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【靴屋の小話】革の染色について~染料仕上げと顔料仕上げ、とその間。

こんばんは、blueoverチームのzuccoです。

最近は週に1回のnoteになっていますが。何を書こうか、と悩んでしまいます。。


今日は革の染色、仕上げ方について

以前、皮から革にする「なめし」について書きました。

なめした後、革は色をつけて仕上げされ、いろいろな製品に使われ、世の中に出ていきます。

色付けの仕上げ方法

その色付けの仕上げ方法は、おおまかに4個に分けることができます。

・素上げ
・染料仕上げ(アニリン仕上げもここに含まれる)
・顔料仕上げ
・セミアニリン仕上げ

それぞれメリット、デメリットがあり、いいところを生かして商品に落とし込まれます。

素上げ

名から伝わるかも、とも思いますが、

革に何も染色をしていない、素のままの革のことです。

何もしていないので、革本来の質感を感じることができます。

イメージしやすいものとして、肌色のヌメ革などでしょうか。使っていくと、経年変化を楽しめます。

デメリットとしては、耐久性、耐水性、耐熱性に劣ります。シミになりやすい。素のままなので、お化粧をしていない状態です。

人もお化粧をしたら、紫外線などをブロックします。そう考えると素上げは「すっぴん」。そう考えると分かりやすいですね。

blueoverのmikeyの豚ライニングは素上げです。


染料仕上げ(アニリン仕上げもここに含まれる)

染料を染めるための方法のひとつです。

水や溶剤に溶かして革を染め上げます。

革の表面だけでなく、組織の内部まで色をつけ、革独特の風合いを生かしたままで、透明感のある色調の表現ができます。

表面は素の状態に近い仕上がりになるため、
本来の手触りや見た目がそのまま。革らしさのある仕上がりです。

デメリットとしては水に弱く、色落ちしやすいです。

また、スムース革の場合、革がきれいでないと革本来の傷や模様が目立ちます。ステアなどの大きな牛は喧嘩したり、虫に刺されたり、暮らしてきた中で革になるので、染料仕上げはあまり使われません。カーフやキップなど小さい牛に使われることが多いそうです。

ただ、blueoverでは定番のmikeyの表革に使われます。mikeyはベロア。起毛革なので、染料のみの仕上げになっています。


アニリン(合成染料)仕上げというのは、染料仕上げの中の一つです。

染料といっても、草木染やカゼイン(牛乳などに含まれるたんぱく質)染めの天然染料などもあるわけです。

染料のなかで頻繁に使われているのがアニリンになります。

タンニンなめしの革もクロムなめしの革もよく染まるためです。なのでアニリン仕上げという言葉をよく聞くのです。

顔料仕上げ

革をコーティングして傷やシミを隠すことに使われます。

顔料を塗布したら、革は色も雰囲気も均一に仕上げることができ、鮮やかな色も表現できます。

デメリットとしては、顔料だけの革の中には、引っかき傷などがつくと、塗布している部分が剥げてしまって、目立ちやすいものもあります。顔料をたくさん使いすぎると、厚化粧をしている状態なので、革本来の味わいが減ってしまいます。

メリットもあります。
膜を貼っている状態なので、耐久性もあります。手入れもささっと簡単。水にぬれても色落ちがしにくいです。

セミアニリン仕上げ

アニリン仕上げと顔料仕上げのいいとこどりをした仕上げ方法。

染料をメインに、顔料をほんの少し使うことで、革の傷やシミなどを隠してくれます。

また染料だけで希望の色を作るのはとても難しく、最終的な色あわせにも顔料を使います。液体のときは希望の色でも革に染み込むと違ったなんてこともあります。

顔料が少しだけなので、革本来の質感もあり、艶感や透明感のある表情。

素上げや染料仕上げよりは劣るものの経年変化も綺麗に楽しめます。

ほとんどの革の仕上げはこの方法だと言われています。

色落ちもしにくく、車のシートやソファなどにも使われますよ。


blueoverでは『おかっぱ』がいい例でしょうか。

白は染色だけで表現するのは難しく、顔料のみで作られることも多い色です。『おかっぱ』で採用しているスムース革は、セミアニリン仕上げを採用しています。うすく顔料をのせることで綺麗な白を表現し、メインを染料にしているので、艶感・透明感があり、革本来の雰囲気は楽しんでいただけます。


余談

タンナーさんから聞いた話。

革の汚れ落としに、ラバー消しゴムや、砂消しゴムなどを使うときがありますが、食パンもおすすめだそうです。

消しゴムを使うより革の表面を傷つけないので色落ちしにくいそう。

パンくずだらけになるかと思いますが、お試しあれ。


読んでいただいてありがとうございました。

zucco

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