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批評・演劇・『Light house』・マームとジプシー

・形態:演劇
・場所:東京芸術劇場シアターイースト
・年:2022年

・概要
はじめに幸せそうな家族の食卓の様子が描かれ、時が経つにつれて登場人物達は大人になったり、死んでいったりする。
その後戦争を暗示させるシーンとなり、最後に島を出たことが一度も無いという登場人物(いっぺい)が船を漕いで島を出ようとする。
手法としては、当劇団に特徴的だという、同じシーンを劇中の異なる状況で何度も繰り返す「リフレイン」や、人の死を作品の重要な要素とすることや登場人物の感情を詳細に描きヒーロー・ヒロインとして仕立てるロマン主義の傾向が見られた。

・目的:「物事に節目はあるが終わりはない」ということを伝える。
劇後半の重要な場面で何度も繰り返されることから。
・方法:ストーリー、リフレイン、ロマン主義
ストーリーにおいて、家族の時の流れを描く場面は分かりやすい一方で、その後の戦争のシーンや最後のシーンは内容が分かりづらく、また前後の関連が不明であった。

・目的の新規性:感じられた。
「物事に節目はあるが終わりはない」ということは、確かに日本における日常生活においてはよく「終わり」が重視されているように感じられ、それと対照的であるように思われたため、新規性があるように感じられた。

・方法の新規性:特に見受けられなかった。
ストーリーに欠陥があるように思われ、またリフレインやロマン主義も既視感があった。

・目的-方法の合致性:低く感じられた。
「物事に節目はあるが終わりはない」ということを伝えるためのストーリーの構成が不明瞭であった。またリフレインやロマン主義の導入の意義があまり感じられなかった。

・社会的インパクト:やや低く感じられた。
東京公演に限ってみると、目的の新規性はあるものの、方法の新規性の低さや合致性の低さから、演劇作品としての社会的インパクトは限定されているように思われた。

・その他の気づき
本作品は沖縄のリサーチに基づいて制作されたと言われている。
地域のリサーチから作品を制作するという観点では、リサーチで得られた事実と示唆は提示された一方で、その間に位置すべき事実の解釈が提示がされていなかったことから、言いたいことの説得力に欠けたと考えられた。
そのため、事実・解釈・示唆の三点の提示が重要に思われた。

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