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言語・思考・現実

言語・思考・現実(B.L.ウォーフ 著)

アメリカの言語学者のウォーフの没後(1941年)、1956年に出版。内容は1900年代前半が中心となり、本書の解読が極めて困難。しかし、サピア&ウォーフの言語学の変遷を垣間見れる貴重な文庫化と思います。

・言語と文化
エスキモーの言葉には雪を表す語が複数あり異なる種類の雪を細かく区別している。アラブにはラクダの大きさや性別や老若を区別する語がある。

インディアンのホーピ族の言語には時制(過去形や現在形)がなく、文法上区別していない。時間に相当する語もない。遠くの村の出来事と自分の村の出来事を比較するなら強度の差のみであり、時間と空間の両方が含まれる。

・サピア・ウォーフの仮説
思考の手段として言語がある。言語は思考や文化の範疇から派生している。
言語的相対論が基盤となっており、言語間の相違を主張するもの。

・明示的と暗示的範疇
英語における名詞の複数系は明示的。Johnという名前はheの暗示的。

・習慣的な思考と言語
人間は自分たちの社会にとって表現の手段となっている特定の言語に支配されている。サピアは言語と文化と心理の間に重要な相互関係を認めている。

・科学と言語学
もし青色しか見えない民族がいたら、言語に色彩用語はなく、青色を表す語は明るいや暗いになる。同様に重力を知らなければ、普段、意識することはない。

・言語と倫理
言語の背景には、伝統的に精神が存在する。
生物学者が様々な生物種の世界を理解するためにあらゆる種やその歴史、進化の系統を比較するように、言語も同様。

・チチュワ語(東アフリカの文字のない黒人によって話されている)
2つの過去時制がある。
1 現在に結果や影響を残している出来事
2 現在に影響が残っていない出来事
心や記憶に残る出来事を区別している。遥か昔の惑星系の話だと2の時制になる。

・サピア(エドワード・サピア)1884-1939
言語が文化を反映しているという観点で、言語の歴史と文化は影響している。文化は社会がなし考えるもの。言葉はその思想の表し方。
数や性、時制など一度経験から抽象されると言語を体系的に影響する。

・ウォーフ(L・ベンジャミン・ウォーフ)1897-1941
言語が人間の行動に影響を及ぼすことに関心を持った。
emptyと表記されたドラム缶が空であること認識をさせ、危険でないと推論し、実際は可燃性の気体が充満していたことで火事になったことについて、言語が事故の原因と指摘。

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