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ミクロ的に低性能だが、マクロ的に良いデザイン / 消火器とウレタンマスク

ウレタンマスクつけてますか。ウレタン。
何かと効果が低いと叩かれがちなウレタンマスクですが、今日はデザインの観点からウレタンマスクが良いという話をしようと思います。
擁護というわけではないですが、この視点は見過ごされがちだと感じたので。

ウレタンマスクに対する批判

私はそれなりにつけています。おしゃれでつけやすいので。
老人が多い場所に行くときなどは不織布つけてますが…。

ウレタンマスク、不織布に比べると効果が低いらしいですね。

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(引用:マスクの選び方は? ウレタンは性能劣る【素材別の比較結果)

何が本当の情報かは良く知りませんが、とりあえず一貫して不織布より性能が低いらしく、ウレタンマスクは色々叩かれています。
であれば、ウレタンマスクは悪なのでしょうか?

モリタの消火器について

今回の記事はタイトルに消火器とあるので、何のこと?と思った人もいるんじゃないかと思います。

私の言っているモリタの消火器とは、モリタ宮田工業株式会社が2019年にグッドデザインアワードを受賞した白と黒の消火器のことです。

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概要
創業129年の防災メーカーが立ち上げた防災ブランド+maffsの住宅用消火器。「防災をライフスタイルに。」を理念とし、従来のデザインと対極となる「住まいに調和するデザイン」を採用しました。隠されがちな消火器を、生活者が見える場所に置き、素早く消火することができます。「調和」を機能として捉え、生活に寄り添う防災製品です。
デザインのポイント
1.艶消しの白黒塗装と、規格の範疇で最大限に洗練した表示で、住まいに調和し、気軽に見える所に置ける。
2.忘れがちな使用期限をユーザー自身が『メモリータグ』に記入することで、定期交換の認識を高められる。
3.性能訴求ではなくブランドの世界観を伝えるパッケージで、生活雑貨としてB to Cの販路を拡大した。
(引用:Good Design Award 2019年 グッドフォーカス賞 防災・復興デザイン)

法律的な消火器の色について

前提知識として、消火器には「業務用消火器」と「住宅用消火器」の二つが存在します。
「業務用消火器」は消防法令等により設置義務がある防火対象物等に設置されるもので、「住宅用消火器」は設置義務のない一般住宅等に設置されるものとなっています。

そして「業務用消火器」の色は消火器の技術上の規格を定める省令の三十七条によって、外面の25パーセント以上が赤色仕上げと決まっています。

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一方で、住宅用消火器にはレギュレーションがなく、その色に規制はありません。なので、この消火器は住宅用消火器となります。

モリタの消火器に対する評価

私、最初これを見て、「消化器の赤は分かりやすくするため、」という意味に立ち返った時、どれぐらい役に立つかわからないな…と思いました。

本来、消火器は目立つために赤いので、白と黒にすることで緊急時に見つけにくくなるからです。
しかしよくよく考えてみると、そのデザインの効果に気づかされました。

デザインのポイント
1.艶消しの白黒塗装と、規格の範疇で最大限に洗練した表示で、住まいに調和し、気軽に見える所に置ける

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(写真:Good Design Award 2019年 グッドフォーカス賞 防災・復興デザイン)

この消火器の良いところは、ユーザーに寄り添っていることです。
モノトーンであることによって、「いままで赤を強く感じておけなかった人達が置けるようになる」ということです。

ミクロ的に低性能だが、マクロ的に良いデザイン

モリタの消火器は、赤い消火器と比較すると悪いです(目立たないので)。しかし、消火器が置かれていない状態よりは良いです。

性能としては(緊急時に発見できるか)は本来より低いかもしれないですが、今まで置いてなかったところに置いてもらえることに社会的価値が生じています。

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災害時(ミクロ)においては、1が0.5に減ってしまうかもしれないけれど、全体的(マクロ)に見るなら0を0.5にしてくれるプロダクト。
つまりは新たな妥協案としての選択肢です。

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そして何より、「消化器がモノトーンで見つからない」という問題は、そもそも「消化器が置かれてない」と発生しない。その点を素晴らしく思います。最善ではないかも知れませんが、世界が少し良くなったことを喜びましょう。

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ちなみにですが、おしゃれな住宅用消火器については以前からいくつも出ており、私が知ったのがそのタイミングというだけです。悪しからず。

つけないより、つけるウレタン

話をウレタンマスクに戻します。

不織布よりウレタンマスクの方が効果が低いですが、何もつけないよりはウレタンマスクの方が効果があります。
ウレタンマスクを禁止されたらつけない人だっているのではないでしょうか、その点はウレタンマスクのことも認めてあげましょうよと感じています。

つけないより、つけるウレタン、です。

恐怖が私たちを見誤らせる

という話の上でウレタンマスクを批判する人は、つまり「あなたの理想的な予防」に協力してほしいということだと思います。
誰しもが厳粛な予防を最善としているわけではなく、誰しもが不織布を選択しているわけではありません。

「私は苦しい思いをして自粛している!」と主張する人もいるかも知れませんが、人によって恐怖感も切迫感も、危機感も違うのです。
誰が良い悪いと擁護するわけではないですが、誰しもがあなたと同じロジックでは動いておらず、ロジックが違う人を説得するのであれば、自分たちのロジックだけでもなく、相手のロジックを理解する必要があるのだと思います。

さながら、白と黒の消火器のように。

まとめ

この文章、みる人が見たら叩かれそうです。
でも決して、ウレタンマスクは悪くないものですよ。

各地でウレタンマスクが“悪者扱い”、病院や学校で「お断り」 あるイラストが誘因か(まいどなニュース)

余談ですが、2500字ぐらいの文章が非常に短く見てきました。
普段長いの書きすぎなのかも知れない。

いただいたお気持ちは、お茶代や、本題、美術館代など、今後の記事の糧にします!