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ドジャース 大谷翔平選手のエージェント ネズ・バレロ氏から学ぶ交渉戦略

大谷翔平選手がドジャースとの契約に成功した背景には、彼のエージェントであるネズ・バレロ氏の存在が欠かせません。ネズ・バレロ氏はなぜ契約交渉を成功させたのでしょうか? 本記事では、ネズ・バレロ氏の交渉戦略について、彼がBusiness 系 Potcastで話した交渉時で重要視しているポイントに焦点を当て説明します。ネズ・バレロ氏の交渉戦略は、大谷翔平選手とドジャースにとって大きな成果をもたらしました。興味のある方は、ぜひ本記事を読んでみてください。


成功のポイント1:「コミュニケーション」

コロナの影響でコミュニケーションのやり方が大きく変わったことに対して、ネズ・バレロ氏はどのように対応しているのか気になりますね。ネズ氏がポッドキャストでビジネスでのコミュニケーションについて話した内容についてご紹介します。

ネズ・バレロ:  オンラインコミュニケーションは、コミュニケーション方法の一つとして、主にスタッフ同士で使用しています。MLBとの交渉が進んでいる時には、多くのコミュニケーションが発生しますが、人間的な要素や交渉の感触、そしてエージェントとして選手と一緒に時間と過ごし、彼らのプレーを見ることが重要な要素です。交渉期間ではオンラインでは達成することが難しい人間的な触れ合いはとても大切なことで、交渉相手と目を合わせたり、クライアントの選手の家族や子供たちと会ったりする機会は、私にとって貴重でクオリティ高い時間の過ごし方です。

私自身は オンラインでの交渉が新しい常識になるとは思わないんです。全く同じではないかもしれないですが、ビジネスでのコミュニケーションに関してはコロナ前と同じような環境になると信じています。この5年から10年の間に、ビジネスやセールスにたくさんのテクノロジーが可能になりましたが人間的なつながりに代わるものはないでしょう。ビジネス交渉ではテクノロジーが人間的な要素に取って代わることはないと私は思っています。

成功のポイント2:「売り込み」と「交渉」

ネズ氏は、エージェントとしての「売り込み」と「交渉」の違いについて 相手の立場や目的、目標を理解し、戦略を計画することが大切であることを説明をしています。

ネズ・バレロ:  「売り込み」と「交渉」の2つの間にはちょっとした境界線があると思います。クライアントを売り込みすぎて、相手(組織)が、クライアントである選手を文字通り押し付けているように感じないようにしなければなりません。交渉相手は選手を知っているし、選手の資質も理解しているが、その裏側や欠点も理解している。だから、選手の代理として交渉するときは細心の注意が必要だと思います。

相手がどこに向かいたいのか、相手のゴールも理解しなければならない。そして、それに向けてのコミュニケーションの調整が必要になります。対話を続け、交渉を行ってきたとして、ただひたすら交渉に臨み、クライアント(選手)の最終的な価値を相手に説明しようとしたが、相手(球団)の見方は違ったかもしれない。もし相手の立場を理解できない状況に陥らなければ、折り合いをつけるのは本当に難しい。だから、相手の立場に立って、指摘される選手の欠点を理解する。もちろん、私たちはその選手のポジティブな部分に目を向けて価値を上げる努力をします。

成功のポイント3:「価値提案」

最近はネットが普及しているので、交渉相手が選手について情報を入手しやすくなりました。例えば、成績や統計なども調べられるようになりましたが、ネズ氏は交渉相手に価値のある提案をするためには、数字だけでない「選手の価値提案」が大切であると説明をしてます。


ネズ・バレロ:  「選手の価値提案」は、ビジネス交渉のクリエイティブな部分なんです。例えば、その選手がリーダーシップを発揮し、若い才能を育成するために組織が必要とする多くの資質をもたらすという無形資産に焦点を当てたりします。そして今、アナリティクスが重要な役割を果たすようになり、アナリティクスを見れば、どんな選手についてもプラス面になることもあれば、マイナスになることもたくさんある。だから、特定の統計だけを選んで、「なるほど、あなたの言いたいことはわかるが、この選手の欠点はX、Y、Zだ」というような見方をされないように注意しなければならない。
しかし、「選手の価値提案」は、ニッチを見つけ、誰もやったことのないような道を探し それが交渉相手にとって限りなく価値のある事を指摘することです。私たちは常に先のことを考え、交渉相手の組織が選手の価値を理解できるようにする方法を常に考えようとしている。それで成功することもある。時には成功しないこともあるが、選手が彼らの組織にとって価値があるということを理解してもらうために常にさまざまな方法を模索してます。
例えば、プレーすることだけがすべてで、試合以外のことをする気がない選手なら、統計だけに集中するしかない。そうでしょう? 彼は本当にいい選手なんだ。彼は選手として進化し続けるでしょう。

しかし、それ以外にも、人気というとてつもない価値をもたらす選手がいます。スタジアムに人を集め、客席に足を運ばせることで、グッズが売れる。だから、その個人が価値として何をもたらすのか、そのすべてを見なければならない。私たちは既成概念にとらわれずに考えなければならないんです。統計だけなのか? それとも人気なのか? 収益を上げるための他の要素など、私たちはそれを表にまとめ、その選手に特化したプレゼンテーションを作成します。


成功のポイント4:「ブランド力」

ネズ氏は、選手たちに「球場の外に出るのもいい」とアドバイスすることもあるようです。選手がコミュニティに貢献することで、選手のブランド力が向上し、選手自身に付加価値が加わる可能性があります。しかし、選手がそれを受け入れるかどうかについては以下のように説明されています。

ネズ・バレロ:  私たちは、クライアントが納得していない場合、無理に強要することはありません。代わりに、クライアントが何を大切に思っているのかを理解し、それがどのように彼らにとって有益なのかを教えるように努めています。
慈善活動は非常に重要ですし、私たちはそれを信じていて、私たちのクライアントのほとんどが何らかの慈善活動に参加しています。選手たちは、地域社会を支えたいと考えています。選手たちの影響力は非常に強力で有力なポジションにいるのです。彼らはスポーツ界でも地域社会でも大きな影響力を持っています。選手たちは地域社会に恩返しできる機会を有効に活用するべきだと思います。


成功のポイント5:「情報」と「協力関係」

営業活動では、相手の情報が不足していることは不利になります。交渉前に相手の市場やビジネスについて理解することが重要であり 十分な情報を得ることによって、確信が持てるとネズ氏は説明をします。また、交渉ではWin-Winと協力関係を築き上げることの大切さも語っています。

ネズ・バレロ:  交渉に臨む前には、球団側、代理をする選手の両方を理解する必要があります。例えば、組織が私に連絡してきて、ある選手の契約延長に興味がある場合、私たちは適切な調査を行い、準備をしなければなりません。ただし、私が積極的に球団側にアプローチを行い主導権を持っている場合、さらに注意が必要です。一番重要なことは取引相手を理解することです。組織の詳細や進む方向、所有権など、すべてを知る必要があります。また、選手の分析に真剣に取り組み、彼の年齢やパフォーマンスを考慮し、他の選手が特定の契約で特定のことを行った結果など、類似点を見つけなければなりません。そのため、選手を理解し、正確な情報を持つことが重要だと思います。なぜなら、この知識を得ると、「疑い」ではなく「確信」を持って話すことができるからです。そして、私はそれが本当に重要だと感じています。しばらく組織と取引をしていると、私は自分の選手を本当に信じていて、売り込むという言葉は好きではありませんが、もしその組織にこの選手を提案する場合、私は確信を持って話し、彼が持続するだろうと信じます。彼は次の3〜4年間、ローテーションの一部になるでしょう。そして、彼らはそれを信じ始めます。ビジネスにおいて人々が間違えることの一つは、特に交渉の際に、短視眼的であることです。交渉相手は常に勝ちたがります。もし交渉を一方的に有利に進めた場合、後で同じ人々と再び交渉する際に、こちらには不利になるでしょう。私は常に正直に取引し、お互いの意見を尊重し、私が提案しようとしているものを尊重してくれるようなやり方を心がけてきました。そのような信頼関係を築くのには長い道のりです。例えば 選手がゲームの特定の側面でパフォーマンス不足している場合、それについて話し合い、改善する方法について話し合います。そして、私たちはできる限りのことをして、この選手の改善を手助けします。一緒に協力して、選手を改善と組織を向上させ、より多くの試合に勝てるように提案していきます。組織にこのようなアプローチを取ると、彼らはそれが交渉ではなく、個々の協力関係を築いていると感じます。それがビジネスでは違いを生み出します。

成功のポイント6:「最終目標」と「教育」

交渉結果としての数字(例えば、契約金額)また、契約の内容に対して選手とネズ氏はどのように話し合いを行ってるでしょうか。

ネズ・バレロ: 取引の最終結果については、交渉相手の球団とは どのような契約内容が可能なのか、確認を行います。交渉内容には限界がありますが、自分の最終目標を知っておかなければなりません。私たちは選手と密にコミュニケーションを行い必要ならば 選手をエジュケート(教育)します。なぜなら、私たちは選手のために働いているのです。私たちは単独で交渉を進めて、3週間後に電話して「ところで、取引が成立しました」とは言いません。随時 彼らと話合い、彼らの「価値」が何であるかを示さなければなりませんが、常に最高の「価値」を得ているわけではありません。他の選手や他の取引の比較と共に、このカテゴリにいることについてどう感じるかを選手に尋ねる必要があります。また、契約金額以外にも重視されることはあります。家族は選手にとって非常に重要です。試合中に子供たちが遊ぶことができるエリアをアップグレードしたり、家族が一緒に旅行すること、目的地に到着した際に選手が希望する環境で事が運ぶようにすることを意味したりするのであれば、私たちは努力します。代理を行う選手とは常に最終目標を確認し、選手と同じ方向を向いていることを見極めることで、契約を進める許可を得まることが最高の交渉結果だと思います。

成功のポイント7:メンター(指導者)

ネズ氏は、自身の最初のメンター(指導者)は父親であることを話しています。また、幼いころに父親の手伝いを行いながら交渉を学んだこと 父親から大切な言葉を送られたことを話しています。

ネズ・バレロ: 父は無学ながらも、すばらしい人でした。ポルトガルのマデイラ諸島出身で、知恵に溢れ とても賢かったです。私が彼から学んだのは、模範を示し導くことの重要性です。彼の「行動」と「結果」を 私は目の当たりにしましたし、謙虚さや彼の純粋さも、私は今でも大切にしています。

私は13歳のころに、商業漁師の父をサポートをしてました。アフリカのコンゴ地方アビジャンという港にいる父に会いに行くんですが、埠頭の商店では、すごく素敵な木彫りの作品を売っていて、「私も1つ欲しいな」と思いましたが、ポケットにはお金がない。だから私はドックに行って彼らと話します。そして、ひとつのつながりが 次のつながりになり、私は船に戻り、カリフォルニアと書かれたシャツ、石鹸、など価値のありそうな品物を持っていき交渉しました。この時に交渉で入手したアイテムは今でも持っています。その時に父は私にこう言ってくれました。「お前には起業家精神がある。お前が立派な交渉人になるのが 私には分かる。」 この父の言葉が私の原点だと思うし、私は彼の言葉を信じています。私は人と対話をするのが大好きなんです。

そして、僕の本質だと思いますが、現実と謙虚さを保つことが鍵だと思います。試行錯誤は必要だけどね。キャリアの初めのころのように、素晴らしい交渉にばかりにこだわっっていると物事がうまくいくわけではないということを学んだしね。試行錯誤の繰り返しの中で うまくいくことと、そうでないことを頭の中に記録することができた。そして、それが違いを生んだと思います。

さいごに:

ネズ・バレロ氏の交渉戦略は、コミュニケーションを重視しています。彼は人間関係を築くことがとても大切だと考えており、相手の立場を理解することが必要だと信じています。交渉に成功するためには、数字だけでなく、選手が地域社会に貢献するなど、アナリティクスでは見えない付加価値を示す必要があります。また、情報収集をしっかり行い、自信を持って交渉に臨むことが重要だと考えています。最終的な目標を明確にし、選手と合意を得ることで、円滑な交渉を進めるとしています。彼にとって、交渉はお互いが協力して同じ目標に向かうプロセスであることが重要です。

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