【まとめ】離婚後共同親権に関する弁護士会の声明など
離婚後共同親権を導入する民法改正について、日弁連や各地の弁護士会が声明などを発信しています。2023年秋以降の意見書・声明をまとめました。
(8月3日現在)
日本弁護士連合会、北海道弁護士連合会、札幌市弁護士会、函館弁護士会、岩手弁護士会、仙台弁護士会、群馬弁護士会、埼玉弁護士会、千葉県弁護士会、愛知県弁護士会、岐阜県弁護士会、金沢弁護士会、福井弁護士会、滋賀弁護士会、京都弁護士会、大阪弁護士会、兵庫県弁護士会、島根県弁護士会、広島弁護士会、福岡県弁護士会、鹿児島県弁護士会
※各弁護士会声明の論点は、太田啓子弁護士の投稿から引用している箇所があります。
2023年
11月21日 札幌市弁護士会
家族法制の見直しに際し、離婚後双方親権を導入することに反対する意見書
「急迫の事情」「日常の行為」の範囲不明確
DV・虐待事案において子連れ別居が違法な親権行使であるとして裁判を起こされる事案が多発
養育費の請求権者や児童手当等の受給者が不明確
2024年
2月16日 日本弁護士連合会
監護者指定を必須必須としないものとされた点
子どもの意見を尊重すべきことが明記されなかった点
「親権」という用語が維持された点
親以外の第三者との交流について新たな規律が設けられた点
3月21日 金沢弁護士会
「急迫の事情」の文言の問題
家裁の体制不足
「監護及び教育に関する日常行為」具体的内容不明
子の意思を適切に尊重する制度の必要性
税制・社会保障制度におけるひとり親支援。離婚後共同親権共同監護により、子に不利益が生じないようにする必要
3月21日 福岡県弁護士会
離婚後共同親権の導入について、十分に国会審議を尽くすことを求める会長声明
包括的な親の権利というものがあるという誤解を生じかねない
DV・虐待事案の危険性。協議離婚においては、届出時点では裁判所が関与せず、何らの限定もない。
「急迫の事情」「日常の行為」の範囲が不明確
家裁の人的物的体制の問題
3月22日 函館弁護士会
離婚後共同親権を導入する家族法制見直しについて、慎重な議論を求める会長声明
非合意強制方共同親権の問題
DVの加害者を離婚後共同親権 から排除できない
家裁体制の不足
どのような場 合が「急迫の事情」か不明
DV被害者の「子を連れて逃げる」という手段 すら奪いかねない
子の意見表明権が明記されていない
3月26日 千葉県弁護士会
離婚後共同親権導入について、その是非の判断も含めより慎重な検討を求める会長声明
高葛藤父母の間でも共同養育が強制される可能性
子の重要事項に関する意思決定が停滞
離婚後も虐待やDV の影響を受け続けるリスクが
養育費の確保は、 国の立替制度の導入を含め福祉的な観点からアプローチすることが肝要であ り、共同親権の導入は的外れの議論
4月10日 福井弁護士会
離婚後共同親権の導入について、是非の判断も含めて慎重かつ十分に国会審議を尽くすことを求める会長声明
離婚紛争の長期化の懸念
子の重要事項に関する適時適切な意思決定ができず停滞
離婚後も虐待や DV の影響を受け続けるリスク
養育費、面会について共同親権導入しても対策にならない
反対してる弁護士への業務妨害ひどい
4月12日 岐阜県弁護士会
日本の協議離婚制度にそぐわない
「急迫」「日常行為」という単独親権行使できる要件が不明確
監護者の指定を必須としないのは問題
子の意見を尊重が明記されなかった
DV虐待被害者が避難することや支援者の支援が躊躇されるようになる
4月15日 愛知県弁護士会
DVの証明困難への配慮必要 ・家裁の人的物的体制強化すべき
「急迫」「日常行為」という単独親権行使できる要件が不明確
DV被害者の子連れ別居が制限される懸念
4月17日 大阪弁護士会
離婚後共同親権について、さらに慎重かつ十分な国会審議を求める会長声明
DV虐待の立証困難に配慮した審議必要
子の意見表明権が無い
子どもの手続代理人等の費用の国庫負担等すべき
「急迫」「日常行為」という単独親権行使できる要件が不明確
家裁の人的物的体制を強化すべき
4月19日 兵庫県弁護士会
離婚後共同親権導入に関し慎重かつ開かれた議論を求める会長声明
法制審で少数反対意見があったのに採決、パブコメ公開無
家裁の人的物的体制強化すべき
「急迫」「日常行為」という単独親権行使できる要件が不明確
DV被害者の子連れ別居が制限される懸念
4月24日 広島弁護士会
離婚後の共同親権導入を含む民法等改正法案について十分かつ慎重な議論を求める会長声明
国民の理解が得られていない
「日常の行為」の具体的な内容が不明
「急迫の事情」について具体的に定めれていない
家裁の体制が備わっていない
高葛藤のケースで、当事者の合意がないにもかかわらず裁判所が共同親権を命じるべきケースがおよそ想定できない
監護者指定が必須となっていない
子の意見の尊重が明記されていない
「親権」という用語が維持された
4月26日 京都弁護士会
離婚後共同親権の拙速な導入を危惧し、慎重かつ十分な国会審議を求める会長声明
どのような場合に単独で親権を行使できるかが不明確である。
「急迫」という文言から生じる弊害への懸念がある。(DV・虐待からの避難や、被害者への支援を萎縮させるおそれ)
DV・虐待からの避難、被害者への支援に必要な手当てについての審議が尽くされていない。
協議離婚における「共同親権の合意」真意性の担保に関する審議が尽くされていない。
関係省庁所管事項への影響が不明である。
慎重かつ十分な国会審議を求める。
4月30日 群馬弁護士会
離婚後共同親権を導入する「民法等の一部を改正する法律案」についての充実した審議を求める会長声明
国会提出に至るまでの経緯について極めて特異な事情
「非合意・強制型」共同親権は、子の利益が害される
「急迫の事情」「日常の行為」が不明確で紛争が長期化
裁判所も、異例のパブリックコメントで重大な懸念
DV・虐待事案でも共同親権が選択されてしまう可能性
4月30日 島根県弁護士会
協議離婚で真意に反して共同親権を強いられる可能性
DVの客観的な証拠収集の困難性に対する配慮がない
子の意見表明権の保証が明示されていない
「急迫の事情」「日常の行為」は疑義や紛争を生じる可能性
監護者指定が必須とされていない
家裁の人的・物的基盤の拡充が急務
5月8日 埼玉弁護士会
離婚後共同親権についてさらに慎重かつ十分な国会審議を求める会長声明
「非合意・強制型」の共同親権を可能とするものであること
家庭裁判所の体制が整っていないこと
共同親権の例外の内容が抽象的であること
子の意見表明権が明記されていないこと
本改正案が可決・施行された場合に様々な弊害が生じること
附則及び附帯決議の内容が不十分であること
5月10日 岩手弁護士会
離婚後共同親権について、さらに慎重かつ十分な国会審議を求める会長声明
単独親権となる要件の立証困難性に関して配慮し、具体的な適用場面に踏み込んだ審議を求める。
意見を聴かれる子の権利(子の意見表明権)の保障を求める。
子どもの手続代理人等の費用の国庫負担等を求める。
共同親権の場合に、単独で親権を行使できる場合についてさらに具体的な審議を求める
事件数の増加に応じた家庭裁判所の人的・物的体制の整備を求める。
5月14日 鹿児島県弁護士会
虐待やDVの影響が続く危険性があること
親権者の判断基準が不明確であること
共同で親権行使が必要な事由・単独で親権行使が可能となる事由が不明確であること
共同での親権行使によって適時適切な対応が困難になること
5月16日 仙台弁護士会
離婚後の共同親権の導入を含む民法等の改正法案に反対する会長声明
裁判所が虐待やDVを看過して共同親権を命じてしまうおそれ
高葛藤である父母に共同養育が強制される可能性
父母の紛争下に置かれることは、子が精神的な負担を負い続ける危険
家裁の人的・物的体制は不十分
子どもの意見表明権も明記されていない
協議離婚でDV被害者が共同親権を選択せざるを得ない状況に追い込まれる
6月24日 滋賀弁護士会
離婚後共同親権の導入に関して適切な施策の実施を求める会長声明
円滑な意思決定を阻害する要因を除去すること
虐待・DVが継続するおそれ
子の意思の表明の機会を保障するべきであること
裁判所の体制拡充
7月26日 北海道弁護士連合会
離婚後共同親権を含む民法改正法に反対し、再度の改正または施行延期を求める決議
民法改正法が重大な問題を含み、再度の改正がなされるべきこと
速やかな再改正がなされない場合には、児童虐待・DVの被害者やひとり親への支援を後退させることのないよう、適切な制度構築や環境整備、家庭裁判所の人的・物的体制の整備等がなされるまで施行を延期すべきこと
その他、離婚後共同親権についての声明などは、こちらにまとめています。
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