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パリ フォンダシオン・ルイ・ヴィトン 『ファミリー・フェスティバル』 ルポ

2024年6月、パリにあるフォンダシオン・ルイ・ヴィトン FONDATION LOUIS VUITTON で開催された『ファミリー・フェスティバル』に行ってきました。
(なぜ訪れたかは前回のnote「アートケアだより7月号」に記しました!)
(写真の撮影と掲載について、フォンダシオン・ルイ・ヴィトンの許可をいただいています)

年に一度、6月の第3土日に開催。第4回ということで、情報が浸透しているのか、とにかく大賑わい! 
X線検査の列が「お子さん連れでない大人の観覧者」と「子ども連れ」の方のレーンに分けられていたので、お子さん連れでない大人の観覧者が大勢来ていることがわかりました。
子連れの人とそうでない人が渾然一体となって美術館に集合している!という日です。

展覧会は「エルズワース・ケリー 形と色彩 1949-2015」、「マティス 赤いスタジオ」、「コレクション スポーツ ミーティング」の3つ。
ケリーの展示、空間との調和も相まって素晴らしかったです。大好きなマティスも嬉しい。そしてコレクション展はオリンピック・イヤーならではの構成。

フェスティバル期間は、子どもたちが家族と楽しめる「鑑賞ツアー」「ワークショップ」「音楽ライブ」「パフォーマンス」等のコンテンツが常に並行して実施されていて、2日かけても全て参加することはできないボリュームです。
庭には美味しそうなフード屋台がずらり。館内も展示室以外は飲食OK、いたるところで休憩できる環境でした。

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まず、0~2歳の鑑賞ツアー「BABY EXPLORERS」に同行しました。
(今回の旅で1つ目の見学、ドキドキしてガイドの方のお名前をうかがうのを失念してしまいました。ガイドさん、と書かせていただきます)

「コレクション スポーツ ミーティング」展を鑑賞。
ガイドさんは大きなリュックサックを背負って、道中、作品にちなんだ様々なグッズを取り出し、赤ちゃんたちが興味を持つよう働きかけます。

広い空間に大画面で展開する映像作品。暗めの展示室に入ることを怖がらないよう、ハンディ扇風機を持って赤ちゃんの頬に風を優しく当てます。
雪山の写真作品の前では、ピョローと音が出る笛を吹いたり。フワフワの布を広げて「雲」を感じさせたり。
五感で楽しめるような工夫がたくさん散りばめられていました。

映像作品にはパラシュートで飛ぶ人物が出てきます。「じゃぁ、みんなも」と、子どもたちが大きな布に乗っかって、大人に引っ張ってもらう遊びがスタート。グルグル、ズンズン、結構な勢いで広範囲に動いていました。
展示室が広いからできるということもありますが、他の鑑賞者の迷惑になるかもしれないことはやらない、という後ろ向きな感じは一切なし!実施者と美術館の気概を感じます。

この美術館では、フェスティバル以外の通常期間も、毎週、0~2歳のツアーを開催なさっているのです。毎週ですよ!すごい。

ガイドさんに話を聞いたところ、ツアーの内容は数名の担当者で相談して作り、他のスタッフに確認して実施しているのだそうです。基本、好きなように作って良いとのこと。やりがいを持っていらっしゃる様子が伝わります。
ファミリーフェスティバルの2日間は、ツアーが多種、ほぼ毎時開催されています。「とても忙しい2日間ですね」と話すと、目を回す仕草をされていました。実にキュートなガイドさんでした。

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2~5歳のツアーで「コレクション、スポーツミーティング」 を鑑賞している様子を見学しました。

先ほどとは別のガイドさんが実施。年齢もベビーより大きい幼児たちで、言葉での鑑賞方法を用いています。ガイドさんの話を聞き、子どもたちの発言は時々、というペース。
床に寝転んで聴いている子もいて、とてもリラックスした様子です。保護者もガイドさんも、大人たちは「ちゃんと座って!」なんて誰も言いません。その寛容さがリラックスにつながるんでしょうね。

フォンダシオン・ルイ・ヴィトンと、翌日訪問したオランジュリー美術館、オルセー美術館の鑑賞会で共通して感じたことがいくつかあります。
その1つが「保護者が、子どもたちに目線や言葉で働きかける場面がほぼない・子どもたちも親の意向を確認しない」ということでした。
子どもがぐずったり作品に近づいた時は関わっておられましたが、それ以外は、我が子が作品を見ていなくてもガイドの話を聞いていなくても、平然としている。
「ちゃんとして」はもちろん、「(鑑賞したり発言したりして)すごいね」というアイコンタクトもなし。
子どもも「寝転んでいい?」なんて確認しない。自分の振る舞いたいように過ごす。でも他の人の迷惑になることをする子はいませんでした。

たまたま共通していたのか? ヨーロッパの個人主義と言えるのか、世界に名だたる美術館の鑑賞会へわざわざ参加する親子だからなのか(フランス以外から来ていた人もいる可能性もありますし)、今回たった6回の見学でしたので結論は出せませんが、日本で日常、見かける親子の様子と大きく違うと感じました。
 
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なんといっても訪問するだけでときめくのは、見てみたい、巡ってみたい建築だから、とも言えます。
フランク・ゲーリーが設計した素晴らしい建築は、「帆船」をイメージして造られています。
(その理念については美術館のHPをご覧になってください)
水、光、風、木、石、様々な素材と形の構成。
複雑なのに心地よい。
建築ツアーも開催されていて、子どもたちがガイドの話を熱心に聴いていました。

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「EKLA」というアーティスト集団による6~12 歳向けの50分のショー「ターンステーキ  TURNSTEAK」。刺激に満ちた意欲的なショーでした。
大きな白い絵本を開くと様々な形状の場面が飛び出します。そこに映像が投影され、幻想的な光景が広がります。
音楽は大人向けのクラブ(DJがターンテーブルを回すクラブ!)のようなテクノ系。光がビカビカ、後光が差すような演出で終了しました。

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昼、館内に楽しげな音楽が響きました。ブラスバンドが練り歩いて演奏を聴かせてくれます。大人数で構成されていて迫力ある音。演奏者には少年少女たちがたくさんいるので、聴く子どもたちにも威圧感なく、楽しめる感じがしました。
(写真は演奏する少年少女のお顔が見えてしまうので掲載しないでおきます)

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ワークショップは庭で展開。庭は隣接する「ジャルダン ダクリマタシオン遊園地」の一部の区画で、フェスティバルの日は解放されています。

シルクスクリーンの体験、ローラーペイント、油彩の重ね塗りの秘密に迫ろうという色鉛筆画、風を感じさせる造形作品、チラシなどをリサイクルして作る工作、などなど。アーティストが構成に関わったワークショップもありました。

館内3~4Fにある屋外スペースでも、いくつかのワークショップが常時、体験できるようになっていました。
風車を作る、オブジェ作品に埋め込まれている「物」を探す、デザインパネル遊び、そのパネルの形で造られたクッションマットでのんびり。

ワークショップのほとんどは、美術館の建築展示内容に由来したコンセプトでした。
これだけの種類を一度に実施するのは、本当に大変なことだと思います。

日本語を話す日本人と思しき方は2家族、見かけました。
話しかければよかったかな。ちょっと引っ込み思案が出ちゃいました。

15時半をすぎると、あっちこっちで泣き声がこだまし始め… 子どもの疲れっぷりと限界は、何処も同じだなぁ、と妙なところで実感。

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それにしても大規模な展開でした。人材、財力、美術館の求心力、どれ1つ欠けてもできないことだと思われます。
2014年開館。働く人にとって、ここに関わることが嬉しいし、誇りに思えるような場。
「おいでよ!美術館って楽しいよ!」子どもを連れた家族を受け入れる、ガッチリと腰を据えた美術館の姿勢が体現されたフェスティバルでした。

 
フォンダシオン・ルイ・ヴィトン https://www.fondationlouisvuitton.fr/fr


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