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救われてないのに救うな!

わたしには人助けとかをできるほどの器が無いのだなあ、と思う。

施設にいた頃、自分も救われていないのに、人を救おうとしてしまったことがあった。
わたしもわたしで終わっていたけど、それより終わっていた子にたすけてと求められ、わたしもわたしで頼られたのが嬉しくてお姉さんぶりたくて、救おうとした結果、救えなかった。
色々やって、良いことも悪いことも本当に色々やって、結局救えなかった。
わたしには人助けとかをできるほどの器が無いので救えなくて当然だったんだけど、救えていたら救えていたで自分より幸せになっているのを見て苦しんでいたと思う。
他人の幸せで喜べるくらいの余裕がないと人を救ってはいけないし、そもそも救えるほどの力もないということだ。

わたしが施設に入って2回目の春に新卒で入社した女性職員が3回目の春に辞めた。
15歳以上の児童対象の施設は必然的に年齢が近くなってしまうからか、わたしがいた施設では職員のことを先生とは呼ばなかった。だからここではYさんとしよう。
Yさんの退職理由はわからないけど、初期の頃は新人職員の中では一番やる気に満ちていた人だったと思う。ありすぎるくらいに…
だけど1年の間に施設内では自立して退所した子の何倍もの数の子が家出して失踪し、毎月誰かが警察沙汰になり、自立が成り立った子も定職に就けず生活は安定していなかった。
生活の安定性と将来性だけ見れば、施設入所中に障害者手帳を取ってグループホームに入り生活保護を申請したわたしが一番安定しているのではないか?
内部事情がそんな感じだから、特に福祉と関わった経験はないYさんは理想と現実のギャップがあったんだと思う。

地方出身のYさんは、親のお金で上京して大学に進学し、その後施設の職員になったと言っていた。
それを聞いた施設の子たちは正論を言われる度に自分の不幸とYさんの環境を比較していた。
恵まれている人に罪はないはずなんだけど、YさんもYさんで余裕はなさそうな人だった。救われていたかはわからない。
職員と児童という立場だったし、Yさんの個人的な話はあまり聞いたことがなかったけれど、入社当初エネルギッシュだったYさんはプライベートでも活動的なようだった。
友人関係や婚活、美容や勉強などの自己投資とか、どれも色々頑張っていると話していた。

Yさんが施設を辞めることを知ったとき、わたしは既に施設を退所していたけど、たまたま少し2人で話す機会があった。
もちろん退職理由は教えてもらえなかったけど、半年前に付き合ったと言っていた彼氏と同棲し、全く違う業種で既に次の内定は決まっていると言っていた。Yさんは施設を辞めるけど、前に進んでいるようだった。

多様性がテーマな令和で「自立した女性を育てる」ことをスローガンとした施設では、男を作って施設を脱することはタブーとされている。
だけど学歴も資格もなしで最低賃金で労働を続けるよりも、男を作るか夜の街に消える方が幸せになる子は多かった。
いや、現実は幸せになるからそれを選ぶというよりも……


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