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【アートノトお悩みお助け辞典】頁2.アーティスト必見!確定申告のススメ

第一線で活躍する各分野の専門家にご協力いただき、芸術文化活動に役立つコラムや情報をお届けする「アートノトお悩みお助け辞典」
第2回(頁2)は、芸術文化創造活動の担い手のための会計・税務講座でも講師を務めていただいた税理士の伊沢成貴(いざわ・しげき)先生にご寄稿いただいた、確定申告に関するコラムをお届けします。
いよいよ近づく確定申告の時期、皆様の活動にお役立ていただければ幸いです。



確定申告のススメ

確定申告は複雑で手間がかかりますよね。
もしかすると、確定申告の仕組みや作業を行う意義が見えると、少し負担が軽くなったり、活動のために活用できるかもしれません。
 
私は、クリエイティブ領域を会計税務から支援をしている税理士です。皆様からよく頂く質問を、Q&A形式でまとめました。
 
本記事で、まずはざっくりと確定申告の概要を把握しましょう。

確定申告とは何ですか?

確定申告とは、一年間の所得(収入ー経費)を計算して、所得税の計算と精算を行う手続きです。
 
会社に雇用されている人は、会社の年末調整で所得税を計算して精算してくれるため、多くの方は確定申告が不要です。
 
一方で、フリーランス(個人事業主)の方は年末調整が無いため、自身で所得税を計算し精算しなければなりません。その計算と精算の手続きのことを、確定申告といいます。

どんな人が確定申告をする必要がありますか?

フリーランスの方は必ず確定申告をしましょう。
収入と経費は「事業所得」として計算します。
 
会社からお給料をもらいながら副業としてアーティスト活動をしている人も確定申告が必要です。
収入と経費は「雑所得」として計算する場合が多いです(活動内容や帳簿の揃え方によっては「事業所得」になる場合もあります。また、副業のアーティスト活動で得られるお金が給与の場合には「給与所得」となります。)。
その副業で得られた所得(収入ー経費)が20万以下の場合には、確定申告が不要となる制度がありますが、住民税の申告は必要になる点にご注意ください。

確定申告をすると税金が戻ってきますか?

確定申告により計算した年間の所得に対する所得税よりも、源泉徴収された所得税の金額が大きい場合に、所得税が還付されます。
 
一方で、年間の所得に対する所得税よりも、源泉徴収された所得税の金額が小さい場合は、所得税が納税となります。
 
所得税や源泉徴収された金額によっては、確定申告で納税になることもありますのでご留意ください。

開業直後に必要な手続きは何ですか?

本業でアーティスト活動を行っている方(事業所得がある方)がフリーランスとして開業した際には必ず開業届書を提出しましょう。また、青色申告を行う方は合わせて所得税の青色申告承認申請書も提出をしましょう。
 
所得税の青色申告承認申請書を提出するタイミングによって、青色申告が適用できる年分が変わってきますのでご留意ください。
 

確定申告はどのような流れで行いますか?

まずは、請求書、領収証、レシート、通帳などの書類を集めます。
 
それを帳簿に集計します。帳簿は、簿記のルールで集計をすることが原則ですが、雑所得、白色申告、青色申告10万円控除を適用する方は、簡易帳簿という家計簿のような形式で帳簿を付けることも可能です。
青色申告55万円/65万円控除の方は、原則的な簿記のルールで集計が必要ですので、会計ソフトで帳簿をつけましょう。
 
次に、白色申告では収支内訳書、青色申告では青色決算書に、売上や経費などの金額を項目ごとに集計して、利益である所得を計算します(雑所得の場合には原則的には収支内訳書の作成は不要です。)。
 
その所得を確定申告書へ転記して、社会保険料控除などの所得控除を差し引き、課税所得を集計し所得税を計算します。
 
最後にその確定申告書を税務署に提出します。
 
そして、納税は税務署や銀行で、還付の場合には1~2か月ほどで銀行口座に還付されます。
 
会計ソフトを利用している場合には集計作業から電子申告まで行えます。
会計ソフトを利用していない場合には、国税庁の確定申告書等作成コーナーを利用頂くとスムーズです。
 

青色申告のメリットは何でしょうか?

本業でアーティスト活動を行っている方(事業所得がある方)は、「所得税の青色申告承認申請書」を提出し、帳簿をルール通りにつけ、青色申告を行うと、様々なメリットを受けることができます。
 
青色申告を行うと、事業所得から10万円/55万円/65万円が控除できる「青色申告特別控除」、30万円未満の資産を即時費用化できる「少額減価償却資産の特例制度」、家族従業員への給与支給が経費化できる「青色事業専従者給与」などの適用により、白色申告と比較して税金の負担を減らすことができます。
 
余談ですが、なぜ「青色」なのか気になると思います。これには諸説ありますがひとつご紹介します。
昔、税務署が帳簿をルール通りに付けた申告を識別するために確定申告書を色分けしておくことが便利ということで、その色を何色にすべきかという議論がありました。
その議論で「青空のようなスッキリした色」「青色に対する印象の良さ」などの理由で青色になったという説があるようです。
実は、今は「青色」の用紙は使われていません。
 

助成金や補助金の確定申告はどのようにすればよいですか?

作家活動に対して支給された助成金や補助金は、作家活動が本業の方は事業所得の雑収入、副業の方は雑所得の収入(副業を事業所得で申告されている方は事業所得の雑収入)に計上します。
 
また、助成金や補助金は消費税の課税対象外になります。
インボイス制度の登録などで消費税課税事業者になっている人は、誤って消費税の課税対象として処理しないようにしましょう。

確定申告の進め方の確認や相談はどのようにすればよいですか?

まず、国税庁の確定申告の手引きで、基本的なプロセスを確認することができます。
 
「確定申告書の書き方」などのタイトルがついている書籍は内容が優しく、親しみやすいです。
 
会計ソフトを利用される方は、ヘルプページやガイダンスが参考になります。
 
国税庁電話相談センターで電話質問もできますが、確定申告の時期は電話が混みあいますのでご留意ください。
 
税務署の確定申告会場に書類を持参して相談しながら確定申告書の作成を進めるのも良いと思います。その場合、売上や経費の集計をしてから相談をしましょう。
 
各地域の青色申告会に入会をすると、コンパクトなコストで、確定申告の相談や指導を受けられます。
 
確定申告の作業を一式お願いしたい、事業の相談をしたい、取引規模が大きくなってきたなどの場合には、税理士に依頼するのが良いと思います。スポットで相談対応可能な税理士もいます。
 
アーツカウンシル東京が主催する講座事業から生まれたアートの会計・税務に困ったらひらく本も、芸術文化領域にまつわる会計・税務について幅広く解説していますので、参考になると思います。
 

確定申告はどんなことに役立ちますか?

確定申告書などの税務署提出書類は、補助金や助成金の申請をするとき、融資を受けるとき、不動産を借りるとき、保育園の申請など、様々な場面で必要になります。控えは必ず手元に取っておきましょう。
 
また、確定申告は活動の利益管理に活用ができます。
確定申告で年間の収入・経費・利益が把握できますので、活動が予算通りに実行できたか、持続可能な利益構造になっているのか、活動を拡げるための投資が可能か、考えるための材料になります。
 
健やかに活動を継続していくためには、クリエイションとお金のバランスを考えることも重要です。
確定申告をこの観点から活用すると、確定申告への見方が変わってくるかもしません。

結びに

確定申告は複雑で手間がかかる作業にはなりますが、自己の活動を振り返り、活動の未来を考える機会も与えてくれる側面もあります。
本記事が、皆様の確定申告の理解を助け、活動をさらに発展させるきっかけになると幸いです。

(伊沢成貴)

執筆者プロフィール


伊沢成貴(いざわ・しげき)

伊沢成貴(いざわ・しげき)
税理士。東京税理士会所属。1987年生まれ、東京都亀戸出身。2012年に七松公認会計士税理士事務所にて、中小法人・個人の会計税務に携わる。2017年に公認会計士山内真理事務所にて、アート・クリエイティブ・カルチャー領域の会計税務に専念する。2023年に「つくる」領域を支援する、伊沢成貴税理士事務所を設立。

芸術文化創造活動の担い手のための会計・税務講座

全4コースをとおして、2023年3月発行のハンドブック「アートの会計・税務に困ったらひらく本 文化芸術創造活動の担い手のための会計・税務講座 Q&A63選」の内容を分かりやすく解説しながら、各コースに講師の聞き手役として創造活動の実践者も登壇し、現場の生の声を交えた講座を開講します。
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