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【#15】材料力学の強化書 〜安全率について〜

今回のトップ画像は、アメリカのマンハッタンにある世界最大級の美術館「メトロポリタン美術館」です。

絵画・彫刻・写真・工芸品ほか家具・楽器・装飾品など約300万点の美術品が所蔵されているそうです。全館を一日で巡るのは難しいほどの規模を誇ります。

これらの大切な文化財を守るためにも、簡単に崩れないように確実な強度設計が求められたことでしょう(筆者の勝手な想像です)。

さて、材料力学の話に戻りましょう。

前回は塑性変形についてミクロ(微視的)な視点から解説しました。ミクロな領域というのは原子レベルの運動であり、規則的な原子配列が崩れて線欠陥(転位)が発生することが、塑性変形の始まりであることを説明しました。

今回は機械設計を行う上で重要な「安全率」という言葉について解説します。実際に設計の問題に携わる場合は避けて通れないことですので、初見となる人はここできちんと理解しておきましょう。

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許容応力と安全率

構造物を構成する物体(材料)は、構造物に有害な変形が残らないように適切に選定する必要があります。この材料の選定においては、強度設計を行うための基準が存在する訳ですが、そのための指標として「安全率」があります。

例えば、設計した機械や構造物に降伏応力を超えた応力が発生したとすれば、永久変形(塑性ひずみ)が残ることになります。そうなれば、本来の機能を損なう可能性があります。また、物体(材料)に大きな応力が発生すれば、破壊が起こる可能性も出てきます。

従って、このような問題が起こらないように、物体(材料)に発生する応力がある基準値よりも低くなるように設計する必要があります。このとき、許容される最大の応力を「許容応力」と言います。

許容応力は「基準応力」を基に決定します。一般的に基準応力は物体(材料)に応じて、降伏応力や耐力が使われることが多いです。

実際の設計では、理論モデルの誤差や様々な不確実性を考慮して、安全率(f)を設定します。先ほどの許容応力(σa)と基準応力(σs)を用いると、

$${f=\frac{{\sigma}_s}{{\sigma}_a}}$$

と表されます。安全率は1より大きな数値であり、設計者が安全性を考慮して決定します。

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おわりに

今回は短いですが、実際の設計の場面で使われる安全率という指標について説明しました。

つまりは、前回までに説明した応力ーひずみ線図において、線形領域(弾性領域)の範囲内の変形に収まるように設計するということです。永久変形(塑性変形)まで及んでしまうと、非線形領域であるが故に何が起きるか分からないというリスクがあるためです。

現実の設計に携わることになれば、必ず登場する指標です。ぜひこの機会に理解して頂ければと思います。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。実際は非定期ですが、毎日更新する気持ちで取り組んでいます。あなたの人生の新たな1ページに添えるように頑張ります。何卒よろしくお願いいたします。

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