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アートケアだより 2023年11月号

6年生ご家族へのインタビュー。今月はTさんご夫妻にお聞きしました。6年生のAくんと1年生のA子ちゃん、ちょっと歳の離れた兄妹の親御さんです。茅ヶ崎市内で開いていらっしゃる美容院でお話をと訪問したところ… 

●裸にタオルを巻いて登園! すったもんだの幼少期

父:先生、今いらしているお客様は、Aが0歳~2歳の頃、東京の保育園でお世話になった担任の先生なんですよ。
冨田:えー!!
保育園のT先生:こんにちは~(仕上げのブロー中)
冨田:偶然ですか?
父:いやぁ、ちょうどご予約が入っていた日時にこのインタビューのお話があったもんですから、だったら会って頂いたらいいなと思って。
冨田:あらま~、ありがとうございます。都内からお越しなんですよね、すごい。先生、Aくんが小さい頃ってどんなお子さんでしたか?
T先生:んー、今とおんなじ感じかな。(おっとりした優しい雰囲気♪)

母:小さい頃、変わってるなーと思うことがよくあったんですよ。
ある日「服、着たくない。保育園に裸で行く」って言い張って。当時、美容室に勤めていたので遅刻するわけにいかず、どんどん時間が迫ってきて、しょうがないからAのお気に入りのタオルを巻いて11月の寒空の下、自転車こいで保育園に向かいました。そしたらT先生が「はい、受け取りました」って何てことなく預かってくださって。お迎えに行ったら「あのあとすぐ服を着てましたよ」って。
冨田:先生ありがたい。心強いですね。
父:布おむつで、休日保育もしてくださって「育ての母」ですね。T先生、Aはアートケアでこんな創作をしてるんですよ(とアートケアのアルバムを先生にお見せする)
T先生:あら~ すてき。(ブロー終了)
3人でお見送り:ありがとうございました~

●チャンスがあればできるだけ外に出て、いろんな大人、いろんな子どもと出会ってほしい

父:3歳で茅ヶ崎に引っ越して、お店をオープンしてからもT先生は気にかけてくださったんですよね。Aってちょっと不思議で、小学校で3年間担任してくださった先生もお店に来てくださるんですよ。
冨田:Tさんご一家の持つ「あったかカラー」ゆえですね、きっと。学校ではどんな様子ですか?
父:友達の輪がちょっと合わない様子で。
母:しっくりこないのかも。好きとか嫌いとかじゃなく。学校の先生は「クラスのムードメーカーです」っておっしゃるんですけど、なんか結びつかなくて。「今日何した?」って聞くと「1人で学校の中を散歩してた」とか「1人で本読んでた」とか言うんですよね。
父:1対1がいいみたいな感じもします。
母:学年が変わると前に仲良かった友達とぱったり遊ばなくなるんですよねー。Aの小学校って、中学校が全員同じ学区なんです。だから「もし合わないんなら受験する?」なんて聞いてみたんですけど「大丈夫だよ」って。
父:変化を嫌がるよね。でも最近、変化があって、高校生が主催する団体で活動し始めたんです。僕が入っている青年会議所で関わりがあった団体で、子どもたちが企画運営して子どもたちのための活動をしている。周りの人から「何やってんだよ」って言われても「とんがってやってこうぜ」っていう気持ちで動いているんだそうです。
冨田:社会貢献活動をしていると、特に10代だと尚更、「いいことやってんじゃん」みたいな引いた目で見られることってありますもんね。すごい高校生たちだ。
父:みんな仲良いよね。卒業した大学生も手伝いに来たり。平塚が拠点で、茅ヶ崎からは2人なんですけど、1人で電車に乗って出掛けてます。
母:この前は「子ども縁日」を開催して、すっごいイキイキしてました。メンバーがAと似ているからかもしれないですけど、場所とか環境が変わると、Aもこんなに輝くんだ!って思いました。「楽しかった!」ってすぐ馴染んで。みんなから「A!A!」って声かけられまくってました。
冨田:目に浮かびます~。アートケアの「音ことばワーク」に来ていた時も、みんなから慕われていて、特に小さい子から憧れられてて、ついて行きたいお兄ちゃん!みたいな存在で。学校の先生が「ムードメーカーです」とおっしゃるのと同じかも。

自作の工作をみんなに遊んでもらう 互いに楽しい!
小さい子を楽しませるのも上手!
アートケアでその日、初めて出会った子と1枚の紙に描く、垣根のないAくん

母:私、アートケアもそうなんですけど、チャンスがあればできるだけ外に出て、いろんな大人、いろんな子どもと出会ってほしいと思っているんです。今の場所が全てではないって気づいてもらえると思って、Aにそう伝えてきました。
父:僕の場合、3人兄弟、理容師の家で育って、親は土日働いてますからね、運動会ではご近所さんのお弁当を一緒に食べたり、周りの人とのお付き合いが当たり前な感じだったんですよ。
Aは垣根がないから、いろんな人がいるところで僕がいなくても平気で、ビーチクリーンなんかも「Aも来てくれって」「行くー」って。いろんな人と話しています。
母:なんでも最初は「えーっ」て言うんですけどね。「どうせ暇なんだから行きなよ」「わかったよー」って感じで始めて、結果、楽しそうなんですよ。
父:団体の活動でチラシ配りをした時、人が声をかけてないところに行ってたのもAらしいなって思います。
冨田:そんなAくんの様子に気づいているお父さんもすごいですね。習い事など、他の活動はどうですか?

母:空手を3年生くらいからやっていて、そこでも先生と気が合って、いろんな話をして過ごしているようです。
サッカーは4年生くらいまでやってたんですけど、クラブチームの子たちがセカンドスクールとして通うような所だったので、高学年になって周りの子たちが強さを求める雰囲気になって辞めました。
冨田:クラブチームの子たち、懸けているから勢いがすごいですもんね。
母:「僕はただ楽しくボールを追いかけたいんだ」って。それなら学校のグラウンドでみんなとサッカーがいいよねって。
冨田:駅伝、がんばってますよね。
母:駅伝は5年生から、同級生のお母さんが、Aが徒競走で早いのを見て勧めてくれて。Aは誰かに何かを言われるのがイヤで「遅いとかバカにされたら行かないよ」って言ってたんですけど、やり出したら変わっていった。本人は体力づくりって言ってますけど自主練したり。
父:勝負心も芽生えてきていて、遅いって言われていた速い子に追いついてきてます。
冨田:そういう様々な場で人と関わって、やり甲斐を持ったり力を発揮するという経験の影響もあるでしょうね、このところアートケアで粘り強くなってるなって思うんですよ。数年前は何を作ろうか悶々としている時期がありました。悶々するのも大事で、そこを超えて、今、スイスイ作ってますよね。
母:アイデアもたくさん出すようになった。家でも空き箱があると「これで何ができるかな」と考えてますね。
冨田:うまくいかない時に悔しい気持ちを切り替える方法もいくつか持っているし、立ち直るのも早くなっていて、そのあたりも成長してるなぁって感じます。

「音ことばワーク」ソルトリーという楽器で作曲演奏

●子育ての悩み、いろんな方法で解決へ

冨田:アートケアに来たのは2年生、Tさんの美容室のお客さんでアートケアに通っていた方の紹介でしたね。
母:「『何を作る』じゃなくて『何でもいい』ところだから、Aくんに合うと思う」って教えてくれました。その頃、Aをどう育てていいかわからなくて悩んでいた時期でした。
父:Sさん(Aくん母)にとって、Aは異性だからか「男の子ってわかんないー」って、種子島に母子で留学しようかとまで考えていたよね。占いにも行ってみたり。
母:そしたら私がAよりも変わった人だったって指摘されたんですよ。
父:種子島留学も行きたいのはSさん自身だったと気づいたんだよね。
冨田:気づいて遠くに行かなくて何よりでした(笑)。アートケアで個別相談をされたこともありましたね。
母:ほんっとにAのことがわからなくて。その頃、学校から呼び出されて、いろんな人に謝って回ってたんです。菓子折り持って行ったこともありました。それが続いてどうしたもんだか、冨田先生と話してみようって思いました。
そうしたら「子どものこと全部わかってます、というお母さんがいたら逆に大丈夫?って思っちゃうよ」って。それで「あ!そっかー」って。
冨田:ご家庭で話したり、占いに行ったり、アートケアで話したり、いろんな角度で子育ての悩みを解決しようとされてきたんですね…

「う〇〇」お父さんはお守りがわりに車のダッシュボードに置いていたそう!

冨田:(アートケアのアルバムを見ながら)低学年の頃は「う〇〇」とか言って、よくウンチを作ってましたね~
父:金のウンチは、しばらく車のダッシュボードに置いてたんですよ。お守りみたいに(笑)
母:アートケアの初回、ねりけしだけ作ってたんですよ!冨田先生から「絶対否定しないで、怒らないで」と聞いたので、ねりけしか~って思いながら否定しないようにしました(笑)
父:フィギュアが好きな今につながってるのかな。
母:最近、よく絵を描くんですよ。学校で「自学」という、自由に何でもテーマを決めていい宿題があって、Aは「ワンピース」のキャラクターを描いてました。友達からもたくさん高評価をもらったそうで、嬉しそうでしたね。

2年生。初めて来た日の「コロコロゲーム」 作ったのはねりけしだけじゃなかった?!
2年生 金の双眼鏡
2年生 巨大爆弾!
4年生 アートケアひろばの展覧会で「マインクラフト」のキャラクター 1m以上ある!手が動く!

●自分のアイデアで何かを編み出す、自分の力でできるようになりたい気概

父:この頃、ちょっと思春期に入ってきたというか。茅ヶ崎の花火大会の日に電車で出かけて帰ってくることになったんですね。駅を出たら、Aは南口にあるよく行くラーメン屋さんに行きたい。でも僕は花火大会で人が多い時間に重なる予測で「混むから無理じゃない?」って言ったんです。そしたら「決めつけないでよ」って言い合いになっちゃって。行ってみたらお店に入れたんです。それで「ほら、行ってみないとわかんないでしょ」って言われました。「人が多い、こんなに混むことないから見にいこうぜ」くらいの楽しむ感覚。子どもから学びました。
冨田:人が混むから避けよう、でなく楽しもうっていう発想って、なかなか出ないですよねぇ。
父:Aは結構いろんなことができちゃうところがあって、水泳も小さい頃、習ってもいないのに50m泳げていた。
反面、人に言われて上手になるのが嫌みたいなところがあるんですよ。僕の野球の練習に付き合ってって持ちかけて、一緒にやることがあるんです。Aは「打ったらホームラン、投げたらストライク」という状態でありたい。ある日、Aにちょっとアドバイスしたら上手くできるようになったんですね。そしたら「自分でオリジナルでできるようになりたかった!」って悔しがるんですよ(笑)
冨田:そんな面があったとは知らなかったなぁ。ワークで自分でアイデアを出したいっていう気概を発しているのは、そういう面からだったのか。
父:僕ら夫婦は自営業ですし、僕も自営業の家で育ったので、自然と「人と違う何かを」っていう考え方になっているのかなと思う時があります。

5年生「タニック」 タイタニックへのオマージュ作品
6年生。制作中の「ガチャ」内部構造を自分で工夫し、調整しながら数回かけて作り込んでいます

父:ある時、Aが「とと(お父さん)、『苦楽統一』でいこう!」って言うんですよ。「何?」って聞いたら、お風呂屋さんで「湯快爽快」ってあるでしょう。それにちなんで自分で考えた四字熟語だって。僕、確かめちゃいましたよ。実際そういう四字熟語はなかったです。
さっきお話した「電車から降りたら混んでいてラーメン屋さんに行けないかもって決めつけないでいこう」と同じで、「悔しい時も楽しい時も、気持ちを落ち着けて。イライラしてもしょうがないよ。最初からうまくいかないかも、それでいいよねと思ってやってみて、それで楽しいことを見つけようじゃん」という考えを、その四字熟語にしたんだそうです。
冨田:はー!奥が深い! 学校の勉強はどんな感じなんでしょう? この前、「中学に行ったらわからないことがあったら、放っておかないですぐ先生に聞いてわかるようにすれば大丈夫だからね」なんて話をしたところです。「うん」って言ってましたけど。
母:塾に行ってないですけど、まぁまぁな感じで。
父:数字に興味があって、メダルゲームの枚数を確認したり、時給のこととか聞いたりしてますねぇ。税金のニュースなんか聞くと誰よりも怒ってますよ。その延長で「我が家の税金」と言って、お菓子を食べるのを何%って決めて食べてます。おもしろいですよね。10個入りだと何%はいくつと計算してますよ。
冨田:生きた学びですねぇ!

父:最近、妹のA子へのお世話焼きが前にも増してすごくて。行き過ぎて管理してるみたいな時もあるんですけど、髪を乾かしてあげたり、いろんな世話をしてます。
母:A子はお兄ちゃんが大好きだから。
冨田:ほんと、A子ちゃんお兄ちゃんのことが大好きですよね~ 年の離れた兄妹だからというのもあるでしょうし、Aくんの人に慕われる面は、兄妹関係の中でも育まれているのかな。
今日はお話を聞かせていただいて、ありがとうございました。
父母:こちらこそ、またよろしくお願いします!


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