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作品紹介 村上春樹「風の歌を聴け」

こんにちは、こんばんは。アリーと申します。

今日は村上春樹さんです。もはや知らない人なんていないでしょと思うのですが、知らない人のために言うとすごい人です。僕の中では純文学の祖ですね。実際は祖でもなんでもないんでしょうけれど、小さい頃から僕は純文学と言ったら村上春樹でした。

僕は村上春樹のすべての作品を読んだわけではないのですが、あくまで僕の読んだ作品の中で一番好きなのは「風の歌を聴け」です。この作品は村上春樹さんのデビュー作だったはずです。薄い本ではあるものの、奥の深さが感じられる純文学らしい(というより村上春樹らしい)作品です。

「風の歌を聴け」は大学生が故郷に帰省する物語です。話の概要を説明したところでおもしろい点はありません。大学生の主人公が昼間からバーで飲んでいて、そこには鼠男がいてビールを飲んでいる、くだらない話をして毎日を過ごすだけ。そんな感じだったと思います。

この作品の何がおもしろいかというと、やっぱり主人公と鼠男の掛け合いですね。村上春樹らしい素朴な文章も素敵です。文章力というのか、表現力というのか、やっぱり読者を魅了するものがありますよね。

そして、特にこの作品に言えることは鼠男というキャラクターが大きな魅力になっているということです。「キャラクターを立てること」を純文学は避ける傾向にあると思います。文章だけで勝負してなんぼという雰囲気があるからでしょう。けれど、村上春樹はキャラクターを立てることもします。例えば、「1973年のピンボール」でも唐突に小学生くらいの双子の女の子が主人公のもとにやってきます。双子は謎に現れ、個性を存分に生かし、謎のまま終わります。鼠男についても、彼は鼠の姿をしていないのだろう、実際は中年の不貞腐れたサラリーマンなのだろうと想像しながらも、僕の頭の中には主人公の隣でビールを気持ちよくあおる鼠が動いていきます。おもしろいですよね。

僕は純文学について、好きではありますが敬遠しがちな節があります。それは読んでいる間に物足りなく感じるからです。純文学の最もおもしろいところは読み終えた後、余韻の部分だと個人的には思っています。話の真相がわかったようでわからないようで、なんだかわくわくする。この瞬間が純文学のおもしろさの真髄です。けれど、初めは読んでいてもおもしろさを感じることが難しい。純文学の難しいところは、物語の内容やキャラクターでおもしろさを補わないところだと考えています。

それが村上春樹に関してはこの純文学の難しいところを克服してしまっているんです。村上春樹の作品は世界観がいいのだと思います。キャラクターもその一部分でしょう。純文学の世界に彼らが存在できるのは、村上春樹ワールドのおかげです。他の純文学作品に彼らがいきなり出てきてもおそらく良い結果にはなりません。村上春樹のかもし出すちょっとしたファンタジーや幻想的な描写が彼らの存在できる空間を形作っているのです。

現在はライトノベルなんかでキャラクターの重要性が認識されていると思いますけれど、村上春樹はそれをうまく純文学に落とし込んでいたのですね。とはいえ、「アフターダーク」なんかは最初から最後まで謎すぎて僕の感想は「・・・ん?」でしたので用心してください。笑

ということで村上春樹さんの「風の歌を聴け」を紹介してきました。いかがだったでしょうか。気軽にLIKE、コメントしてくださると筆者は泣いて喜ぶのでよかったらお願いします。

ご愛読ありがとうございました。


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