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アートケアだよりバックナンバー紹介 2004年7月号

 「アートケアひろば」20周年を記念して、今年は「おたより」のバックナンバーを紹介しています。

 2004年7月号は、Nさんご夫妻へのインタビューでした。アートケアを開始した頃は、大人向けのワークショップも時々開催していました。それに参加したことをきっかけに、ご自身の子ども時代のこと、仕事のこと、子どもを育てて思うことを伝えてくださいました。

 Aちゃんは現在、人材紹介関係の会社にお勤めです。小さい頃から、家族それぞれ、違いを尊重されていた姿を思い返します。

・・・ 2004年7月号 ・・・

●自由な表現への苦手意識 

 Sさん(Aちゃんのお母さん)は5月のスペシャルワークに参加。内容は親御さん自身が絵を描き子ども時代を振り返って、親子関係のあり方を考えるものでした。その晩すぐにを送っていただき…

冨田:FAXからは「感動~!」っていう思いが伝わって私もやってよかったと嬉しくなったんですけど、あらためてどういう思いだったか聞かせてもらえますか?

S:嬉しかった~って気持ちでいっぱい。あのワークでは自分が描くの!?と、まず描くことに動じた。でもぐちゃぐちゃ描いてもいいとか、「その人にとっての良いところ」を見て話してくれたので「私でもできた」と思えて。それは「認めてもらえた」からだと思う。帰って夫に話し「よかったね」と聞いてもらえたのも嬉しかった。

冨田:絵の苦手意識は、いつ頃からあるんですか。

S:小学校5年生くらいからかな。廊下に貼り出されると通るのもイヤで。それまではおてんばで思ったらパッと行動する方だったのが、人の目を気にするようになりました。中学生の頃も、いわゆる女の子の人間関係であまりのびのびした気持ちになれなかったです。先日、母と話していたら「Sは5年生ごろに変わったね」ってやっぱり言ってました。

冨田:子ども時代の思い出を絵にするワークでは「ピアノ」がつらかったというお話も出ましたよね。

S:ピアノでは先生が厳しく、人と比べられ通しで、ほめられたことがなかったんです。自分の意見が言えなかった。実は母も同じ先生に習っていたんです。それで「やめたい」と言った時も「つらいのはわかるけど」って聞いてもらえなかった。ずーっとがまん。大学を卒業して先生の大きなリサイタルがある年に、バーンと反抗して「もうやめます」って。それきり行きませんでした。

冨田:反抗であり、自立であり!今はすごくのびやかなように見えますが、ご主人との出会いが大きかったのかな?

S:とにかく夫に話して話して、聞いてもらって(笑)。2人とも音楽をやってたのでそういう話もできて。

K:僕はSに出会った当時、CMの曲を作ったりする音楽関係の仕事をしていたんだけど、ある時、なんで音楽作ってるんだろうって疑問に思っちゃったんです。そうするともう曲が作れない。音楽って本来、神様に拝む気持ちから始まっているでしょう。ところが自分がやっていた音楽の場にはそれがない。それで翌日「やめます」って。

冨田:お二人とも思ったらすぐ行動、なのね。

●子ども時代の気持ちを思い出して、子どもへの“囲い”を少なくする

ダンボールアート「箱をバン!とするとティッシュが浮かぶよ」

冨田:Aちゃん、とってものびのび育ってますよね。お家で楽器にふれたり絵を描いたり、表現されているのに「アートケア」に通おうと思われたのは?

K:家ではそれほど表現の環境は作れない。子どもには選択の幅を広げる場を作ってやることが大切かなと。

S:「アートケア」では囲いがないなって思うんです。私がAにする対するときは、私の気持ちが囲いを作る。自分の価値観、キライとかニガテとかを押し付けたら怖い。だから今まではアートはパパにおまかせという感じでした。

K:この人はピアノでも「自由に弾いて」といっても弾けない。

S:それは自分の表現が評価につながる経験をしてきたからだと思う。

冨田:最近はSさんも絵を描いたりちょっと苦手意識がなくなってきました?

S:ワークに参加したりして徐々に!私が描いたものをAに「すてき」ってほめられるのもとっても嬉しいんです。Aは私にとって「ああなりたい」っていう目標かもしれない。子ども時代の復活。大人にとって“思い出す”ことってとても大切ですよね。

冨田:そうなんですよ。 それで大人向けのワークショップでは“思い出す”内容を入れたりしてます。ところでKさんは今、曲を作ったりしているんですか?

K:今、表現したいことがなくて。前は「LOVE& PEACE」をテーマにアマチュアバンドをやったりしてたんだけど。

S:今は家族の毎日が「LOVE& PEACE」だよね。

冨田:なるほど!Sさんはピアノを教えて、どうですか。

S:親になって初めて…じゃないですけど自分が教える立場になって気づいたことも多いです。ピアノを嫌いになってほしくない、楽しく弾いてほしい。ガミガミされたり手をたたかれたり、自分がされたことは絶対しないって思います。

冨田:つらかったことは繰り返さない…自分がどんなことでつらい思いをしてきたか意識して、次の世代へマイナスの鎖を断つ。なかなか難しいことですけど、心にとめておきたいことですね。Sさん、Kさん、お話ありがとうございました。


ワンちゃんが大好き。「肉球」
「しっぽ」


飼っているワンちゃんをキャンバスに描く


「音ことばワーク」では、いろんな楽器を弾きました

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