米大統領選後にロックダウンはあるか

■ 経済活動制限がユーロ圏サービス業の景況感を強く圧迫

■ 米大統領選を経て政権交代となった場合、経済活動制限の厳格度を注視すべき

 23日に発表された10月のPMI速報値では、総合PMIは、米国では54.3から55.5に上昇し2019年2月以来の高水準となった一方で、ユーロ圏は50.4から49.4に低下し今年6月以来の50割れとなり、米国とユーロ圏の景況感格差が鮮明となった。内訳では、製造業PMIは米国では9月の53.2から53.3と概ね横ばい、ユーロ圏では53.7から54.4に上昇し2018年8月以来の高水準に。世界的に財消費が順調に回復してきたことを背景に、製造業PMIは米国、ユーロ圏ともに拡大・縮小の境目である50を大きく上回る水準にある。一方でサービス業PMIは、米国では9月の54.6から56.0に上昇したが、ユーロ圏では48.0から46.2に3ヵ月連続で低下し、50を下回る状況が続いている。新型コロナウイルスの感染再拡大による経済活動の再制限で、ユーロ圏サービス業の景況感が悪化していることが浮き彫りとなり、各国政府による経済活動の制限の厳格度が景気動向に大きく影響することを思い起こさせる結果と言えよう。

 新型コロナウイルスの感染が再拡大している状況は米国とユーロ圏で共通だが、ユーロ圏の方が感染拡大および死亡者数の増加ペースが速い。その結果、ユーロ圏では夏休みシーズンが終わった9月以降に経済活動の制限が再び強化され、英オックスフォード大が算出する新型コロナウイルス対策の厳格度指数は上昇基調にある。ベルギーでは全飲食店が営業中止となり、フランス、イタリアでは一部地域で夜間外出禁止となった。25日にはスペインで再び非常事態が宣言され夜間外出禁止となっており、欧州連合(EU)は29日の非公式首脳会議で新型コロナ感染再拡大への対策を議論する見込みだ。一方で、米国ではトランプ政権が厳しい経済活動制限は不要と判断しており、厳格度指数は8月以降横ばい圏で推移している。一部の都市で導入された経済活動制限が米国経済全体に及ぼした影響は限定的だった模様だ。しかしながら、バイデン米大統領候補は米大統領選前最後のテレビ討論会で、専門家が再度の都市封鎖(ロックダウン)を提言した場合、実行する可能性を否定しなかった。市場ではバイデン候補の財政政策への関心が高まっているが、目先の景気や金融市場に及ぼす影響を見極めるうえでは、経済活動制限の厳格度をより注視すべきだろう。

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