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「 昭和塔 」である 可能性

「東京タワー」って響きが秀逸だなと、あの建造物を目にするたびに、その固有名を口にするたびに、僕は思って仕方ない。季節や天候によって見え方が変わるのはどうしてなんだろう。それにならんで、2012年2月にできあがり、いまや浅草に並ぶ一大観光地となりつつある「東京スカイツリー」も、響きがなじんでますよね。「業平橋駅」というなんとも字面からして渋く、いい味を出している駅名が「東京スカイツリー駅」に改名されてしまったことは、とくに地元民から多くの批判を呼んだようですが、しょうがない。何ごともいい悪いはある。

約2ヶ月前、「東京タワーっていい響きだ。江戸塔とかニッポンタワーとかじゃなくてよかった」とiPhoneに書き殴ったメモを掘り起こし、こうして形にしているわけだけど、結局のところ「名前」なんてものは全ては「なれ」の問題なのかもしれない。でも、それでまとめずもうすこーしだけ筆を進めたい。

神田川にかかる橋の一つに「日本橋(にほんばし)」という名前があるくらいだから、「東京タワー」は「日本塔」とか「ニッポンタワー」とかもありえたわけである。ちょっと残念すぎることは、結果論だとわかっていても思ってしまう。

「東京タワー 由来」とネット検索すると ↓↓のサイトを見つけてしまった。話がおもしろくなってきて、心躍った。

(東京タワーは開業直前に名前を公募し)昭和33(1958)年10月9日に命名式が行われた。公募により集まった名称で一番多かったのは「昭和塔」で、それに「日本塔」「平和塔」が続く。他に「きりん塔」「アルプス塔」「ゴールデン・タワー」「オリエンタル・タワー」「宇宙塔」「プリンス塔」などがあった。
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000097424

東京タワー完成とほぼ時を同じくして設立した「ニッポン放送」は、響きも近いし、字面もかぶって贔屓っぽい感じが出るから、却下されたのだろうか。しかし、そんなくだらない憶測は、もろくも崩れ落ちる。

上のリンクを読み進めてみると、東京タワーの正式名称は「日本電波塔」というらしい。初めて知った。つい、ひとりで赤面したのだけど、これは一般教養?誰でもみんな知っていることですか?

まあ、よく考えれば当たり前のことだけど、彼は仮にも総合電波塔なので、TVだけではなくFM放送もこの電波塔からしっかり発信されるわけである。多少のお金のコミュニケーションはあったにしろ、贔屓もくそもない。

ただ「昭和塔」なんてのは悲惨である。「昭和」という時代があまりに栄光に輝いているので(過去進行形)、半永久的に、それも物理的に残してゆこう、という時代は変わるものということをまったく考えない市民の魂胆が隠しきれていない。しかもそれが公募で1番だったということがショックである。大多数の人間はこのネーミングに共感し、票を入れていた。

私が考えたバッドエンド「江戸塔」はさすがに候補には上がらなかったか。上がったものの、残らなかったか。さすがに8万6269通もあれば、一つは票として入れられていたのではないかと踏んでいる。当時の人でさえも、「あのハイカラなフォルムに似合わなすぎだよねw」みたいな感覚があったことだけに安堵している。

命名式が開かれた1958年10月は、俗にいう「岩戸景気(高度経済成長期)」のはじまりと言われる1958年7月から、3ヶ月が経ってのできごとである。「きりん塔」以降に並ぶ候補の発現はもはや、「その時のノリ」としか推察しようがなく、当時から36年後に生を受ける僕にとって、その頃の空気感(ノリ)はあまりに理解はし難く、もはや想像することさえできない(クレヨンしんちゃんのモーレツ大人帝国は何度も観たが、そんなノリはなかったはずだ・・・)。「きりん塔」に関してはネットで調べても「理由」が出てきません(笑)

そんなこんなで適当なオチを見つけられずふわふわしているが、いまここにあるもの、これから作るものがなじむか、半永久的に愛されるかどうかというのはその時にとって「現代」を生きる人の感覚に委ねられて仕方ない。
お店もコンビニのパンも会社の制度ひとつ取ってもネーミングはもれなく「口にしやすい(呼ぶことにストレスがない)ものである」に勝ることはないです。

ということで、たまに書きたくなる雑文は以上。今度は、鍵とサドルが何の前触れもなく焼かれた経験ついて書きます。


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