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人は如何にして体制翼賛へとなるか: 『加藤直樹「ウクライナ侵略を考える」を読み解きながら』執筆にあたっての覚書 - 二度と過ちを繰り返さない・騙されない。

割引あり

 今回は、少し趣向を変えて、今やってるシリーズ『加藤直樹「ウクライナ侵略を考える」を読み解きながら』をなぜやってるか。ということについて少し書いておきましょう。
 私のはてなダイヤリーやnoteを長いこと読まれてる方々には新しいことはないかもしれませんが。


最大の思いは、一つ。

最大の思いは、一つ。

「もう、過ちを繰り返したくない。ウクライナの次に我々が前線に立たされることになるのを防ぎたい。」

 どういうことかというと、今回のロシア・ウクライナ戦争に限らないのですが、社会全体・右も左も関係なしに、声の大きな人達が一つの方向性で固まってしまい、それはまぁいいにしても(よくない)、その話の前提が事実とかけ離れていたり・果ては誰かが悪い思惑で流した話が独り歩きして暴走したものを根拠にすること、最近は特に多くなってるでないですか。

 今回の戦争、色んな事がおかしい訳です。2021年の前半くらいまでだったら知ってる人達は知っていたような事実が、2022年の2月24日・あの開戦の日の少し前から、ないことにされていった。ソ連崩壊以降のウクライナの置かれてる立場・米英中心の「西側」とロシアの綱引きの最前線であったこと、マフィアが強すぎて治安が悪い中で、米英の影響力の強い「民主化」政権が経済的に無双をして普通の人々がそこそこ貧しかったこと。
 そして、2014年のマイダン革命(マイダンクーデター)で政権を奪うのに大きく貢献したオルト右翼やネオナチなど極右の存在感が異常に強く、至るところで新選組のように暴れまわり・「非ウクライナ人」をさらったり暴力を加えることも普通にあったこと。そして何より、ドンバス地方で余りにひどい状態になったので独立宣言をして、内戦になっていたこと。

 それら全てが、「なかったこと」にされちゃってる。

2022年2月より前の「事実」がなかったことになり、左派の多くが「正義のウクライナ」応援団になったことの、ホラー。

 その中で、戦争が始まった途端、左派の多くが「ロシア許せない、ウクライナ頑張れ」となっちゃった訳です。急いで戦争を止めないといけないから日本が間に入れ!ではなくて。
 その上、日本が間に入って少しでも早く停戦させないと、ウクライナが大変なことになる。と言ってた学者さんなどの人たちのことを、袋叩き同然に非難までし始めた。親米右翼とかだけじゃなくて、自分が左翼だと言ってた人達の、かなりの割合が。

 そして、そういう動きを批判する左翼やリベラルなどは「反米をこじらせてる」と「左翼やリベラルから」罵られ、発言の場も減らされるし下手なことを言えば袋叩きにもなってきた。
 正義を掲げてやる戦争ならば、「反戦」の例外だ。ロシアが勝った場合、次は台湾と日本が攻撃されるとまで騒ぐ「左翼」も珍しくなくなってきてた

最早、新しい大政翼賛会じゃないか。

 これは、極めてヤバいと思ったんですよ。
 大政翼賛会そのものじゃないか。

 戦争に正義もへったくれもあるか。上がどういう大義を掲げてようが、下の人間は無駄に殺し殺されるだけだ。その事は、冷戦が終わってからに限っても、湾岸戦争・ソマリア内戦・ルワンダ内戦・ユーゴスラビア内戦、イラク戦争にアフガン戦争…と、さんざん眼にしてきてる訳です。

 ところが、今回は、そう言う話は皆さんどっかにすっ飛んで行ってて、ロシアを倒すのが正義だ!ウクライナと支援してる米英こそが正義だ!!我々もバスに乗り遅れるな!とね。
 そして、それじゃまずいよ。っていう人たちのことを「反米をこじらせたバカ」「ロシアの手先」などと、右も左も何もかんも関係なしに決めつけて、袋叩きにしてきた。

戦争が終わらないとわからない、事実と「真実」。

 戦争の現実、とりわけ今回の戦争がどういうふうな理由で起きたかは勿論、実際にどういう展開に戦争がなっているかについてすら、その手の人達は目を向けない。大本営発表やウクライナで「政府に許されて活動してる」ような人達の言う話ばかりを信じてしまって、戦争が終わってから少したち・きちんと調査しないとはっきりしないような話(例えば、ブチャの虐殺がそうです)まで、「大本営発表」ばかり信じてる。
 戦争中の惨事や人道犯罪の多くは、戦争が一段落してから、第三国を交えた戦争犯罪法廷や国際的な調査の中で実際のことが明らかになるし、その中には、「犯人」が戦争相手のことを犯人だと言い換えてたのが定着してたというような「ウソ」が普通に起こるんですよ。

 でも、戦場ジャーナリストや国際政治学者も含めて、皆さん、その事どっかにすっ飛ばして、戦時中に片方の側が言ったことが揺るぎない真実だから、ロシアをもっと憎もうとかウクライナをもっと支援しようって言う感じになっている。

「誰のための戦争」なのか?国土防衛目的なら自爆攻撃や戦争犯罪が英雄視される、恐るべき状況。

 そしてもう一つ。誰のための戦争なのか?というのが、ちょっとおかしなことになっている。

 特に開戦直後、ジャベリンミサイルを持って待ち伏せする民間人の人達や、前線近くの街で火炎瓶や即席爆弾を作る若者・女性たち、ロシア軍が来た時にもてなすと騙して毒を盛って数百人を殺害した村長などが、まるで、英雄であって正義の象徴であるかのように言われてた訳です。
 ジャベリンやスティンガーミサイルは、待ち伏せ用なので、敵の戦車や車両やヘリが間近に来ないと使えないし、撃てば見つかるからそこに反撃が集中する、いわば「自殺兵器」に近いものなんですが、それを若い軍人や軍人ではない住民が持つ。ということが、どういう事かわかってない人があまりに多かった。
 愛国心や郷土防衛という「正義の心」に燃える人々。と言う扱いばかりで、そういう真似を人々に強いてるウクライナの政府や内務省などの人々の責任問題じゃないか。という事をいえば「反米こじらせてる」と言われてたりしたし、敵兵に毒を盛るとか銃後で火炎瓶作って配るとか、戦争犯罪行為に容易にされる危うい行為なんですよ。

 そういう事も含めて、その後の戦争の展開が、ロシアがキエフ攻略を早々に諦め・停戦交渉も変な理由で潰された後、本気出し始めて色んな街を攻撃・占領して、多分10万人の桁の後半の人数が犠牲になる状況に、今なってる訳です。

次の最前線は、日本ではないか。台湾ではなくて、日本と、韓国。

 そして、この戦争は、そう遠くないうち・下手すると数ヶ月以内に停戦合意が出来て「戦後処理」に入るでしょう。そうなってくると、次は、日本が最前線になりかねない。
 それも、世間で言われてるような中国やロシアが攻め込んでくるというのではなく、日本や韓国が先頭に立って
、中国・ロシア・北朝鮮に攻撃をしたり、日韓でのそれぞれの国の人々に対する民族浄化に近いような攻撃を半国策で行うことで、向こうから攻め込まれる大義名分を自ら作る形で。

 この部分で、台湾の立法院と総統の選挙が実は鍵になってたのですが、中国にも日米にもいい顔をできるようなバランスが取れた結果になったので、台湾が発火点になる可能性が激減してる…となると、日本で、今回戦争に関して左右揃って「悪魔のロシアを許すな!正義のウクライナを支援しろ!停戦なんてとんでもない!!」といきり立ってわめき立ってる、今の状況は、極めて危険なのですね。

 次に戦争の火種を作るのは、私たち日本にいる人々、それも左翼とか右翼とかみんな一体になって、大政翼賛会みたいなのを作って、例えば「不逞ロシア人狩り」とか「不逞中国人狩り」を警察や政府に働きかけて始めだし、それがきっかけというか口実になって戦争になだれ込むことを、日本人はやらかしかねない。

 この事を、私は強く怖れています。

左翼の変節・大政翼賛会化の「道筋」を明らかにすることで、「二度と過ちを繰り返さない・二度と騙されない」ことへとつなげたい。

 そういう思いの中で、加藤直樹くんの近著『ウクライナ侵略を考える 「大国」の視線を超えて』は、そのような大政翼賛会化したような「左翼」の考えと視野の集大成でもあると考えました。この間、特に戦争が始まってからの一年間くらい、加藤くんのことは度々諌めてみてましたが、ダメだった。完全に信じてるものが現実離れしてて・しかも、現実はこうだと言ってもネトウヨだなんだという話を絡めてきて、要は取り合わない感じになってた。

 そういう「左翼」が、少なからずというか多く出てしまってる訳です。共産党に至っては、党全体が、そういう、アメリカと同じ視線に立った虚妄を信じ込んで凝り固まってる訳で。

 そして、この近著には、彼や周囲の人達が今どういう世界観であるか・どういう認知の歪みや視野の歪みを患ってるか・そして、どうしてそんなふうなものだけを信じるような「間抜け」をやらかしたのか。ということが、加藤くん本人は一切自覚してないだろうけど、ものすごくよく記されてたりするんですよ。

認知の歪みを起こした経緯と経路の解明を重視したい。

 そして、それは、もう少しで一段落付くであろうロシア・ウクライナ戦争の「戦後」、「なぜそんな間違いを私たちは犯したのか?」という事を嫌でも突き付けられるような「事実」が明らかになるにつれて、大事な記録となるんですよね。

 どうして、おかしな視野の歪みや認知の歪みに陥ったのか。どういうルートでどういう形でそういうことになってしまったのか。そして、それが最後にもたらすのが何だったか。
 これを正面から見据え・読み解いて、解き明かしていくことは、次の戦争での最正面となりかねない日本に住んでる私たちにとって、非常に大事なことになります。

 もう二度と、騙されないために。

 殺し殺されあうことを「正義」だなどというようなバカバカしいすり替えに自分から進んで加担し、家族や友人や親類の命が奪われるだけでなく・文化も根絶やしにされるような結果に、約80年前と同じような結末に至ることを、繰り返さないために。

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