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転職日記 -2023の終わりに-

はじめに

2024年の年初から転職することになり、ここまでに感じたことを自分の備忘録として記録しておこうと思います。今回はエージェントなどを使った転職活動ではなく、リファラル(知人・紹介)という形でご縁がありました。前回の転職日記(以下参照)でも思いましたが、年齢があがると人数の少ない会社とマッチしずらくある程度人数の多い企業のほうがフィットする枠(ご縁)があったのかもしれません。

2023年は本格的にコロナ明けという風潮もあり、以前の会社の先輩や後輩の話を聞く機会も多い年で、副業でやっていたビジネスを本業へとシフトしたなんて話もあり、みんな試行錯誤で社会人を全うしているなと感じました。

最近感じた企業のあれこれ

もう気づいたら5社目(主にネット広告、ネットメディア、SIer、ITサービスなど)になるのですが、何かスタンダード(その企業の基準)というのか、それなりに一般的な価値観について感じる部分も出てきました。今回はそのあたりを中心に記載しておこうと思います。


テーマ1「 離職率の低さが物語るもの」

基本的に離職率は高いよりも低いほうが良いとされているでしょう。どんどん退職されたら、せっかくの採用コストや育成コストも無駄になりますし、企業側は長く働いてくれるような仕組みを日々考えていると思います。
一方で、離職率が低いということは(新卒などの若手採用の人数にもよるでしょうが)、平均年齢は上がりがちです。長くいる人にとって最適化(または習慣化された)環境にも陥りがちです。場合によっては年功序列なども風習として残るかもしれません。

副作用1-1:社内のガラパゴス化

長くいる人が多い分、社内の独自文化(その企業でしか使われていない社内の通称や社内用語、また独自の運用フロー)が増えるのは恐ろしいものの一つです。自ら不要な仕事を増やして、自ら対処するような事態にも陥りがちです。社外に出たときにも応用が効きづらいので、ならべくガラパゴス化しないように気を付けたいところです。

副作用1-2:中途や新卒における環境

独自の環境がはびこると外から加わる中途や新卒は苦戦しがちでしょう(上記のように社内用語や独自フローがあまりに多いと初動に時間がかかるのでもったいない)。新卒はその文化に染まるのみなので、同じようなクローンができて要注意。いい意味で会社文化として根付けば、バリューチェーンとして強みにもなり得ます。

副作用1-3:年齢を重ねたその先に

これまでは平均年齢が若め(30代ぐらい)の会社に所属することが多かったのですが、一方、自分が平均年齢に近いときはいいのですが、年齢を重ねるとどういう働き方になるのだろうという課題はもともと感じていました。
しかし、老舗で離職率が低いということは必然的に年齢層があがるわけですが、年齢層が高め(50代ぐらい)が活躍できる場があるというのは非常に重要なことであると思います。IT企業の場合でいうと、AIやデータ、ChatGPTなども含めて近年の技術も多く、決して昔ながらの仕事を年配の人がこなしているというわけではなく、これまでの知見を生かした動きがしやすい業態でもあると思いました。

テーマ2 「DXが物語る市場感の闇」

いろんな業種があると思いますが、IT系などの企業は昨今の流行りのDXによってトレンドは上昇傾向だと思います。社会全体がDXもしくは単純なデジタル化の要望があるため(顧客ニーズの増加なのか、資金が得やすいなどの風潮なのかはさておき)、上昇トレンドであるがゆえに潜在的な課題が見えづらい状況でもあると思います。本当は課題や解決しておかなければならないことが、全体が上昇していることででフォーカスされずらいかもしれません。なので、売上だけでなく冷静に起きている日々の運用やビジネススキームと向き合いたいところです。

副作用2-1:サービス化

基本的に世に出ている多くのものがサービス化(値段がついていて、運用できる体制がある程度あって、もちろん使ってもらうものがあって)と思いこんでいましたが、開発を生業にするような業態だとサービス化されていない状態が普通であり、要求整理、要件定義から入り、実際の開発の段階に移るなどの流れが自然です。そして、その副作用として請負の受託形式が古来から続いているとも言えます。サービス化というと、ある意味、企業の課題を事前に仮定してその解決策をパッケージ化しておくということなので、考え方は少し異なるという気付きがありました(あと、ハードウェアやソフトウェアを販売する、企業に導入してサポート運用があるなども特有のパターンかと思います)。

副作用2-2:サービス運営とB2Bマーケティング

請負の受託形式だと、マーケティングの要素はあまりフォーカスされていない(必要性に気づきにくい)と思います。サービス型だとそのサービスを必要な人に知って貰う必要があるし、その手段として事例創出やホワイトペーパーなども必要かもしれませんし、マニアックなニーズ(限られた領域での要望)をキャッチする仕組み自体が必要となります。WEBからのお問い合わせ、見込み顧客のリストにどうアプローチするかなど。サービス型では当たり前ですが、請負だと組織自体がマーケティングのプロセスに馴染んでいないので考え方の調整が必要かもしれません。

副作用2-3:ABMマーケティングの必要性
加えて、元々の既存アプローチだと既存顧客の窓口が情シス部署であることが多く、新規ビジネスや営業系マーケティング系との窓口との新たな接点でいうと、ABMマーケティングのような考え方が必要なのかもしれません(以下ABMの参考)。

テーマ3 「組織と歴史と」

上記のとおり、サービス型では当たり前の話が請負受託開発を歴史に持つ場合だと、また違う常識があるということだと思います。
開発を前提に考えると、顧客ごとに対応するわけなので、商品やサービスでいうと無限パターン存在することになります。その発想のままサービス化を進めるとサービス自体が無尽蔵に増えること(無尽蔵は大げさだとしても、数十から100とか)になります。これはマーケティングの観点でいうと、それぞれの市場にアプローチする必要があるので大変非効率になります。そもそもそれぞれのサービスでマーケティング担当者を揃えるのは採用も大変なので、いかに横で共有しあうか、または組織を統一するかなど工夫がいりそうです。それに加えて、広報などの部署に分断されている会社レベルでの社名の知名度や好意度を上げる活動も統率していくことで最適化ができそうです。

副作用3-1:営業機能

サービス化や新サービスを世に投入することの裏側として、営業担当の観点があります(裏というか表ですけど)。数字の見えない新市場で売上を作るのは障壁も高く、営業としては非効率です。なので、営業担当者としては積極的になれませんし、既存のビジネスや既存顧客からの受託のほうがよっぽど売上に直結します。
その状態だと新サービス事業は”営業担当者の積極的な協力なし”での商品開発が求められます。そうするとなかなか、市場の検証(そのビジネスが市場に受け入れられるか、どのようなビジネススキームになっていくべきか等)が円滑に回らないので、できる範囲で外の声を拾う必要があります。
本来、売るということと作るということが一体になって、顧客の解決方法を探すしかないはずなので、営業のマインドの問題ではなく、組織の判断として一体になる方法を考えたいところです。

副作用3-2:人的リソースはコストなのか

多くの開発会社が人的リソースはコストとして見ていると思います(開発会社に限りませんが)。事前にリソース計画を立て、承認ベースでそのリソースを消費していく感じでしょうか。このパターンだと、新しい案件に対応するときに、動けない可能性があり柔軟な対応が求められます。事前に新しい案件を年初の段階で予測しておくことは困難でしょうし、ある程度予測していたとしても開発側のリソースはならべく稼働率をあげよう(リソースを使い切ろう)とするので案件がきたときに自由なリソースがないということもあり得ます。人的リソースがコストなのか資産なのか、という議論は興味深いところです。

副作用3−3:よくある大企業病

セキュリティやクオリティの話になると、どうしても組織の承認フローが複雑化しがちです。単純に承認する人の数が増えて、ダメ出しのステップが増えると大変です。ある意味、OKを出すということは”責任を持ちます”ということなので、承認者からするとNOというほうが安全ではあります。
けれど結局、承認フローをガチガチにしたところで、結果はそれなりのものでしょう。重大事故はないほうがいいですが、ガチガチにしてゼロになるのか疑問ではあります。当事者意識(アカウンタビリティ)の問題でしょうし、最近でいうとパーパスのように個々の向く方向性やその向き合い方が求められているのだろうと感じます。ついでにいうと、個々のプレイヤーは決してサボりもせず、スピードを上げてやっていても、障壁(承認の数)が増えることで全体としてはスピードが落ちていることに気付かないのは怖い現象だと思います。

副作用3−4:小会社の集合体

どの企業もさらなる高みをめざして変革をもがいていると思います。そのアプローチとして、新規事業・新サービスを小さく産んで育てていくわけですが、組織の中での運営体制はなかなか一筋縄でいかないものでしょう。開発できる部署が通常は限られている(役割としてある)なら、一箇所に統一されますが、逆に開発が各部署で可能な場合、それぞれのサービスや商品ごとに開発運営フローの策定や収支計画をたて、利益とコストを管理していくことになります。
運用フローの散在化と各サービス間での社内利用のスピードが落ち、かつ(会社全体ではなく)各サービスや商品ごとに利益をのせると結果的に外の顧客に提案する際は金額が高くなり競争優位が落ちる可能性があります(例:サービス担当部で利益をのせ、営業が顧客に提案時にも再度利益を乗せるなど)。

テーマ4 「美的感覚」

個人的に好きなお題ではあります。色々な意思決定や行動の基盤に美的感覚が影響しているということだと思います。ビジュアルだけでなく、見えない情報の取り扱いなども含めて。

副作用4-1:社内イントラの検索性

社内イントラの検索性は非常に重要だと感じている昨今です。これまで、社内の情報検索は検索エンジンの問題だと思っていました。しかし、運用フロー(いうならば社内の文化)の浸透と密接な関係にあると感じています。例えば、同じプラットフォームや同じファイル形式など、ある程度の情報の整理や規律がないと、社内の検索性は下がることになります)。もちろん、ファイル形式(パワポとワードなど)が異なることは致し方ないのですが、基本的に社内イントラがあるならば、どの部署でも同じように社内イントラにテキストとしてアップする習慣がないと情報は散在していきます。これは恐ろしい話です。せっかくイントラにアップされていてもPDFのリンクが貼ってあるだけだと、検索に引っかかりにくいでしょうし、ユーザーとして利便性が悪くなります。まだがんばって情報にたどり着くならいいですが、セキュリティの観点から期限切れが多数発生すると考えないといけないですね。社内イントラの検索性は、古参の社員も中途も新卒にとっても重要な情報源になりますし、それが適度な統制が取れるフォーマットで運営されていないと大変です。もし、ChatGPTが社内情報の検索をすべて解決してくれるなら、それもありかなと思います。

副作用4-2:情報整理の美しさ

結局、このような情報の取り扱いの根底にあるのは美的感覚で、どういう情報の見せ方をするとUI/UXが上がるのか、どういうフローがきれい(あるべき姿)なのかという知見なのだろうと思っています。もちろん、ビジュアルだけの話ではなく、ユーザー体験としての観点です。イントラトップページにどんどん情報が付け足されたUI/UXになってくると情報の取得は難しくなりますし、フォルダ構成なども同じようなことだろうと思います(性格が几帳面かどうかという話とは異なります)。
そのような感覚が、古くからある社内ツールに疑問をもち違和感が生まれ、課題発見につながるのかもしれません。どうしても慣れてくるとガラパゴス化がさらに化石化して、結果的に随分古いツールを使い続けているという自体も起こり得ます。

副作用4-3:色としてのグラデーション

粒度が異なりますが、当然個々の美的感覚だけに頼るものでは不安定です。人によってばらつきも増えるでしょう。そのため一定のフォーマット化、パターン化を進めるべきですが、その際、色でいうと「グラデーション」や「複数の配色」があると人によって難易度が変わるため、誰でも同じようなアウトプットにできるような配色に決めておくのもいいでしょう。そもそもサービスブランドの配色やコーポレートカラー自体が複雑だと社員としてはどうしようもないので、会社全体の目指すブランドの中で統制を取る工夫が求められます。

さいごに

これまで所属した企業の中で、(ほんの一部の観点ではありますが)自分の主張の残り香を感じるときがあります。もちろん勘違いかもしれません。でも、ほんの一人でも二人でも美的感覚や意識改革(大げさにいうとですが)が起これば自分の存在意義がありますし、ビジネスが良い方向に1°でも傾けば嬉しい限りです。

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