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【山形研修2023】「こうふくで山形」交流ツアー

概要

「こうふくで山形」交流ツアー
日時:2023年8月3日(木)
コーディネーター:武田和恵(やまがたアートサポートセンターら・ら・ら コーディネーター)
参加メンバー:佐々木桂(アート・インクルージョン)、髙橋尚子(同)、高倉悠樹(同)、沼崎マイコ(多夢多夢舎)、岩本忠健(DIY STUDIO)、渡邉竜也(渡邉デザイン)、大江よう(TEXT)

 山形県では県工業技術センターが主導、やまがたアートサポートセンターら・ら・らが協力し、「こうふくで山形」という取り組みが行われています。工業(こう)と福祉(ふく)とデザイン(で)が連携・協働してものづくりを行うプロジェクトです(令和4年度の活動報告)。宮城県で行っている本事業との親和性を感じた私たちは、やまがたアートサポートセンターら・ら・らの武田和恵さんにコーディネートをお願いして、興味深い活動を行っている山形県内の事業所や制作所を訪問、活動の様子を見て周りながらお話を伺いました。最終的に、私たちが育んできたネットワークと山形に生まれているネットワークの違いを見出して、自分たちの活動を客観的に省みる重要な機会になりました。

𠮷勝制作所

 まず、デザイナー𠮷田勝信さんの「𠮷勝制作所」を訪問しました。𠮷田さんは障害のあるひとの表現を取り入れた米沢緞通(「NEW DANTSU(ニューダンツー)」)の制作など、福祉や地域文化をはじめとした多様な分野を縦横無尽に越境しながらプロダクトデザインを行っています。

 その多彩な事例を、実際の作品や制作現場を見ながらひとつひとつ丁寧に説明していただきました。印刷などに関わる作業環境の充実も去ることながら、制作所は𠮷田さんが集められたさまざまなモノ(素材)で満ち溢れていて、活動のベースとなっている「採集」行為によって制作現場そのものが豊かにつくりあげられているような印象を受けました。

穂積繊維工業株式会社

 続いて、中山町にある「穂積繊維」さんを訪れました。「こうふくで山形」に参加し、生活介護事業所やデザイン事務所と協働してラグづくりを行っている老舗の絨毯製造メーカーです。3代目社長の穂積勇人さんに話を伺いながら、工場内をくまなく見学させていただきました。

わたしの会社

 その後、多機能型事業所「わたしの会社」を訪れました。生活介護事業所、就労継続支援B型事業所を運営しており、併設する「桜舎かふぇ」での調理・接客や、描画・手織・染色などのアート活動を行っています。私たちが訪れたときも活動の真っ最中だったので、利用者さんたちと少しお話しして、つくっている作品を見せてもらうことができました。

 みんなで「桜舎」でパンを買って、「桜舎かふぇ」で飲み物をいただきました。ここですこし腰を据えて、コーディネーターの武田さんともゆっくりと話す機会ができました。渡邉デザインの渡邉さんは、研修の振り返りをするなかで次のように感想を話していました。

「山形にはまだ福祉事業所に『寄り添う』ことを大切にできるデザイナーは少ない、という話を武田さんから聞いて、自分がやるべきことを再確認できました。目立つ仕事をひとつするというより、縁の下の力持ち的な仕事を続けて行きたいです」

Q1(𠮷田勝信「印刷機になる/mimic a printing Vol. 2」ほか)

 先ほどお伺いした吉勝製作所の吉田さんがいままさに個展を行っているということだったので、メンバーみんなで見に行きました。

 個展が行われているコンテンポラリーアートギャラリー「famAA(ファマ)」は、中心市街地の複合文化施設「やまがたクリエイティブシティQ1(キューイチ)」内にあります。山形市立第一小学校の旧校舎(旧一小)をリノベーションした建物はとてもユニークで、好奇心がくすぐられるつくりでした。ギャラリーだけではなく、金工雑貨やアパレルのショップなどを各々自由に見てまわりました。

ぎゃらりーら・ら・ら(愛泉会「わくわく・ひょうげんの泉」)

 最後に、社会福祉法人愛泉会が2011年に開設した「ぎゃらりーら・ら・ら」を訪問しました。ぎゃらりーら・ら・らではその日、愛泉会事業所の合同作品展「わくわく・ひょうげんの泉」が開催されていました。全8事業所、総勢44名の自由な作品たちが所狭しと並んでいました。

 デイサポートにじいろの熊谷友佑さんの作品は「大好きなドライブ」。山形市内のものと思われる青い道路標識たちがちいさな紙に丁寧に描かれ、それが一枚のラミネートフィルムのうちに敷き詰められています。キャプションには「毎日にじいろさんでドライブに連れて行って頂き新しい標識を発見しては心に残った物を書きためたもののほんの一部です」と書いてありました。標識は家に持って帰ってコレクションすることはできないけれど、熊谷さんは自分で書き起こしてしまうことで標識を「採集」しているようでした。

 そして、キャプションの最後のところに「お母様より」とありました。キュレーターでも支援員でもなく、利用者さんのお母さんの証言がキャプションになっているようです。例えば「一枚一枚切ってから書き込みをし…」と細かな制作過程が途中に挿入されています。作家である熊谷さんのこだわり、その几帳面なところが、そこからすっと浮かび上がるような一文だと思いました。

 研修を終えて、このメンバーで山形の色々な作業現場をみることができて純粋に楽しかった、貴重な学びになった、と参加者が感想を話していました。
 武田さんのコーディネートのもと、さまざまな現場を見学することができました。もちろん私たちの事業と単純に比較することはできないですが、今日見聞きすることができたそれぞれの場所の上手くいっているところもそうでないところも、今後の活動の参考にしたいと思います。


(高倉悠樹)

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