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~読むアロマ~「モモ」ミヒャエル・エンデ

物語の世界観を香り(精油)で表現する「読むアロマ」。「読むアロマ」は、思わず手に取ってしまう美しい装丁のように、イメージを香りでデザインしたもの。物語と、精油が持つ香りや働き、様々なエピソードをつなげて、オリジナルのアロマブレンドを作ります。

新旧、ジャンル問わず、好きな物語、気になる話をランダムにピックアップして、作った香りのご紹介です。



「よくぞ今を選んで読んだ!」と自分を褒めてあげたい。

その存在はずっと頭のすみにありながら、なぜか手をださずにいた名作。今、社会の仕組みを根底から変えるものの渦中で読む意味はとてつもなく大きいと感じています。

なぜなら、「どんな人生を生きたいか」についてのヒントがあふれているからです。

「モモ」というかわいらしいタイトルや「児童文学」というカテゴリーに騙されてはいけません。(ちなみに、「モモ」という名前は、作者が日本びいきだったこともあることから、「桃」「百」説もあるそう)

文章がいちいち深くて、「う~んう~ん」と考えながら読むので、なかなか進まない!でもなんて幸せ!!


作品のテーマは、「時間とはなにか」ということ。

時間泥棒や時間の国のマイスター、案内人(ガイド)のカメなど魅力的なキャラクターとともに、モモが読者に問いかけます。


「時は金なり」から「時は人生なり」へ

時間を人々から盗む「灰色の男たち」の言っていることは、ことごとくこの格言を思い出させます。

時間を「数字」「効率」「合理性」で語り、「いつかくる将来のために」という言葉で人々を洗脳していくさまは凄腕の営業マンそのもの。

時間について語っていることが、そのままお金についてにも聞こえるから怖い。

そう、今までの私たちだったら灰色の男たちの言葉を疑わずに、「え?何が違うの?その通りでしょ。」となっていた。少しでも無駄を省くことが良しとされ、少なくとも、それが世の中的な正しさでした。

でも、今まさに私たちが直面しているのは、不要不急、すなわち「どうしても必要というわけでもなく、急いでする必要もないこと」についての意味。「無駄」や「必ず必要でないもの」についてです。

例えば、イベント会場での雑談。ミーティングの目的とは関係ない世間話。久しぶりに偶然居合わせた人との挨拶。

「話す人と聞く人」「話す内容」がきっちり線引きされたオンラインではすべて「不要」なもの。一方で、気にもとめなかった「無駄(話)」について価値を見出す声をあちこちで聞くようになりました。場を作っていたのは、あのとりとめのないおしゃべりだったと。


「時間とは、生きるということ、そのものだからです。そして人のいのちは心を住みかとしているからです」

「光を見るためには目があり、音を聞くためには耳があるのとおなじに、人間には時間を感じとるために心というものがある」


一瞬が永遠に感じるような、でも永遠のような一瞬もあって。

スカスカの1時間と密度がぎゅっとつまった1時間の違いはなんだろう。

時間は、人生でいのちでこころ。

人からみたらスカスカでも、自分にとっては意味があると胸を張って言える自分でありたいな。

なんてことを思いながら読むので、「う~んう~ん」となるのがわかっていただけたでしょうかw


そして、アロマセラピストとして見逃せないのが灰色の男たちについての描写です。

葉巻の謎もさることながら、その煙とともに現れる彼らといると、寒くて、気分が悪くなり、吐き気がする。

「嗅覚」は、まさに「危険(敵、毒)の回避」のためのセンサーであり、「匂い」という言葉には「そのものがかもしだす雰囲気」という意味もあります。

「灰色」という生きている(白)と死んでいる(黒)を混ぜた色というのも象徴的ですよね。

でもね、この人たちのこと、まったくもって無視できないんです。50年前に書かれた作品ですが、灰色の男たちがずっと暗躍していたのでは?と思わずにいられません。


モモの活躍によって、取り戻された時間。その後の世界は、コロナ禍を乗り越えた私たちが手にすることを願ってやまない姿でもあります。

モモの勇気。大切な人たちを守るためにおこした行動。熟した機会。

「モモ」の香りは、不安と孤独から立ち上がり、勇気と自信を得て、星の時間を味方にしたモモの姿をテーマにしたいと思います。


<読むアロマ「モモ」ブレンド>

・カルダモン
・スプルウスブラック
・ローズウッド
・ネロリ
・フランキンセンス
・シダーウッド

カルダモンはアクションをサポートする、決意を促す香り。種子からとれる精油は可能性が詰まっている。

寒冷地で育つ針葉樹のスプルウスブラックは、静かなたたずまいに強さを秘め、試練に耐え抜く力を宿す。

フローラル・ウッディのやさしい香りを持つローズウッドは、不安を鎮め、軸を整え、自分自身とつながり、役目を果たすことを助ける。

ネロリは「天然の精神安定剤」。そのかわいらしい姿から漂う香りは甘さと苦さをもった深みのあるもの。感情の靄を晴らしてくれる。

フランキンセンスは自分という小宇宙を見せてくれる賢者。広く、高く、深い視野をもたらす。

そして、シダーウッド。1,000~2,000年の樹齢を持つもの。大きな時間のスパンを生きている守り神。親愛なるカシオペイアのイメージ。


モモのように、自分のなかにある時間の源とつながれますように。

そんな思いを込めたブレンドです。


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