順で可能です。

1.Googleの「著作権侵害による削除」ページから削除申請を行う
2.権利侵害申請を行う
3.「宣誓供述書」を確認する
4.結果がダッシュボードに届く

 これらによってGoogleの検索に引っかからなくなるため、Googleのプラットフォームを利用しているNFTプラットフォームに表示されなくなります。

▶納品した創作物をポートフォリオとしてSNSで公開してもいい?

 クライアントとの契約の内容によります。まず、クライアントとの契約の中に、納品したものの著作権を譲渡する旨の条項が含まれている場合、納品後は自由にポートフォリオに載せることができません。初めからポートフォリオに載せることを想定している場合やSNSで利用したい場合などは、事前に契約書の中で合意しておくことが望ましいです。 

権利を譲渡する場合の例

※権利は譲渡するが、ポートフォリオ、SNSで自由に使う場合は「特約」に記載

 一方で、権利を譲渡していない場合、自由に利用することができます。

▶漫画のセリフは勝手に使ってもいいの?

 まず、漫画のセリフの著作物性について考えます。一般的に、漫画のセリフは、そのほとんどが著作物になりません。そのため、著作権法上の権利侵害にならないといえると思います(絶対ではないですが)。
 一方で、多くの人がそのセリフを特定の漫画であることが思い浮かぶ場合、作品にネガティブな使い方をすれば炎上等のリスクは残ってしまいます(法律的にはOKだが、倫理、慣習から問題になるケースです)。

▶著作権っていつ発生するの? 公開したとき?

 著作権は、創作した瞬間に発生します。そのため、公開する前であっても著作権は生じていることになります。なんらの申請も必要ないです。

▶アイディアは、先に公開するとリスクがある?

 アイディアは著作権上で保護されません。そのため、だれかに自由に使われたとしても、著作権上の主張をすることはできません。ただし、アイディアを先に公開することで、また新たな情報が集まることもありますし、先に公開したという履歴自体は残ります。そうすることで、自分のアイディアであることを知らしめる方法があります。 

▶「模写です」と言えば、模写をSNSにアップしてもいいですか?

 模写という記載があっても、基本的には著作権のうち、複製権の侵害になる可能性が高いです。ただ、イラストの模写は黙認されている場合があり、その場合は問題として顕在化しません。これは、イラストレイターの先輩たちが後進を応援している、この文化自体の発展を一緒に行っているなどの理由で行っているだけであり、あくまで許してもらっているということになります。模写対象の著作者や著作権者をリスペクトし、なにか指摘された場合にはすぐに対応できるようにしておきましょう。

▶自分が撮影したものではない画像(YouTubeのスクショや、雑誌やネットの記事)をシェアすることは問題ありませんか?

 適法な引用に該当するか否かの話となります。該当する場合には、それらの画像を利用することができます。 

▶本の表紙を写真撮影して、SNS等に投稿していいですか?

 適法は引用に該当するかどうかの話です。本の表紙については、専門家でも意見が分かれている部分があります(当たり前に行われているからと言って、必ずしも適法というわけではないという良い事例です)。

▶フリーイラストやフォントはどのように利用すればいいですか?

 まずはその素材を提供しているサービスの「利用規約」を読んでみましょう。最近の利用規約は非常に読みやすくなっています。商業利用の可否、1サイトへの掲載数なども記載されています。

▶他人の文章を、ご本人の承諾を得ずに、自分の文章の中で紹介や引用をしてもいいのでしょうか? 本人に確認したほうが確実ですが、なかなか個人的に連絡が取れないことがあり、判断しかねています。

 こちらも適法な引用に該当するかどうかという話です。引用に該当する場合、著作権法上は、著作権者の許諾は不要です。

▶クライアントに提出したイラストが、約束以外の場所で使われていた!

 クライアントとどのような契約をしているのか、という話です。
 契約の中で使用方法についての詳細を決めており、それに反しているのであれば、それは契約違反となります。そのため、「~というところで目にしたのですが、どのような処理になっているかご確認いただけますか?」などと丁寧に連絡することで、追加でお金をもらえたり、使用をやめてもらったりできます。特に失礼になることではないので、しっかりと連絡してください。
 一方で、このあたりを詳細に決めていなかった場合には、双方の意識がちがった可能性があるので、こちらの場合も丁寧に確認しましょう。この場合も、追加でお金をもらえる場合や停止してもらえる場合もあります。

▶動画コンテンツで、意図せず入り込んでしまった楽曲、看板などは、著作権侵害にならないでしょうか?

 著作権法のいわゆる「写り込み」という話になります。
 たとえば、屋外で映画の撮影をしている際、意図せずに楽曲の一部が入ってしまったり、アニメキャラの看板が映ってしまったりした場合、それらを映画から分離することが困難な場合、入ってしまった楽曲や看板の複製及び翻案は著作権侵害になりません。つまり、楽曲や看板などの権利者に許諾を得る必要がないということになります。
 もっとも、全ての「写り込み」が許されるわけではありませんので、原則写り込まないように配慮することが望ましいとは言えます。より詳細な条件等は著作権法第30条の2や文化庁Webサイトで確認してみてください。

▶社内の企画書に使うために、特定キャラクターのイラストを使ってもいいですか?

 著作権法の「検討過程における利用」という話です。検討過程に必要な場合、例外的に利用できるという規定になります。
 典型的には漫画のキャラクターの商品化の際、漫画家や出版社などの著作権者から許諾を得る前に、社内の企画書にキャラクターを掲載する場合、こちらの利用は許されます、ということになります。
 より詳細には著作権法第30条の3、または文化庁Webサイトをご確認ください。

知ってほしい!

 トラブルの形は本当に様々。全てのパターンを網羅することなんてできません。 ただ、この本に書いてある考え方を身につけていただければ、そこから紐解いて1つの方針を立てられるようにはなっています。「正解探しではなく、こっちの方向に行く、ちゃんと調べながらというスタンスが持てるようになるとトラブルが急に怖くなくなります。生きている以上何らかのトラブルに巻き込まれることはありえるので、過度に重く捉えず、より良くなっていくように柔軟に対応いただけたらと思います。

(転載ここまで)


執筆者プロフィール

山田邦明(やまだ・くにあき)
しろしinc. CEO&しろし法律事務所 代表弁護士
京都大学法科大学院を卒業後、スタートアップ向け法律事務所で弁護士として活動。知的財産や資金調達に関する契約業務などに従事。その後、株式会社アカツキにジョイン。管理部門の立ち上げ、IPO業務の主担当として、上場に貢献。自身がクリエイティブに救われたことから、クリエイターのパートナー事業をおこなう「しろしinc.」、クリエイター専門の「しろし法律事務所」を設立。特に好きな創作はマンガ。


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