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美術作品を守る人

 各地での台風の被害がとても心配ですね。今も心細いお気持ちでお過ごしの方もいらっしゃる中、申し訳ないような気持ちもありながら… 台風のたびに思い出す、ある方のことを記します。

 もう10年ほど前、大型の台風が迫ったある夜のこと。とある美術館でワークショップを翌朝に控えていました。もしも停電になったら固定電話が使えなくなって連絡がつかないと感じ、夜中の3時半から4時頃でした、美術館へ携帯番号を記してFAXを送りました。(その当時は携帯番号を気軽にお伝えしていない時代でした)

 すると、即座に着信がありました。真夜中でシンとした中、着信音がいつも以上に大きい音で響きます。驚いて出ますと「〇〇です、冨田さんの携帯ですね」と。それは美術館の副館長さんでした。

「〇〇さん、今、美術館にいらっしゃるんですか?」
「うん、そうだよ」
「こんな夜中に! お一人なんですか?」
「そう。台風が来ているからさ、美術館は作品があるからさ、大丈夫かと思って来ているんだ」
「えー!〇〇さん、お一人なんて。お気をつけてください」
「ははは、大丈夫だよ」
「何かあったら、またこの携帯にかけてくださいね!!」
「ははは、ありがとう」

 そんな会話をしました。

 〇〇さんは、乳幼児ご家族への活動にとても共感してくださって、お仕事をご一緒させていただく中、大層、応援してくださいました。長らく公民館でのお仕事をご専門とされてきたこと、だからこそ〇〇さんがこの事業を応援する理由やお気持ち、美術館に異動してからも、とてもやり甲斐を持っていらっしゃること、などを折にふれお聞かせくださいました。

 そんな〇〇さんのお人柄に信頼を厚く感じていたのですが、この台風の夜中の行動に、さらに尊敬の念を覚えました。

 美術作品を守るために、〇〇さんのように、陰ながら支えていらっしゃる方がたくさんいるんですよね。
 
 〇〇さんとは、もう空を見上げてお話しすることしかできないのですが、仕事に誠実に尽くそうと思うたび、職務に誠実に全力を尽くす〇〇さんのお姿を思い返しています。〇〇さんだったら、どう思うかな?どんな意見をくださるかな、そう思いながら物事を決めることがあります。


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